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ep.55 旧国鉄廃線跡3

 

 銀平と佐那が光の元に出てきたとき、何やら林がギャーギャーと正輝を苛めていた。


「ほんまに信じられへんわ」


「優子、どないしたん?」

「あ、佐那、聞いてや。暗闇に紛れて白山君が私の胸を触りよってんで」

「あほ、あれは事故やっちゅうねん!」

「事故って、何にもないのになんでいきなり胸さわるんよ!」

 必死に弁解する正輝に、林は疑いの横目を送りつつ、容赦無く責め立てる。


 さすがに気の毒に思ったのか佐那がその間に割って入った。

「まあまあ、優子、正輝君は故意にそんなことせえへんって。

 あんな暗がりやってんから、つまずいたとか、水滴の音にびっくりしたとか、そんなんやって」

「いや、水滴ごときで、びびらんけどな、実はな・・・」

「胸が触りたかった?」


「一、チャチャ入れんな!」


「白山君、落ち着いて、で、実は何なん?」

 佐那に促されて、正輝は冷静さを取り戻して言った。


「いや、トンネルの中でなブーン、ブーンって変な音がしとって、

 林にそのこと言うてもなんも聴こえへんっていいやがって、

 気のせいかと思ってほっとったらいきなりその音が凄い勢いで俺の顔に迫りやがったから、

 とっさにかわしたら、林の乳に手があたってもうたんや」


「乳って言うな。まあ、ええわ、そう言うことにしといたるわ。

 まあ、男やったら、こんな可愛い子の胸に惹かれてしまう気持ちも分からんでも無いし」


(ああ、殺したい・・・)(正輝、耐えろ、耐えるんや)

 一文字と正輝は珍しく心が重なっていた。


 その後、廃線に沿って進んで行くと、また同じようなトンネルがあった。

 正直、みんなうんざりした。


 同じようなトンネルを四つ五つ抜けると、そこには武田尾温泉郷が広がっていた。


 ひとっ風呂浴びて行きたいところだが、着替えも持ち合わせも無い一文字達は、素直に帰ることとし、無人の武田尾駅で電車待ちをしていた。


 時間つぶしに、正輝が皆の背筋を冷たくさせようと、怖い話を創作することとした。

「俺、見てもうたんやけど」

「なに、なに?」とみんなが正輝の話しに取り込まれていく。

「トンネルに入る前にトンネルからランニングしてるおっさんが出てきたやろ、あの人、途中から足がなくなっててんで・・・」


 みんな不思議そうに顔を見合わせている、皆を代表するかのように林が言った。

「ランニングしてるおっさんなんか、誰も見てへんで。

 武田尾着くまで、私ら誰とも出会ってへんやん」

 正輝の背筋が冷たくなった。


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