第108話:人間の限界値!魔族をビビらせる魔人に、まさかのカンスト通告なんですけどぉ!
今回もまた、持ち前の「運10」というパラメータだけですべての修羅場を無理やり乗り切った星凛愛。
緊迫した教室から解放され、ようやく下校の途についた彼女の姿は、まるで生まれたての子鹿のようだった。
極度の緊張と恐怖の連続で筋肉が悲鳴を上げ、膝がガクガクと震えている。
夕暮れの魔界の街路を、プルプルとおぼつかない足取りで、一歩一歩這うようにして歩いていた。
(あー……マジで死ぬかと思った。精神的HPがもうゼロっていうか、マイナス一万光年くらいまで沈んでるんですけど……秒でベッドにダイブして寝るわ……)
疲れ果てて完全に魂が口から出かかっている凛愛だったが、そんな彼女を取り巻くまわりの魔族たちの反応は、彼女の自己評価とは180度違っていた。
「おい、見ろ……! あの人間だ……!」
「ひぃっ! 近寄るな! 目を合わせたら一瞬で消されるぞ!」
「魔界最高峰の冥王クラスをたった一人でジャックし、あの傲慢なプリンセス・ティアリスと、生ける伝説のゾンビであるネクロスを完膚なきまでに叩きのめしたっていう、噂の……!」
「化け物だ、本物の魔人だぁ〜! みんな逃げろォォ!」
すれ違う一般クラスの魔族たちが、凛愛の姿を認めた瞬間に、綺麗に左右に割れて道を開けていく。
中には恐怖のあまり、持っていた購買の焼きそばパンを放り出して脱兎のごとく逃げ出す強面の魔族までいる始末だ。
あまりにも極端な周囲の恐れっぷりに、凛愛はもはや怯える気力すらなく、死んだ魚のような目でため息をついた。
(あーあ……はいはい、いつものやつね……ヤったのミラとモリエだから!なんで毎回世界を滅ぼす魔王みたいな悪名が爆速でアップデートされてくわけ? 魔界の口コミ、ガセネタ多すぎでしょ……)
そんな風に、人混みが綺麗に消え去った静かな帰り道をトボトボと歩いていると、凛愛のギャル髪防空壕の中から、相棒のチュンペーがひょこっと顔を出した。
チュンペーは周囲の魔族たちが逃げていく様子を鼻で笑いながら、ふと、ある純粋な疑問を思いついて念話を飛ばしてくる。
『おいバカ人間。我がふと思ったのだが……貴様、最近は全くレベルが上がらんな?』
「あ……」
チュンペーに指摘されて、凛愛はハッと足を止めた。
言われてみれば、確かにその通りだった。
魔界に来てからというもの、数々の冥王クラスの化け物たちと対峙し、結果的に(すべて勘違いと運のおかげだが)彼らを退けてきたのだ。
もしこれが普通のRPGゲームなら、経験値がドバドバ入って、ファンファーレが鳴り響き、レベルが爆上がりしていてもおかしくないはずである。
「確かに……あたし、魔界に来てから一回もレベル上がってないかも。てか、ステータス画面の数字がピクリとも動いてない気がするんだよね……ねえ、モリエ? なんか知らない?」
ゲーム脳の凛愛が、不思議そうにスカートのポケットからスマホを取り出す。
すると、ティアリスから極上の聖属性魔力を根こそぎ吸い尽くしてホクホク状態のメモリエルが、ピピッ、と滑らかな電子音を鳴らして画面を起動させた。
「星凛愛の疑問に対する回答を表示します……この世界の人間ではない星凛愛、アナタのレベルは、現在表示されている『レベル17』が絶対的な限界値、すなわちカウンターストップです」
「……はえ?」
メモリエルから淡々と告げられた衝撃の事実に、凛愛は間の抜けた声を上げた。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・レベルカンスト(絶望): レベル17が世界の限界値であると告げられ、RPGオタクとして最大のショックを受けている。
・魔人: 周囲の魔族からは「ネクロスを消滅させティアリスを討ち取った恐怖の存在」として完全に神格化されている。
・相棒:
・危機感爆発雀: 凛愛のステータスの貧弱さが永久に改善されないと知り、『やはり我が影から完璧にサポートせねば、このバカ人間は明日にも死ぬな……』とツンデレな保護者面を強めている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・ポジティブ勘違い: 凛愛が弱いおかげで自分の価値が上がると信じ込み、妙にウキウキしている。
・周囲の状況:
・下校路: 誰も近づかない完全なセーフティゾーン(物理)が凛愛を中心に形成されており、ある意味では非常に安全に下校できている。




