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とある寂れた教会の少女

第三者目線






この寂れた教会の中でただ一つ、輝く宝石がある。






「あなたに、神のご加護がありますよう」




ここらで一等美しいのは、きっと彼女だ。





***






長い坂を登った先に見えるのは、ここら辺で一番立派な、しかしひどく寂れた教会。汚れてるわけではなく、むしろ綺麗なのに、どこか雰囲気が暗くて落ち着かない。正面の薔薇のアーチをくぐれば、むせ返るような薔薇の香り。ちらり見上げた薔薇の花はどこまでも完璧に咲き香る。ひどく美しく、そして淫靡。


そんな庭園の中で、天に愛されたように輝く黄金の髪を修道服に隠し、薔薇に水をやる少女がいた。

こんな教会に毎週の週末、信仰深いわけでもない俺が通い詰めるのは、もちろん彼女に会うためだ。





「ヘレン!」




ふわり、振り返ると彼女の美貌はさらによく見えた。

手触りの良さそうな金髪の髪をセンターわけにしたおでこは白く輝いていて、ぱっちりとしたアーモンド型の黄金の瞳は長い睫毛に縁取られ、つるりとした頰は軽く色付き、血が滲んだように赤い形の良い唇がどこまでも男を誘う。


俺を認識して、その金の瞳がたゆりと弧を描いた。

蜂蜜がとろけたような甘い笑みに、思わずその細い腰を掻き抱いてしまいそうになる。



「あら、マーク?」


「朝からご苦労様、水やり?」


「えぇ、今日も暖かくなりそうね。お祈りにきてくれたのかしら?」


「うん、まぁ、ね」


「素敵ね。」




ヘレンは素直に笑う。この穢れない美しさに誰も目をやらないなんて、バカな話だ。

礼拝堂が満員になったっておかしくないっていうのに。




「それにしても、ここは本当に礼拝者少ないな」


「うふふ、まあ、…そうね」


「あ、ごめん、そんなつもりじゃなくて」


「いいの、本当のことだし」


「いや、むしろお祈りしやすくて助かってるんだ!だから、何でなのかなって」





焦りながらそう続けると、ヘレンはさらに目を伏せた。

ふるりと震える瞼を見ていると、なんだかいけない気分になってくるほど、清純な修道服と相まって余計に色気が俺を襲う。

1人で勝手に苦しんでいると、ヘレンが微笑んだ。


そして、す、と俺を見上げた。



「私のせいだから、」


「え?」


「私嫌われてるの、この土地の人に」




マークは最近ここに住み始めたから、知らないだけ、言わなくてごめんなさい、と悲しそうに笑うヘレン。





「俺は別に、嫌ったりしないよ」


「…ふふ、その気持ちだけで十分」


「ヘレン、」


「ありがとう。礼拝、好きなだけしてね」




ふんわり笑って、豊満な胸の前で手を組み、少し俯く。





「マーク、あなたに神のご加護がありますよう」






その姿を見ているだけで心が澄んだように息がしやすくなって、きっとヘレンは何か普通じゃない力を持っているに違いない。






あぁ、化け物がなんだ。

彼女は天使だ、ただ、それだけだ。




『あの子は悪魔の子なんだよ』

『人を食うんだ、小さい時から化け物みたいだった』

『あの美しさも悪魔のしるしだよ』

『信じていたら、殺されるよ』





「マーク、素敵な名前ね!」



こんな天使を、誰が嫌いになれるっていうんだ。





ふわり花が舞うように教会の横にある彼女の家に入っていくヘレンをぼんやり見つめた。







「…いつ、好きだって伝えよう」








アーチの薔薇が一輪だけ、白く染まった。







マーク

20歳

最近この街にやってきた冒険者的な感じ。



今回はヘレンの説明回みたいなものでしたね。

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