裏話12 交流会でやらかした話4
そんなこんなで交流会当日。
俺は、他の選抜メンバーに白い目で見られながら、控え室にいた。
胃が痛い。
言いたいことがあるなら、あの糞担任と生徒会長にどうぞ。
選抜メンバーは各学年から一人ずつ出ている。
聖魔学園も相手も三年制なので三人である。
これで団体戦と、個人戦をやるのだ。
ただ、個人戦は総当たり戦なので、五人を相手にしなければならない。
骨が折れる。
控え室には、ゲストである【フィゼアート魔法学園】の生徒の姿もある。
全員どこかしらの国のやんごとなき血筋の人間らしい。
めたくそキラキラしている。
なに、リア充はキラキラしてないとダメな法律でもあんの?
向こうは一年生も含めて楽しそうに会話をしている。
こちらは、先輩たちだけで固まって楽しそうにおしゃべりをしている。
俺? 俺は、ずっと携帯を弄って追っかけている神絵師の作品を観ていた。
だって暇なんだもん。
「ねぇ、ねぇ君が一年生代表?」
キラキラとした、こう言っては偏見があるかもしれないが女子が誰しも1度は想像する理想的な王子様のような美少年が俺に声をかけてきた。
フィゼアート魔法学園の一年生代表だ。
名前は、キラキラ君でいっか。
「はい、そうですけど」
「そっかぁ、エルが言ってたのは君かぁ。
うん、たしかにエルがああ言うのもわかるなぁ」
すっげぇ、嫌なこと言われてる気がするのは気のせいかな?
気のせいにしておこう。
「エル?」
それでも反応しないのは失礼になるだろうから、キラキラ君へそう返す。
「とぼけるのも上手いんだね。
君がズルをしたために、この交流試合に参加出来なかった男だよ。
そうでなければ、今ここに居るのは、君みたいな農民上がりなんかじゃなく、かの英雄の弟子であるエル・フォン・ファランクスだったはずだしね」
「…………」
「ねぇ、どんな卑怯な手を使ったんだい?」
「魔法使いでも、賢者でもなく、英雄の弟子?」
俺はキラキラ君へ、訊ねる。
シルフィーのおばちゃん達を見て参考にした、秘技取り留めのない会話である。
女性達の会話はちょくちょく変わるのだ。
「おや、さすがに知っていたか。
その全てが正解だよ。
偉大なる魔法使いであり、賢者と称され、そして現代の生きる英雄。
その英雄の唯一の弟子こそ、君が卑怯な手を使って蹴落としたエル・フォン・ファランクスだ。
つい最近だと、一人で一つ目巨人を倒したとか聞いたな」
あー、はいはい。
毎年スイカ狙って棍棒振り回してくるあいつね。
梨やブドウも被害に合うんだよなぁ。
筋力とかマジやべぇんだよな。
「……へぇ、凄いんですね」
と、携帯を操作してっと。
「すごいんだよ、彼は。
そんな凄い彼を、君はズルをして蹴落とした。
ここに居る、ということは、ズルをしたという恥をさらしているんだよ?
学のない農民でも、それくらいは理解したほうがいいよ」
「……中卒でも学が無い扱いですか。
そんな学の無い農民が作った食べ物をアンタらは口にしてるんですね。
馬鹿が作った食べ物を食べて、恥ずかしくないんですか?
頭がいい人が作った食べ物をちゃんと食べたほうがいいですよ?」
これでも文字は書けるし、魔族語も古代語もそこそこできんだぞ。
こうして嫌味だって言えるんだぞ、参ったか。
「あははっ、口だけは達者なんだ?
その達者なお口で聖魔学園の生徒会長と、教師に取り入ったんだろ?」
すごいな、どれくらい身分が高い人なのかは知らんが、この人こっちが負けたって態度示すまでネチネチ言ってくるタイプだ。
なら、
「ありがとうございます! そんなふうに頭がいいって認めてもらえるなんて嬉しい限りです!
仲間たちに自慢できますよ!」
「は?」
「え、だって口達者な人ってそれだけ頭が回るってことじゃないですか!
貴族様からそんなお墨付きを貰えたってことですよ?
貴方はたった今、卑怯だのなんだのツンデレセリフを吐いて、俺の事を認めたんですよ」
ここぞとばかりに、自分なりにいい笑顔を向けた。
そして、続ける。
「さらに、権力者に対する交渉スキルも中々のものだと言われて自信がつきました!」
「そんなこと一言も言ってないだろ!!」
「またまたぁ、さっきご自身で、そのよく回るお口で言ったじゃないですか。
【その達者なお口で聖魔学園の生徒会長と、教師に取り入ったんだろ?】って。
言い換えるとそうなりますよ?」
俺はダメ押しで、途中から携帯で録音していた会話を再生する。
ついさっきの会話が再生されていく。
「ね? 言ってるでしょう?」
今、もしも鏡で自分の顔を見たらきっと悪い笑顔をしていたに違いない。
キラキラ君の顔が、怒りで真っ赤に染まる。
悪いな、キラキラ王子君。
人生の先輩との付き合いだけなら、俺の方が上なんだよ。