エピローグ
セーフハウスで一夜を明かし、緊張状態のままダリウスとマーブはオフィスに向かった。CIAとの取引が終了したことは知らされていた。
ダリウスは課長補佐室に出頭し、やっと安堵することができた。
部屋から出ると、喫煙所にミラーがいた。
神経質に煙草を吸ってはもみ消すのを繰り返している。髪は乱れ、服もよれ、目は充血し、うっすらと髭が生えていた。
ダリウスが喫煙所に入ると、ミラーは体を震わせた。
ミラーは呆けたような表情をしたかと思えば、道化のように歯を見せて微笑んだ。
「ありがとう」
「ああ」ダリウスはそれだけ言い、喫煙所を出た。
寮に戻る道、今日は晴れだと天気予報が言っていた。外は晴れているはずだ。
ミラーが一瞬、見せた哀しみと困惑と絶望が混ざった表情が脳裏に焼き付いていた。その表情は一瞬で、ダリウスの脳裏に様々な言葉を生み出した。
なぜ?
いつから?
相談してくれれば良いのに
あの態度はすべて嘘だったのか?
どろどろと感情が言葉とともに湧き出てくる。胸が圧迫されるような感覚がした。どうすれば良いのか、分からなくなる感覚をダリウスは思い出していた。
「少し……寒いな」一人つぶやき、寮に戻る。
廊下は、ダリウスが通るところだけを人工的な光で照らしていたが、通り過ぎれば光は消えた。
ふっと寮に続く道を見る。そこには、真っ暗な闇だけがあった。
読んでいただき、本当にありがとうございました。
主要参考文献
・帰還兵はなぜ自殺するのか デイヴィッド・ファンケル (古屋美登里 訳)
・勝てないアメリカ 「対テロ戦争」の日常 大治 朋子
・民間軍事会社の内幕 菅原 出
・デルタ・フォース 極秘任務 創設メンバーが語る非公式部隊の全容 エリック・L・ヘイニ (伏見威蕃 訳)
・CIAの秘密戦争 変貌する巨大情報機関 マーク・マゼッティ (池田美紀 訳)
・フィルターバブル インターネットが隠していること イーライ・パルサー (井口耕二 訳)




