メイドの休日
「街に行くなら、ルドがいるかもしれないぞ」
「えっ何で?ルド様は昨日の夜に実家に帰ったじゃない。普通何やかや話したり実家の事したり、忙しんじゃない?」
「最近母さんが結婚しろって五月蝿いんだ。ティタン様が結婚したし、そろそろ良いだろって迫られてる。孫も見たいまで言われてるし…さすがのルドも逃げ出すさ」
「ルド様が結婚…」
いや、そうよね。
あんな美形がいつまでも独身のはずないわよ。
屋敷内でファンクラブが出来そうな程人気だもの。
護衛騎士としてパーティにも付き添いで結構行ってるし、他の令嬢方がロックオンしないはずがない。
そしてルド様はカリオス子爵家当主。
狙う女性は必ずいる。
「釣書も来てるってよ。早くしないと取られるぞ?」
「な、何を言って…!」
思わぬ言葉に壁まで後ずさる。
「ルド、いらないの?」
「物じゃないのよ?!何よその言い方」
大きな声を出してしまった。
「違うのか?マオからそう聞いてた」
あの、吊り目従者め。
後であったら地獄のマッサージしてやるわ。
「違わなくはないけど…」
ぼそぼそと小声になってしまう。
顔を赤くするチェルシーに、ライカは素直になればいいと言った。
「お前の敬愛するミューズ様だって応援してたぞ、自信もてよ」
「待って、どこまで広めた?!」
さすがに胸倉を掴み、問い詰める。
「あ〜…あとはマオに聞いといて。俺そろそろ湯浴みしないとこれから仕事あるし」
目線をそらし、あっという間に振り払われ逃げられてしまった。
絶対許さん、と心に誓う。
ルドはこっそりため息をついた。
朝食を母と一緒にとっているのだが、味がわからなくなる程延々と結婚について語られているのだ。
今までは主君がまだなのに家臣の自分には早過ぎると話していたが、ティタンが結婚したのだから、もういいだろとばかりに詰められる。
パーティーや茶会にも自ら参加して様々な情報をや令嬢の話を直接聞いているようだ。
やれどこどこの令嬢はマナーが綺麗、とかあそこの令嬢は話が上手とか、様々な事を話される。
「そうですか」「知りませんでした」「凄いですね」
と、ルドは淡々と相槌をうち、げんなりとしながら飲み込んでいく。
アンネがルドを気の毒に思って止めてくれたが、逃げ出さなかっただけでも褒めてほしい。
「ルド様、どうぞ」
食後の温かい紅茶を入れてくれたのは、先程のトワだ。
「良い香り、そして美味しいですよ。トワ」
そう言うとパアッとトワの顔が明るくなる。
彼女も最初はこのような感じだったのかと、あの元気はつらつメイドに会いたくなってしまった。
「この後もしよかったら一緒に釣書を見ない?良いお嬢さんがいっぱいなのよ」
これ以上はもう無理だと、ルドは席を立つ
。
「本日は街に行きます。久々の休暇ですし、街並みもずいぶん変わっているでしょうから。相手の方に失礼にならないよう、最新のデート先も見つけたいと思いますので」
その言葉にルドも少しその気になったと安心したようだ。
「そうなのね、気をつけていってらっしゃい」




