心が折れてしまう
コメント欄にはこんな書き込みがある。
――真にせまってる。まじかと思った。
――俺はむり。白目、グロ、金返せ。
――ちょっと引いた。でも、興奮したかも。
――閲覧注意。料金分の価値はある。
あたしは、内心、冗談だろ――と思いつつ、動画を確認した。
男達は、その日は珍しくちゃんと服を着ていて、いつも以上にはしゃいでいた。人数が少ない。仲間うちだけでの遊びなのだ。
その女の子は、服を着たままだったけど、ベッドの上に大の字に縛られていて、首にはわっかにしたロープがかけられていた。ベッドの端から落としたロープの先には、重りのかわりにペットボトルが二つ、結び付けられていた。
女の子は、恐怖でおもらしをしているみたいだ。
気を失ったら、男達はロープを緩めてから顔を叩いて、女の子を目覚めさせた。
そのつまらない遊びを、男達は何回も繰り返していた。
完全に、あたまがおかしい。こいつら、有料で殺人動画を公開している。
あたしの思考は停止していたので、ずいぶん時間がたってしまっていたかもしれない。
監視しているブログに動きがあったことを、巡回ロボットが伝えてきた。
男達は、長く放置されて使われていないブログのコメント欄を、仲間同士の連絡に使っていた。
――巻嬢きょうもおつきあいムリ、イラつく
巻嬢っていうのは、たぶん真樹ちゃんのことだ。
――まじ、しぶといよね。もう一回も二回も一緒なのにね。
――なんでこれないって?
――ピアノのおけいこワロタ
――めんどくさい保護しよう、このまま放置できないよ。
――よくきくおクスリもあるし、きっと更生してくれるお
――え、巻嬢ぐれてたの?もう処分だな
――その言葉は家畜にたいして使う
――なら、あってるWWW
こいつらは、真樹ちゃんをさらって、クスリで言う事を聞かせる相談をしているのだ。
ヤバいと思った。
一度だけなら、たぶん耐えられる。
真樹ちゃんは、いまの所、毅然とした態度で断り続けている。
論理的には、それが正しい。というか、他に方法はない。
弱い所を見せたら、骨までしゃぶられるのだ。
でも、無理矢理さらわれたらやばい。なんどもそれを繰り返されたら、心が折れてしまう。お姉ちゃんもそうだった。
クスリなんか使われたら、もう、精神力だけではどうにもならない。
――出てきたとこ、いただいちゃお。場所知ってるし。車まわすわ。
あたしは真樹ちゃんに電話した。真樹ちゃんの携帯は、電源が切られていた。一応、メールは打っておいた。ちょっと焦って来た。こんなんじゃだめだ。ここに居たってなにもできない。
あたしは、上着を取って部屋を出た。汗臭いスウェットだけど仕方ない。
このままじゃ、真樹ちゃんが滅茶苦茶にされちゃう。




