第8話
クローズさんに案内されて店の奥へとやって来た。
売場もいろいろな道具がいっぱいあったけど、奥も凄いや。
しかもかなり積み重なっている。
よくバランス崩れないな〜。
「ここにある道具を仕分けるんですが、ご覧の通りかなりごちゃごちゃなんですよ。私、買い付けに行くと気になったものをどんどん買い漁ってしまうのでいつもこんな状態なんですが、さすがに不味くなってきたので棚卸しも兼ねて整理しようかと。」
そうだね、その方がいいよ!
これじゃあ、いつ雪崩が起きてもおかしくないや。
「では、この奥に中庭があるのでそちらに運んでもらえますか?私は店の方を片付けるので」
そう言うと、クローズさんは店先に戻って行った。
では、やりますか。
まず、中庭に全部出さないとね。
普通にやってたら一週間はかかるよ。
さて、どんな魔法ならいいかな。
風の力で持ち上げてそのまま押せばいいか。
とりあえずやってみることにする。
荷物の下に風を流して、バランスが崩れないように荷物を風で固定する。
浮き上がった荷物をそっと押して中庭に誘導した。
一塊毎に運んだので10往復で荷物を全部運び終えた。
思ったより早かったので、ついでに空いたスペースの掃除もした。
風で散りやホコリをまとめて、水で洗い流す。
直ぐに風で乾燥させれば、ほら綺麗になりました!
さて、次の作業指示をもらいにクローズさんのところに行きますか。
「クローズさーん」
「おや、どうしました?もしかして疲れちゃいましたか?もうそろそろお昼だし休憩しましょうか。」
「いや、そうじゃなくて。荷物運び終えたので次の指示下さい。」
「え?」
とりあえず現場を見てもらったほうが早いと思い、クローズさんを奥へ連れて行った。
中庭を見たクローズさんは目を白黒させて驚いている。
「な、え、ほ、本当に終わってる…。しかも部屋の掃除まで………。」
「信じてもらえました?で、次の作業指示お願いします!」
「いや〜、君は本当に凄いね。荷物整理なんて頼んじゃって申し訳ない。」
「いえ、私Eランクの冒険者なので。出来ることなら何でもやりますよ。」
とはいえ、実際の予定より早く進んでいるらしいのでお昼休憩を取ることになった。
クローズさんが用意してくれた昼食を一緒に食べる。
猫だからか、魚料理がメインだ。
白身魚のフライと魚介のスープ、どちらもとっても美味しかった。
クローズさんは猫舌なのかスープをこれでもかというぐらい冷ましていたのが、面白い。
猫耳イケメンが必死にスープを冷ます仕草はマニアには堪らないと思う。
きっと需要はあるはずだ。
「では、午後の作業を始めますか。ミコトさんは私が棚卸しした商品をまた中に運んでもらえますか?直ぐに使う商品ではないので奥から詰めて崩れないように入れてもらえればいいですよ。」
「はい、わかりました!」
さっきと同じ要領で荷物を運んでいく。
ただ、さっきよりは見やすいように並べていった。
今は使わなくてもいつかは使うもんね。
そうやって作業を進めているうちに荷物から一つ道具が落ちてきた。
うん?何これ?タマゴ?
なんか随分色の主張の激しいタマゴだ。
何色って言うの、コレ。
私がタマゴを持って悩んでいると、棚卸しを終えたクローズさんがやって来た。
「ミコトさんのおかげでこんなに早く終わりましたよ。うん?それは…」
「あ、ごめんなさい。なんか随分変わったタマゴだなぁと思って見ちゃってました。戻しますね。」
「いや、いいですよ。良かったらそれ貰ってくれませんか?私も不思議なタマゴだと思って手に入れたんですが、どうやっても割れないし。お好きにして結構ですので。」
え、くれるの?
うーん、でも微妙なタマゴだなぁ。
なんか魔力っぽいの感じるんだよね。悪意はないけど。
まあ、貰えるものは貰おうかな。
「では、遠慮しないで貰いますね。ありがとうございます。」
「お礼はこっちが言いたいですよ、本当に。今日中に片付くとは思っていませんでした。ギルドの報告書にはきちんと色をつけておきますね。また何かあったらミコトさんにお願いします。」
私はクローズさんに促されて店の水晶玉にカードをかざした。
これで依頼完了。あとはギルドに報告すればオッケー。
「では、お世話になりました。」
「こちらこそ、また来て下さい!依頼でも、店への来店でもいつでも歓迎しますよ」
こうして私の初依頼は無事終了した。
さあ、ギルドに報告に行こう。
ギルドに入ると、まだ早い時間のためかあまり冒険者はいない。
いつものお姉さんの所も空いていたのでカウンターへ向かった。
私の顔を見ると笑顔で話しかけてくれた。
「お帰りなさい。その様子だと無事依頼は終了したみたいですね。」
「はい!ちゃんとカードにも登録してもらってきました。」
「では、この水晶玉にカードをお願いします。」
言われた通りカードをかざす。
お姉さんが依頼内容の確認をしている。
なんか、ちょっとびっくりしているような。
「はい、確認致しました。クローズさんの依頼はA判定ですね。報酬がアップするのと、クローズさんの依頼は優先的にミコトさんに依頼されます。」
「えっと、A判定って何ですか?あとクローズさんの依頼を優先的にっていうのも…。」
「あ、すいません。説明不足で。判定は5段階に分かれています。通常通りであればC、悪ければというか依頼失敗だとEになります。ミコトさんのA判定は1番の高評価です。なかなか初めての依頼でつくことはないんですよ。そしてA判定を受けた方は、その依頼者の仕事を優先して受けられるんです。信頼されているといことで。」
ほうほう、クローズさんは随分私を買ってくれているのね。
有難いことです。
「では、今回の報酬を支払いますのでカードをお願いします。」
カードをかざすとカードが光った。
「はい、無事完了いたしました。それから、Eランクの方でA判定を3回取れればDランクにアップしますのでミコトさんでしたらすぐランクアップ可能ではないですか?期待してますね。」
お姉さんが微笑んでくれた。
よし、これからも頑張って依頼こなしていこう!




