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アイヲンモール異世界店、本日グランドオープン!  作者: 坂東太郎
『第十二章 ダンジョン攻略の便利アイテムを探すのは間違っているだろうか』

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第十五話 カリスマ実演販売士かな? 案外、クロエにはこういうの向いてるのかもな。愛されキャラ的な


 俺が店長になってから40日目のアイヲンモール異世界店。

 4回目のドラゴンセールは出だしから好調だ。


「くうっ、これこれ! 気軽に魚が食べられるってのはいいねえ!」

「はっ、これだから新参は。ここは肉喰うとこなんだよ、なんたって『ドラゴンセール』だかんな!」


「お待たせしました! 今日届いたばかりの新鮮なお魚ですよ!」


「これさかな、か……?」

「待て待て待て。これはいまから焼くんだよな? そうだよなコレットちゃん?」

「くふふっ、わかってませんねえ。これはこのまま食べるのがツウなのです。ああ、懐かしい」

「おまえ正気か!? 魚を生で食ったら腹壊すぞ!? 腹破られるぞ!?」


「心配いりませんよみなさま。そのままでも食べられるところを、開店前に騎士さまと薬師さまに『浄化』していただきましたから」


 ファンシーヌさんが説明すると、魔法使いっぽい冒険者さんは「それは感心」とばかりに頷いた。

 まあ、説明されてもまわりの冒険者さんたちはドン引きだ。

 港町直送の、生で食べられる例の魚?は受け入れられないらしい。

 今度イグアナ、もとい、竜人族のクアーノさんに言って仕入れはやめてもらおう。もともと頼んでないけど。


 4回目のドラゴンセール。

 前回よりテーブルもイスも増やしたイートインスペースは、午前中なのにほぼ満席だ。

 今日はファンシーヌさんとコレットがお惣菜の調理販売にまわってる。


 混雑するイートインスペースの隙間を、イヌやネコやウサギの着ぐるみが歩く。

 着ぐるみゴーストはバッシング——テーブルの後片付け——担当だ。

 やたら楽しそうなのは、新しい仕事で張り切ってるんだろう。


「よしよし。あそこは、例の『生で食べる魚?』以外は問題なさそうだな」


 頷いてうろうろ動きまわる。

 なにしろ今回のドラゴンセールは人手が足りない。

 俺だけは一人浮いた配置で、混雑が見られればすぐサポートに入る予定だ。


 イートインスペースを出て、街道から続く正面入り口の馬車まわし(ロータリー)を見る。

 無料送迎馬車のほかに、最寄りの街から馬車に乗り合わせてくる人も多い。


 まだ午前中なのに馬車まわし(ロータリー)周辺は混雑してた。

 けど、混乱はない。

 怒号もない。

 みんな大人しく、従(・)業(・)員(・)の指示に協力してくれてる。


 なにしろ——


「おう、降ろし終わったらさっさと退け!」

「バカ、いま退くから大人しく待ってろ!」

「んだ? なに焦ってんだ、んなヒマあったら早く馬車動かせ!」

「やめろ揉めるな!」

「はあ? なんだってんだいちいち……ヒエッ」


 ——ちょっと騒がしくすると、全身甲冑(フルプレートメイル)の人(・)たちが飛んできて無言のプレッシャーをかけてくれるから。


 馬車の御者さんと冒険者さんの大きな声が聞こえたんだろう。

 六人一組の全身甲冑(フルプレートメイル)が馬車に近づいて、「ご協力お願いします」の札を掲げる。


「わ、わかってる、いまのはケンカじゃねえ、ちょっと友達とじゃれあってただけだ、な、なあ?」

「おう! なにしろ街には馬車を待ってる人も多くてな! わりいわりい!」


 御者さんと冒険者さんの言葉を聞いて、全身甲冑(フルプレートメイル)の六人がガシャっと鎧を鳴らして離れていく。

 冒険者さんでも、揃いの全身甲冑(フルプレートメイル)には無言の圧力を感じるらしい。

 中身はスケルトンだけど、やっぱスケルトン部隊もただのスケルトンじゃないんだろうなあ……。


 とにかく、布の服と手袋とラバーマスクの上に全身甲冑(フルプレートメイル)を着込んだスケルトン部隊のおかげで、馬車まわし(ロータリー)周辺は混雑してるけど揉めごとはない。

