第一話 異世界初日、肺が痛い
聞くところによると、たぶん『イセカイ』ってところに来たらしい。
いきなりこれだけで分かれ、というのは、かなり不誠実だとも聞いた。
どこの誰に聞いたのか? という話になるけど、その前にちょい待ってほしい。
現在の状況。
俺たち、グリーンのハゲ十匹に追われてる。
キモい。
かなりキモい。
グリーンなのにハゲはキツい。意味が分からない。意味が分からないものが十匹いる。無理。
しかも槍とか石とか投げてきやがる。当たったらどうすんだ!
文明レベル低そうなくせに、殺意だけはちゃんとしてるのムカつく。
そして俺たちも、キツい。
「おっさん走れって! 追いつかれる!!」
「お! 心配してくれんのか? ニセ令和!」
ムッカつく。
おっさんは、イセカイテンセイ? テンイ? とかいう、そのへんを教えてくれた人だ。
本人いわく、「こういうのはだいたい読んできた」らしい。
そのわりに、今は普通に逃げている。
この人とどう出会ったのか。
あと、なんで俺が『ニセ令和』なのか?
そのへんはまた今度にしてほしい。
「あんたが死んだら俺が困るんだよ、クソ昭和!」
ムカつくけど。
このおっさんが死んだら、俺はたぶん終わる。
「なんだと!? よし、生き延びて、寝てるお前の枕元に立ってやる!」
「攻撃力ゼロの嫌がらせやめろおっさん!!」
現在進行形で、俺たちにこんな素晴らしい『カンゲイ』をしてくれている誰か。
いや、誰かであってほしい。
自然発生とかだったら、もうこの世界そのものを嫌いになる。
「おっさん!!」
「おう!?」
「俺らをここに連れてきたヤツなあ!?」
「おお!!」
「絶対にボコすぞ!!」
「いいねえ、怒りは力だ!」
「急に前向きになるな!」
「よし、景気づけに歌ってやる!」
「いらん!!」
「ぼっこぼこー、ぼっこぼこ~、森の奥でぼっこぼこ~~~」
「だまれえ!! 鼻声で歌うなっ!! ジジイの肺活量ムッカつく!! せめて黙れぇえええええぇぇぇええ!!!」
ブチ切れながら走る俺。
歌いながら走るおっさん。
「なんで……っ、歌いながら走れんだよ!」
「昔、営業で鍛えた!」
「営業ってそんな肺活量いる職業でしたっけ!?」
「いる。謝罪と愛想笑いは腹から出すんだ!」
「異世界で役に立つ昭和スキルやめろ!!」
後ろから、グリーンのハゲどもがギャアギャア叫びながら追ってくる。
こっちはこっちで、ギャアギャア叫びながら逃げている。
たぶん、客観的にはどっちも大差ない。
ひたすら走る。
とりあえず、後ろのグリーンハゲが見えなくなるまで。
旅はまだ始まったばかり。
最悪。
終わりも見えない。
ダルい。




