表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犯人探し  作者: ずかみん
9/26

罰ゲームじゃないんだから

 ワッフルはあたしにとっては凸凹がついただけのホットケーキだ。棒状になろうが、リング状になろうが、属性に変更はない。

 三十分も行列に並ばなければならない様な、必須栄養素ではないのだ。


 でも、あたしの顔を見上げる真樹ちゃんの笑顔を見ると、ま、いいかと、あきらめの気分になる。

 オフィス街の真ん中にあるお店だ。ビルディングの一階テナントに、小さな看板が誇らしげにかかげてある。雑誌に載るような話題の店なのだ。


 あまり車通りのない道の両脇には、ゆったりとした歩道がとられていて、大きな街路樹が植えてあった。


 行列は日差しをさけて、街路樹がつくる陰の中に長くのびている。

 真樹ちゃんはちっちゃいので、話す時は、男子平均並みの身長を持つあたしを見上げる感じになる。


「それ、いいよ。とっても可愛い」


 真樹ちゃんは、たぶん、あたしの髪型のことを言っている。一緒にいる真樹ちゃんに恥をかかせたらマズイと思って、昨日、一年ぶりに髪を切ったのだ。


「そ、そうかな、てれちゃうよ」


 真樹ちゃんは、ちゃんとあたしを見てくれている。

 真樹ちゃんはちっちゃいけれど、ちゃんと釣りあいのとれた体で、出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。もしあたしが男だったら、ぐへへ、じゅるじゅる、て感じだ。


 でも、ふわふわするような物言いのせいで、あまり、生々しく女って感じはしない。そういうところが二次元っぽい。


 行列は少しずつ進んでいる。風があって、以前に比べたら過ごしやすくなっている。二週間前なら、あたしはもう倒れていたかもしれない。今でさえ、あまり屋外環境に耐性のないあたしは、ねとねとする汗をかいていた。


 そう言えば、街路樹の葉の色も、少しくすんでいた。たぶん、この樹は紅葉するのだ。


 真樹ちゃんは、あたしの腕に触れて、体を引っ張った。

 あたしは、後ろから自転車が来ていたことに、気づいていなかったのだ。


「千夏ちゃん、あぶないよ」


 真樹ちゃんとあたしは、一瞬、体をぴったりと密着させる感じになった。柔らかい感触に、あたしはどきっとした。香水かシャンプーか分からないけど、真樹ちゃんは、甘い匂いがした。


「おお、ありがと。真樹ちゃんて、見かけよりしっかりしてるよね。必要なことをちゃんと出来るというか……」


「いつも、天然だと思ってる?」


 ごめん、思ってた。


「わたし、これでも勉強もスポーツも出来るのよ。がんばってるの。ああ、やっぱりって言われたくないから」


「やっぱりって?」


 真樹ちゃんは、ちょっと暗い感じで横をむいた。


「なんでもないよ。むかし、ちょっと、いろいろあったの」


 行列は思ったよりはけたので。あたし達は、すぐに目的の名状しがたい食物を手に入れた。少し歩いて、街路樹の下に空いているベンチを見つけ、二人で座った。


 目の前を、同じ食べ物を持った女子学生が、五人、笑いながら通り過ぎて行った。


 真樹ちゃんは、自分の学校にも友達がいて、今の女の子達みたいに、みんなで楽しそうにしていても変じゃない。罰ゲームじゃないんだから、わざわざ、隣の学校の陰気な女子生徒と、つまらない会話をしないといけない理由なんて、どこにもないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