 ありがとうございます。

 プレッシャーかけるのはいいけどバレないように気をつけてください。


「こっちも問題なし、と。じゃあ新商品の様子を——」


 またふらふら歩き出す。

 と、アンナさんの声が聞こえてきた。


「防水薄布は売り切れました。申し訳ありません」


「くあー、マジか! 小せえのに雨を弾くって噂聞いて買いに来たのによ!」

「仕方ありませんね……あの品質で、この値段なのですから。次回の販売はいつでしょうか?」

「ちっ、じゃあイス買ってくかなー」

「は? んなもん地べたに座りゃいいだろ。お貴族様気取りか?」

「やめてやれ。地面に座るのがツラいヤツもいんだよ。なあ?」


 今日のアンナさんは薬のほかに、行商人さんたちと一緒に日用品を販売してる。

 既存商品は行商人さん、新商品はアンナさんが売り込んでたみたいだ。


「レジャーシートはさっそく売り切れか。もっと用意できればいんだけど、なあ」


 元の世界と〈小規模転移ゲート〉がつながるのは二週間から一ヶ月に一度だ。

 それも、カゴ台車三台分。

 仕入れられる量はたかが知れてる。


「そう考えると、月間売上一億円の目標を達成するには、こっちの商品を売るべきなんだよなあ。ドラゴン肉や海鮮みたいに」


 アンナさんの売り切れ報告を聞いても、お客さまは無茶な要望を出すことなく引き下がった。

 こっちの世界では、「売切御免」は普通のことらしい。


「反応がいいだけ良しとしよう。さて、今回の目玉は——」


 4回目のドラゴンセールで売り出す新商品はレジャーシートをはじめとしたピクニック用品だけじゃない。

 今回の目玉は、クロエやアンナさん、事前販売の反応がよかった商品だ。


「……持ってきた」


「うむ、ありがとうバルベラ! でははじめるとしよう!」


 クロエに頼まれて、バルベラはバックヤードから段ボールを運んできたらしい。

 重ねた段ボールは、見た目10歳のバルベラの体より大きい。

 中身は軽いって知ってる俺はともかく、お客さまがギョッとして特(・)設(・)ス(・)テ(・)ー(・)ジ(・)に注目する。


 うしろに全身甲冑(フルプレートメイル)スケルトンの一隊を引き連れて、クロエが特設ステージに上がる。


「さあみな、注目してほしい! 今回も驚くような商品があるんだ!」


「よっ、待ってましたクロエちゃーん!」

「配下もいるなんて出世してんじゃねえか聖騎士さま!」

「誰だあの美人? エルフか?」

「はっ、知らねえとはモグリかよ。街でも有名なポンコツ騎士様だぞ?」

「ほらほら、クロエちゃんを応援するんでしょ?」

「くろえおねえちゃーん! がんばえー!」


 左右に三体ずつ全身甲冑(フルプレートメイル)スケルトンを侍らせてクロエが声を張り上げると、特設ステージ前のお客さまが沸いた。

 登壇しただけで。


「カリスマ実演販売士かな? 案外、クロエにはこういうの向いてるのかもな。愛されキャラ的な。あとやっぱり『ポンコツ騎士』って街で有名なのか」


「くっ、みなそんなに褒めて私をどうする気なのだ!? ま、まさかナオヤのように、褒めて喜ばせて私を弄ぼうと!? くっ、殺せ!」


「まるで俺が弄んだみたいに聞こえるだろポンコツ騎士ィ! ちょっとでも感心した俺の気持ちを返せください!」


 ついつい突っ込むと、集まったお客さまがドッと沸いた。

 あ、うん、そういうショーじゃないんで。

 いまのは台本じゃなくて素なんで。

 …………まあ、うまいことツカミになったってことで。



 俺が店長になってから40日目のアイヲンモール異世界店。

 エルフの聖騎士にして「失格エルフ」「ポンコツ騎士」、クロエの実演販売がはじまる。

 どうか「カリスマ実演販売士」でありますように。

 せめてまともに商品説明できますように。




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