なんかみじめだ
「真樹ちゃんは、どうしてあたしに優しくしてくれるの?」
ふだんなら、聞きにくいような事が、思わず口をついてしまった。
「わたしは……べつに、優しくなんかないよ」
「どうして、一緒に遊んでくれるのかっていうこと」
「うーん……どうしてかな?」
「あたしが痴漢から助けたから?」
「それも、あるけど……たぶん、違う」
真樹ちゃんは、すごく困った様子だった。聞かなければよかった、とちょっと後悔した。理由なんかないよ、とか言って、軽く流してくれた方がよかった。なんていうか……なんかみじめだ。
「なんか、ほっとけないからかな?」
真樹ちゃんにとって、きっと、あたしは雨に濡れている捨てられた子猫みたいな存在だ。
「千夏ちゃんは、普通の人の目をしてないよ」
真樹ちゃんの属性は【天然】なので、ときどき素で、ぎょっとするようなことを言う。
「ふ、ふつうってなに? あたし、別に火を吐いたりしないけど」
「千夏ちゃんの顔にはね、たすけて、って書いてあるよ」
ほっとしてあたしは笑った。それは真樹ちゃんの思い過ごしだ。あたしは誰にも助けてもらう必要なんかない。不本意ではあるけれど、むしろあたしは助けている方だ。
「それはカン違いだよ、真樹ちゃん。あたし、べつに困ってないよ」
真樹ちゃんは、納得しなかった。
真樹ちゃんは立ち上がり、あたしの前髪をかき上げて、目を覗き込んだ。
「うおぉお、ま、真樹ちゃん、な、なに?」
「でもね、千夏ちゃんは、わたしと同じ目をしているよ」
真樹ちゃんは、そう言って、微笑んだ。