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クレイトスとアサガオ

 リンプーは水路をスイスイと泳ぐと、岸に上がった。

 プルプルと体を振るって、水を飛ばした。

「空間転移の魔法かい。

 ねこの戦いに、その技は反則だね。

 でも、良いのかい?

 もう境界の近くなんだよ」


「アサガオ。

 水路を使った戦いは危険だ、わきまえろ!

 境界の怪物が、水の音を聞いてやって来る」

 クレイトスの言葉に、リンプーがかぶせる。

「今の音は、ねこが水に落ちたって分かる音だよ。

 すぐにやって来るさ」


「こいつを黙らせろ!

 さっきの偵察隊を展開しろ」


 リンプーの前に1匹、クロの前に1匹現れた。

 だが、位置取りが悪かった。


 クロの前に現れた1匹は、いきなりナイフの餌食になった。

 リンプーの前の1匹は、水辺だったので体当たりを受けて水路に落ちた。


 バシャーン


 水に落ちたねこは、再転位で通路上に現れた。

 が、ずぶ濡れで丸まって戦意を失っている。

「俺たちは、使い捨ての駒じゃねえ」

 濡れたまま、走って逃げだした。


「おいっ、ババデル、貴様逃げるんじゃない!

 アサガオ、やつを逃がすな!

 ここへ転移させろ!」

 逃げたねこの名前は、ババデルのようだ。

 アサガオは、落ち着いた声で答える。

「戦意無き者を、引き留めても無意味です」


「誰のせいで、こんなに急ぐハメになったと思うんだ。

 さっさと転移しろ!」


「私への過度な干渉。

 たとえオジサマでも、許しませんわよ」




 シロは、よろよろと立ち上がった。

 まるで、自分も戦うと言わんばかりに。

 クロは絞り出すように言う。

「ここで僕が、しっかりしないと。

 例え死んでも、シロを守る!

 クレイトス、僕は貴様を許さない!

 黒ヒョウ形態パンサライズドフォーム


 クロは、走る。

 加速しながら叫ぶ。

「ヴィールヒ!」


 クロが黒い霧をまとって突進する。

 体当たりを食らって、クレイトスは吹っ飛ぶ。


「ガハッ。

 さっきまでと、レベルの違うパワーだ。

 一体どういうことだ」


 リンプーが解説する。

「クロの憑依ひょうい技は、文字通り命を削っている。

 知らず知らず、どうしたってセーブしてしまう。

 あんたがシロを傷つけたことで、リミッターが外れたんだ」

(でもそれは、クロ自身を絞り出して戦うようなモノなんだ)



 クロからの殺気を感じたクレイトスは、距離を取ろうと後ずさりしていく。


「ヴィールヒ!」


 再びクロが、黒い霧をまとって突進する。

 クレイトスは避けようとして、跳躍を試みる。

 しかし、しっぽが突っ張って、その場を動けない。

 しっぽに、シロが噛みついていた。


「まさか、こいつの方に足元をすくわれるとは」


 ドフッ


 強力な体当たりを、もろに食らう。

 鈍い音を立てて、クレイトスは吹っ飛ぶ。

 しっぽに食らいついていたシロも、ゴロゴロと転がる。

 シロは、素早くやって来たリンプーに当たって止まる。


 しかし、クレイトスはそのままバウンドして水路に落ちた。


 バッシャーン


 着水点が岸に近かったので、通路のへりにつかまった。




 よじ登りながら、吐き捨てるようにののしる。

「アサガオッ!

 何故助けん。この役立たずが!」


「あんた達、凄い能力を持っているのにね。

 1+1が0.5になる組み合わせだね」

 リンプーが馬鹿にするように言った。




 とその時だった。

 クレイトスの後ろが黒く盛り上がった。

 黒い塊は、大きく口を開けるとクレイトスを咥えた。

 ズルズルとクレイトスは引きずり込まれて、水面から姿が消えた。


 境界の怪物(ワニ)の登場だ。


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