裏話13 交流会でやらかした話5
勝てば官軍、負ければ賊軍。
そうなってくれた方が良かった。
でも、そうならないと知っていた。
わかっていた。
予想出来ていたからこそ、好き勝手出来た。
交流試合は最初に団体戦が行われた。
俺が三人とも相手をした。
勝ち抜き戦方式だ。
なので、大将までには進ませなかった。
開始の合図と共に、魔法で身体強化してスピードを上げ間合いを詰め殴り飛ばす、蹴り飛ばす、足を首に絡ませて地面に脳天から叩きつける。
それぞれこれで倒した。
この時点で、観客やテレビの関係者からは化け物呼ばわりされた。
でも。
俺は体育館の壇上、そこに降ろされているスクリーンを見る。
映し出されているのは、ここまでのリプレイと、流れていく文字達。
視聴者の感想が弾幕となって、流れていく。
その中に、俺はその文字を、言葉を見つける。
スレ民らしき言葉を見つける。
この場で、【スレ主】と書き込む存在は限られている。
聖魔学園の先輩たちと、ゲスト校の生徒たちの中に掲示板を立てるような暗い性格の人間がいれば別だが。
たぶん、それはないだろう。
【スレ主】に続く文字と言葉に、【二周目チート野郎を殺した拳だ!】とか【でた!トンデモ兵の喧嘩殺法!!】とか【殺れ!!イケメン連中の顔をボコボコにしろ、スレ主!!なぜなら俺がスッキリするから!!】とか、【上級国民死すべし】等など。
やべ、草生える。
期待に応えて、ちょっと頑張ってみようかな。
個人戦は敵味方関係ない総当たり戦だ。
なので、この学園に来て珍しくちゃんと頑張ってみた。
積み上げられた、俺にボコボコにされた先輩たちとゲスト校の生徒たち。
観客達からはすでに言葉はない。
あるのは、異物を見る目。
あるのは、化け物を見る目。
あるのは、恐怖という感情。
その中にあって、やっぱりスクリーンにはあの文字が、言葉が踊っている。
「あはは、あとで報告スレ立てなきゃ」
と、積み上げられた負け組生徒の一人が意識を取り戻したのか、声を出した。
それは、とても短い悲鳴みたいな声だった。
少し既視感を覚えたのは、きっと、糞担任と鬼ごっこをした時の自分と重なったからかもしれない。
いや、俺は糞担任と比べたら全然マシな方だし。怖くないほうだ。
それはともかく、声のしたほうを見る。
声の主は、キラキラ君だった。
「なぁ、誰がズルをしたって?」
俺は意地悪く聞いた。
聞いたついでに、殺気をあてる。
それだけで、白目を剥いてキラキラ君は再度気絶してしまった。
実技授業でモンスターを倒す経験くらいしているだろうに、情けない。
本当はもう少し言ってやろうと思ったのに。
例えば、【アンタらも俺のズルに協力してくれたの?】とかそういうの。
ちなみに、俺はパーティーへの出席が無しになった。
理由は相手を痛めつけ過ぎたから、らしい。
ゲスト校からの申し出で、断りきれなかったとか。
なんか、すみません。ついつい頑張っちゃってすみません。
本音は、ざまぁ見ろだったけどね。
いいじゃん、それくらい思っても。人間だもの。
俺はそもそもパーティーじゃなくて、パーティーに出される料理が一番の目的だったし。
その料理の一部を、寮の自室へ運んでもらう。
寮の談話室のテーブルにズラっと豪華な食事が並ぶ。
あいにく、この寮には現在、俺とブラン、そして寮母さんしかいない。
俺が部屋を使う許可が出た時、一緒に部屋替えもあったらしい。
それでも本当はあと数人ほど寮生がいたらしいが、大人の事情で退学や転校、そして実技授業中に起きた不幸な事故によって帰らぬ人となったとか。
実技授業、もうしない方が良いんじゃないかな?
まあ、それは俺の考えることでは無い。
今はそんなことより、豪華な料理である。
俺、ブラン、寮母さんの三人で食べ切れるかな?
なんてワクワクしながら食べようとした時、来客があった。
寮母さんが玄関に赴き、客を連れて戻ってきた。
レイドとエルリーだ。
……エルリーって、そういや二周目チート野郎の本名と似ててややこしいんだよなぁ。
彼女の名前、たしかエルリーフォンだったはず。
今度リーフォン呼びしてといいか聞いてみよう。
さて、そんな二人がここを訪れた理由だが、この前と同じだった。
無双してやらかした俺を祝いに来てくれたらしい。
本当は男子寮に女の子は入っちゃいけないんだけど、その辺は寮母さんが大目に見てくれたらしい。
幼なじみからもらった蜜柑。
その蜜柑で寮母さんが作ってくれたジュース。
果汁100パーセントのジュースが注がれたグラスを全員が持つ。
そして、乾杯をして、ささやかな、でも豪勢な料理を楽しむパーティーが始まったのだった。
コイツらには悪いが、少しだけ。
本当にちょこっとだけ、俺はおもってしまった。
(本当だったら、農高の収穫祭の打ち上げで、悪友達とこういうことしたんだろうな)
きっと、楽しかっただろうなぁ。




