追撃部隊の到着
クロとシロとリンプーは境界の怪物まで、あと少しの位置に来た。
ここで、クレイトスに追いつかれた。
クレイトスは、見かけはヒョウだ。
体長が60センチ、ねこにしては大きく、ヒョウにしては小さい。
クレイトスは、ダッシュした後ジャンプして3匹を飛び越えた。
3匹は、前方を塞がれて進めない。
クロが、言葉に力を込める。
「クレイトスは、コミュニティ最強だ。
最初から全力で行く。
黒ヒョウ形態
ヴィールヒ」
クロが黒い霧を纏って突進する。
クレイトスは力負けしたが、吹っ飛んだりしない。
「ウラガーン」
黒い霧を纏った、強力なねこパンチがクレイトスに炸裂する。
「ハハハハハ。
さすがだ。アシュラを撃退するだけはあるな」
クロは、咥えたナイフで攻撃するが、ほとんど当たらない。
「ウラガーン」
黒い霧を纏った強力なねこパンチを、さらに炸裂させる。
「ウラガーン」
強力なねこパンチを、さらにお見舞いする。
(アシュラですら、一発で沈んだのに。
これだけ食らわせても、堂々としている。
どういうことなんだ?
これ以上は、危ない。
完全に意識を乗っ取られる)
クロのパンサライズドフォームが、解除された。
一目瞭然、クロは朦朧としている。
「ハハハハハ
普通のねこが、そのような猛獣の憑依で戦っても、長く持つわけがあるまい」
バシッ
クレイトスの顔面に、リンプーの石つぶてが決まる。
「ハッ。
あんたの相手は、一匹じゃないよ」
「相手が何匹でも、同じことよ。
倒すまでの時間が、長いか短いかだけのことだ」
クレイトス渾身のねこパンチを、リンプーは紙一重で避ける。
クロがクレイトスの後ろから、咥えたナイフで攻撃する。
クレイトスのお尻に、軽い切り傷を負わせる。
「貴様、ワシの体に傷をつけるとは。
地獄で後悔しろ!
ヴィルヴェルヴィント」
連続のねこパンチをクロに浴びせかける。
※ ヴィルヴェルヴィント:ドイツ語でつむじ風の意味
クロが何発か喰らってグロッキー状態の所、リンプーがまたクレイトスの後ろから、石つぶてを当てる。
「ハハハハハ。
連携プレイか。
しかし、黒ねこの方はもう限界みたいだがな」
クレイトスが一旦下がって、助走をつけてクロに体当たりをする。
と思った瞬間、間にシロが飛び込んだ。
シロは、もんどりうって弾き飛ばされた。
コンクリートの上に2回ほどバウンドして、痙攣している。
「シローッ!」
クロは目が覚めたように、シロのもとへ走り出した。
シロは、頑張って起き上がろうとするが、ままならない。
さらにクロ達を攻撃しようと、クレイトスが構える。
その尻の傷に、リンプーが噛みついた。
「グアーッ。
クソッ、離せ! 離せ!」
クレイトスは下半身をブンブン振るが、リンプーの牙が食い込むばかりだ。
リンプーに食いちぎられて、クレイトスは自由になった。
「ハーッ、ハーッ。
あんたも、かなりのダメージを受けたみたいだね」
「貴様ら、ただでは済まさん」
クレイトスの顔から余裕の笑いが消えた。
リンプーの方を向いたクレイトスの傷めがけて、クロがナイフを振るう。
シロまでが加わって戦ったせいか、クロ達が押し始めた。
突然、クロの目の前に一匹の灰色のオスねこが現れた。
少し前に情報を集めに来た、偵察部隊の一匹だ。
クロに、軽くねこパンチを食らわそうとする。
クロは体を反らして避けた。
クロが、ねこパンチで反撃しようとすると、灰色のねこはかき消えた。
「それが、魔法ってやつかい?」
リンプーの叫びに、メスのシャムねこが答える。
「その通りですわ。
やっと、追いつきました」
メスのシャムねこ、魔術師アサガオが説く。
「貴方達は、世界を混乱へと導く存在。
世界は、貴方達を拒絶しています。
でもクロ、貴方は猛獣が覚醒した存在。
その者たちと別れて、私と共に来なさい」
クロが、口を開こうとした瞬間、リンプーが遮る。
「フンッ。
目障りだよ。
あんたこそ、ここを立ち去りな」
「何と愚かな言いよう。
うつろう者たちよ。
天罰をお受けなさい」
リンプーが消えた。
ドボーン
水路の上にリンプーが現れ、水中に落ちた。