街で
メイドの心の声がうるさいかもしれません。
甘めです。
「チェルシー」
街に繰り出した矢先、見知った人を見つける。
チェルシーはギョッとしつつも気持ちを切り替える。
ライカに言われてはいたが、本当に会えるとは、ほんのちょっとだけしか思ってなかったからだ。
いや、結構期待してた。
「あらルド様。こんなところで会うなんて、奇遇ですね。手を貸して頂けるとちょっと…いえ、かなり助かります」
本心である。
チェルシーは大きな紙袋を重たそうに抱えていた。
「喜んでお貸ししますよ」
ルドは躊躇う事なく重そうなそれをひょいっと持つ。
「女性にこれは大変でしょう。中は何ですか?」
「色々な果物や甘味を。ミューズ様は今悪阻で大変なので何か食べられる物があればと選んだのですが、つい買いすぎてしまいました」
帰りは馬車を使うから余裕と思ってたら調子に乗ってしまい、歩くのにも骨が折れる量になってしまった。
「チェルシーも今日は休日ですよね。わざわざ買いに来たのですか?」
自分の休日を知ってたなんて嬉しい。
「ミューズ様が苦しそうなのに、ゆっくりなんてしてられませんもの。ルド様は何故ここへ?今日はご実家だったのでは?」
「結婚を早くしろとせっつかれまして。息抜きで出て来ました」
ライカの言うとおりだった。
さすが双子。
「あら、あたしも言われます。早く結婚しろって実家から手紙の嵐。あたしは仕事が恋人なのに」
はぁとため息をつく。
せめて仕事に理解がある人ならまだいいけど、釣書を寄越す人達は仕事を辞めて家に入れの文言ばかり。
嫌になる。
「良ければ少しお茶を飲みつつ話しませんか?チェルシーはどこか入りたいところなどありませんか?」
誘ってもらえるなんて嬉しい。
重い荷物を持ってたので、少し座りたいと思っていた。
ライカの言葉は忘れるように努めて、いつも通りのテンションで話すよう心掛ける。
「ルド様と一緒になんて嬉しいです。行ってみたいところがあるので、是非そこに」
案内したのはスイーツのカフェだ。
「こういう所は初めてです」
「あたしもここは初めてなんで緊張します、でも美味しいって評判なので」
まだ混み合う前のようで人はまばらだ。
「では入りましょう」
ルドは躊躇わず入り、なるべく奥にあるテーブル席を選んだ。
広いソファ椅子の壁際の方にチェルシーを座らせてくれた。
「こちらなら入口から遠いので、人の出入りに気を取られることもなく落ち着くでしょうから」
有り難い気遣いだ。
さっそくメニュー表を開くと甘そうなものが絵付きでいっぱい書いてあった。
「チェルシーは何が好きですか?」
「こちらのパンケーキと、パルフェが気になります。でも、これも頼みたくて」
顔を真っ赤にし指さしたのはカップル限定メニュー。
なかなかのボリュームだ。
「カップル、ですか」
「いえ、別に深い意味はなくて。ただ、男女で来ると頼めるメニューなんです。一緒に来るような殿方がいなくて、でも今日はルド様と一緒だから折角なら〜と思って」
しどろもどろになりつつ弁解する。
「いいですよ、気になったものを頼みましょう」
ルドは手を上げ、チェルシーが言ったものと飲み物を注文する。
「ルド様の分は?」
「シェアさせてもらおうと思ってたのですが、チェルシー一人で食べきれますか?」
さすがにカロリーオーバーだ。
ぶんぶんと首を横に振る。
「では一緒に食べましょう、楽しみですね」
優しく言われ、チェルシーは大きく頷いた。
「はい!」
スイーツが来るまでの間に人はどんどん増えてきた。
カップルもいるが、女性同士の客も多い。
ルドへの視線も多いが、ルドは気にしている素振りはない。
物珍しいのか改めてメニュー表をじっくり見ている。
ルドは誰にでも優しく、身分の上下に関わらず敬語で話す。
屋敷でも困ったものに躊躇なく手を差し伸べるので、人気も高い。
ライカも基本優しいのだが素直じゃなく一言多いため、喧嘩仲間のチェルシーとしては面倒くさくなるのを嫌がり、ついルドの方に甘えてしまう。
「やはり赤毛は気になるのでしょうか」
ルドはメニュー表を閉じるとチェルシーにそう問うた。
周りの視線の意味を聞いているようだ。
本当は気にしてたのかとそこで気付く。
この国での赤髪は確かに目立つが、そこではない。
「多分、ルド様がカッコいいからですよ」
「俺が?」
本気でわかっていない顔だ。
勿体ない。
「カッコいいです。お顔は整ってるし、背筋もシャンとしてて、今日の服装もシンプルながら似合ってて、とってもカッコいいです」
相対する自分が恥ずかしくなるほどだ。
よくいる茶髪にそばかすの幼児体型。
大したところには寄らないし、ルドに会える保障もなかったのでしてきたのは薄化粧くらいだ。
コンシーラーがっつりめに塗ればよかった。
バカにされないよう強気に生きてきたが、年齢も相まってか最近の釣書が後妻や年配の貴族の側室にと変化してきた。
「あなたに言われるととても嬉しいですね」
ふふっと笑うルドはキラキラして見える。
「こちらこそありがとうございます」
チェルシーは思わず机に頭をつけてお礼を言ってしまった。
取止めのない話をしているうちに頼んでいたスイーツが来た。
「結構多いですね」
驚きに目を見張るルドと裏腹にチェルシーは目を輝かせた。
「凄い、美味しそうです」
どれから食べようか、迷ってしまう。
喜びと期待で胸をドキドキさせているチェルシーを見守りながら、ルドはコーヒーから口にする。
「お好きなものからどうぞ」
チェルシーから先に、ということか。
カップル限定の特別メニューからスプーンを入れていく。
「おいし~い」
幸せな味にほっぺたを押さえてしまう。
「このベリーのソースと甘すぎないホイップクリームがちょうどいいです。ルド様も是非」
「それでは頂きます」
ルドもスプーンを入れ、口にする。
「さっぱりしていていいですね。下のところもクリームチーズが使用されてて俺でも食べやすいです」
チェルシーよりゆっくりしたペースで食べていく。
(デート、これって完璧デートよね?!嬉しい!)
今更の言葉だ。
チェルシーは心の中で小躍りしていた。
誰かと話す時って心の中でいっぱい考えてから話しませんか?
私はそんなタイプの人です。
下手すると1からじゃなく、3から話し始めちゃうので、スムーズに会話するのに最初に頭で構築してからじゃないと無理な人です。
応援して頂けて嬉しいです、ありがとうございます(*´ω`*)




