ep.102 戸惑い
第三学年 十月六日 水曜日
浄妙院(上原家)台所
ここ数日、ずっと繰り返している、一人になった時の佐那は、何やら嬉しそうに微笑んでいたかと思うと、今度は急に暗く沈みこむ、どうにも様子がおかしい。
気になった哲彦は、夕食の後片付けを終え、テーブルで一人頬杖をついてぼーっとしていた佐那に歩み寄るや声を掛けた。
「なんや最近、なんかあったんか?」
言われてから父がすぐ目の前に来ていたことを知った佐那はあからさまにうろたえた。
「わ、びっくりした!いきなり何なん?」
「なんやて、なんや?それより最近、なんかあったんか?」
「ううん、なんもないで、」
小さく頭を振り応じた佐那は冷静さを取り戻していた。
「そうか、それやったらええけどな、」
哲彦は言葉こそ毅然としていたが、佐那を心配している様子がありありと覗えた。
そんな父親に佐那は悪戯っぽく微笑みかけると、不意に哲彦の顎鬚を摘んで甘えた口調で言った。
「お父さん、こんなにお髭が伸びちゃいましたね~」と、
「なんやなんや、いきなり、」
普段の佐那では考えられない行動に、今度は父・哲彦がうろたえていると、突然、佐那が胸に抱きついてきた。
そして佐那が言った、信頼と愛情を込めて、
「お父さん、大好き、」と、
胸にしがみつく愛しすぎる愛娘の頭を撫でながら哲彦は思った。
(こんなことは中学生の時のあの日以来か・・・)と、




