役目を終えて
俺は勝人との約束通り、利伽の元へと向かってた。
―――昼休み。
約束通り、早々に弁当を食い終えた俺と吉田勝人は、利伽の教室であるD組へと向かってた。
特に何か会話をしながら歩いてる訳や無い。
基本的に俺等は特別に“親しい仲”って訳やないからや。
それに利伽の教室は、俺達B組と同じ階の一つ教室を挟んだだけ。
距離もあんまない。
教室の後ろ側に当たる扉から中を覗き込む。
出来れば誰にも声を掛けんと、利伽を呼び出せたら良えなーと思ったからや。
気ーつかいーな俺は、わざわざ誰かに利伽を呼んでもらうなんて手間を取らせたくないからや。
決してコミュニケーションが下手な訳やない。そこ、笑うな。
俺が覗きこんだのと、利伽がこっちを向いたんがドンピシャなタイミングやったらしく、バッチリと目があった。ラッキー!
俺がチョイチョイと手招きすると、利伽は弁当を一緒に食べてた友達に一声かけて、小走りでこっちに来てくれた。
「どないしたん?」
まー滅多に利伽のとこへ来るなんてない。
そう言われるんも当たり前や。
俺は目で、利伽を廊下まで出るように促した。
とりあえず利伽を教室から完全に出して、出入りが邪魔にならん位置まで移動させると、後ろで気配を消してるかの如く控えてた勝人を引っ張り出した。
それで大体の事を察したんやろう利伽は、小さな小さな溜め息をほんの一瞬だけついた。
長い付き合いやから俺には解ったけど、勝人は気付かんかったやろなー。
……すまんな、利伽。
「こいつ、俺のクラスの吉田勝人言ーねん。お前に話あるんやと」
「……う……うん……」
利伽は見るからに乗り気やない。
まーこういった時に、気分が乗ってる利伽を見たことないけどな。
「じゃー勝人、後は頑張れよ」
そう言って二人に背を向けて、俺はその場を離れようとした。
利伽が告白られる姿も、知人がフラレる姿も見たないから、早々に退散しよう思たんや。
「お、おい! 龍彦! どこ行くねん!?」
俺の背中越しに、勝人の情けない声が掛けられる。
ここまで来て、まだ俺にどうこうと考えてる時点でお前に芽はないわ。
「あほか、これ以上ここに俺がおっても、やることないやろ。後は頑張れよ」
振り返ることなく肩越しにそう答え、右手をあげてエールらしきものを送った。
「た、龍彦ー……」
勝人の情けない声が最後に聞こえてきた。
とりあえず俺の仕事は終わりや。
邪魔もせーへんけど、過剰な応援もせーへん。
ま、義理は果たしたな。
「あの人じゃー、利伽様のメガネに叶いそうにないニャー」
付いてきていたビャクが、こちらも溜め息を付きながら感想を漏らした。
全く同感やけど、勝人にとってはチャンスでチャレンジなんやろう。
それに俺が意見を言うんも筋違いやな。
俺は苦笑いでビャクに答えて歩き続けた。
このまま教室に戻るんも良ーけど、授業以外で教室を出るんも久しぶりや。
俺は校内をブラつく事にした。
ちゅーても、日差しの強い屋外に飛び出すつもりは毛頭ない。後、人の多い所は嫌や。
日向を避けて、人目も避けて、目的もなくブラブラしとったら、体育館と校舎を結ぶ一階渡り廊下から地下に向かう階段が目に留まった。
地下言ーても体育館下に作られた小さい物置みたいなもんや。
下りる階段も数段しかない。
多分中も、体を屈めんなアカンくらい天井は低いやろう。
普段やったら気ー留めへん場所やのに、今はなんでか目が離れへん。
「……タっちゃん、余計な事に首突っ込まん方が良ーでー」
足を止めて見入ってる俺に、ビャクが声を掛けててきた。
ビャクはあそこに、何がおるんか知ってるみたいやった。
「……やっぱり、何か居るんか……」
確認やなくて、確信。
俺は、自分の感じた物が間違ってなかったって言ー確信を口にした。
ビャクに問いかけた物や無かったけど、ビャクは溜め息でそれに肯定した。
俺は渡り廊下を外れて、その倉庫に足を向けた。
何か……何か気になる……。惹かれるように、俺は倉庫へと歩を向けた……。




