って、俺にも!?
ビャクの、突然の告白は、更に俺の頭を混乱に落としこんだ……。
「……はぁ――――!?」
流石に、絶句したと言ー事は何回もあったけど、開いた口が塞がらんと言ー状態を経験するのは初めてやった。
それくらいビャクの発言は衝撃的で、すぐに理解するのが難かしかったんや。
「ちょー、ちょー! タっちゃん、声が大きいニャ!」
前方では、俺が突然奇声を発したんで、何事かと如何わしい目を向ける三人の姿があった。
「……は……花……嫁……って……あの花嫁の事言ーてんの?」
それに気づいた俺は、殊更に声を密めてビャクに問い返した。
初耳尽くしも、ここまで行ったら笑うしかない。
「そうですニャ……って、禊様はその話もしてニャいって事ですニャー……」
一瞬誰に向けたのか、ビャクから怒りのオーラが沸き立ちすぐに消えた。
俺もギョッとしたけど、前を行く利伽もビクッとして振り返ってる。
そんな挙動不審な利伽に、声は聞こえへんけど、隣を歩いてる神流が「どないしたん?」と声をかけて、利伽はそれを誤魔化してる姿が見えた。
「まったく……禊様の『いい加減で行き当たりばったり主義』にも困ったもんやニャー。あんだけ話|通しといてって言ったのに……。人間と化身の関係は、見た目以上にややこしいねんからニャ……」
ビャクは溜め息を1ダースでも付きそうな勢いで愚痴り出した。
しかしこればっかりは俺も同意見や。
真偽はともかく、婚約とか結婚とか許嫁やら花嫁やら。
いきなり聞かされて、すぐに対応出来ひん事ばっかりやんけ……。
「それにしても……俺も利伽も、面白いぐらい同じタイミングで、こんな話が上がってくんな……」
つい先日まで、そんな話は全く無かった。
俺は当分、高校生活を満喫出来るー思てたんや。
「そら、しゃーニャいよ。タっちゃんと利伽様の能力が解放される時期を見越して、話が進められとったんニャから」
……なるほど。
想像するに、この世界では、能力の解放が済んで初めて一人前と認められるって事か。
それやったら俺等の周囲が急に慌ただしくなったんも頷ける話や。
「……って、そー言やビャク。お前まだ子供やんけ」
俺はビャクが変化した時の姿を思い出した。
確かに可愛いらしい女の子の姿やけど、どー見ても神流と同い年頃くらいや。
流石にまだ子供やと言える。
昔は女性も、10歳を越えれば結婚に駆り出されてたーなんて話もあるみたいやけど、時代が違いすぎる。
なんぼ昔ながらの“しきたり”を重んじるからって、子供と結婚させるのは非常識にも程がある。
でもビャクから返ってきた答えは、予想を大きく上回っとった。
「子供て……タっちゃん、ウチはこう見えても70年は生きてるんよ? タっちゃんよりもよっぽど年上ニャんやから」
―――70年!?
おとんより年上やんけ!
人は見かけに依らんと言ーても程があるやろ!?
……まあ、ビャクは人ではないんやけどな……
「まー化身に年齢とか見た目はあんまり関係ニャいし。今は年相応に変化してるけど、必要やったら見た目も変えること出来るしニャー」
そうやった。
ビャク達化身には、見た目を変える変化ってのがあるんやった……。
「どう? 化身的には勿論ニャけど、人間界の規則とかモラル的にも問題ニャいやろ?」
確かに、年齢70オーバーやったら、何も問題無いわなー……。
それよりも、もっと根本的なことに疑問が湧いた。
「っちゅーか、人間と化身て結婚してやっていけるんか? 子供とかどないなんねん?」
俺としては素朴な疑問やった。
別に俺とビャクがどーのこーのやなく、単純に問題なく暮らしていけるのかどうか不思議に思っただけやった。
「嫌やわー、タっちゃん。ちょー気が早いでー」
しかしどうやら、言葉足らずやったみたいや。
ビャクは猫の姿の癖に、クネクネと身を捩らせて照れてる。
顔も何処と無く赤らんでた。
まー間違いなく、こんな人間臭い猫なんて何処にも居らんわなー……。
「それこそ問題ニャい話ニャでー。古来から人間と化身の婚姻話ニャんて、掃いて捨てるほど転がってるニャん。例えば雪女とかー」
成る程、確かにその通りや。
美しい女性の姿をした雪女と、数年とはいえ結婚生活をしてた事実が、童話とはいえ残されとった。
他にも探せばわんさか出てくるやろーな。
「後は何代か前の不知火家御当主様は、有名な化身と添い遂げられたー言ー話も、おかんから聞いた事ありますニャ」
「えっ!? マジで!?」
初耳で驚きの連続やけど、これはまた衝撃の事実やった。
「マジニャでー。そやからタっちゃんの血には、薄っすらと化身の血も混じってるかもニャー」
それが本当やったら、確かに不知火家の血には化身の物が混じってるかも知れんな……。
まー今の俺はどー見ても一介の学生やけどな。
「とにかくまー、その話はとりあえず保留やな。俺も初耳やし、苦情はばあちゃんに言ーてくれ」
ビャクは「むー……」と唸って、それ以上その話はせんよーになった。
俺としても、ビャクだ化身だはともかく、今すぐ結論出せる話はやないからな。
そうこうしてる内に俺達が通う高校、「公立清蘭高等学校」の校門が見えてきた。
兎に角今は何にも答えなんか出ーへん。とりあえず学業を終えてそれからやな。




