第82話
「ふはっはははは!!いいじゃねぇか黒騎士ぃ!!!お前はやっぱり、最高だぜぇ!!!」
周りが止まって見える程の超高速の世界で、バエルが楽しそうに叫ぶ。
馬鹿野郎!!俺はちっとも楽しくねぇ!!
バエルと戦闘が始まるや否や、俺は加速魔法を使い先手を取ろうとした。
くそったれ!パワーがてめえならスピードは俺だ!!一生かかっても追いつけんぞ!!!……みたいな感じで、スピードで翻弄しようとした訳なのだが……こいつ普通に俺のスピードについてきやがった。
我が……超高速の世界に…………入門してくるとは………!!
なーんて現実逃避したいぐらいこいつ訳わかんない。お陰で俺の必勝法は既に破られちゃった。
「さぁ!!楽しもうぜぇ!!」
「……ふん。精々楽しむといいさ……!」
お前ひとりでなぁ!!!っていうか、今俺達は超高速の世界で戦ってるんだから……めっちゃ早口で会話してんな!!どうでもいいけど!!
だが、俺とバエルの実力は意外にも拮抗していた。
正直最初見た時こいつに勝てる気が全然してなかったのだが……意外と黒騎士も捨てたもんじゃないのかも知れない!!
背中から生えている伸縮自在の蜘蛛手四本を、盾でいなしつつ俺はランスでバエルを攻撃する。
俺の攻撃をギリギリで躱しながら、バエルはまた拳や足を振るうのだが……俺もそれをギリギリで躱す。
そして……お互いの超高速タイムが終わったと同時に、ほぼ静止していた世界が元に戻り……俺達の戦闘の余波で崩れた岩や木々が音を立てて崩れていった。
「くくく。いいねぇ……やっぱり戦いってのはこうじゃなくちゃな?雑魚ばかりいじめてても気が滅入るだけだぜぇ……!」
「ふん。ならば今まで相当数の雑魚をいじめてきた様だな?貴様程の実力者など、この俺を除いてそういないだろう?」
「ふっはは!!ほんとだぜぇ!!だから……お前は俺をがっかりさせんなよぉ?黒騎士ぃ!久々にまともに遊べそうな相手なんだからなぁ……!!」
「くく。遊びで済めばいいがなぁ?」
精一杯の軽口をたたきながら、俺は次の作戦を考えていた。
恐らくまた超高速空間での戦闘になるだろうが……さっきみたいに悠長に戦う気などない!!
ここは俺の必殺の……前回使わなかった黒騎士秘密魔法その六を使う時が来たようだ!!
俺は気合を入れなおし、また超高速魔法を発動しようとして……目の前の強大な魔力の揺らぎを見て愕然とした……!!
バエルの足元から揺らぎが生まれ……そこから生えてくる圧倒的な魔力を秘めた二振りの剣……。こいつ武器とかもってたのね……。
「くくく。こいつを使うのは……それこそ何年ぶりだァ??神々を殺しまわってた頃から使ってねぇから……数万年ぶりかぁ……!!」
神々を殺してまわってたって(笑)。………よし逃げよ!!
無理無理無理無理!!!なんだこいつ!!?
多分だけどこいつは嘘とかつくタイプじゃない。見栄や張ったりをこの場でする様な奴じゃない!!
つまりこいつは本当に……神々を殺して回ってたんだろう……!!
神話に出てくるような怪物じゃねぇか!!もうヤダ!!!
「神殺しとは……また大きく出たものだな?」
「あん……?なんだよ。その程度でビビる様な奴じゃねぇだろ?お前はよぉ……!!」
ビビるわ!!普通にちびるわ!!
でも……今から逃げる事なんてもうできないだろうな……。だってこいつのターゲットはもう俺になってるだろうし、ここで俺が逃げればこいつは……何をしでかすかわかんない。
今度こそ俺は決死の覚悟で気合を入れ直す!!
多分だけど勝負は……次の高速バトルでつくはずだ!!!
俺は超高速魔法を発動し、槍を構えて一気にバエルへと突進する。
そんな俺を、バエルは嬉しそうに笑いながら、両手に持った剣を振るった。
俺はそれをランスでガードしようとして……ランスごと右腕をバッサリ切られるのだった……!!
………いったああああああああああ!!!??
痛い痛い痛い!!死ぬほど痛い!!笑いが出る程痛い!!!辛うじて皮(?)で腕は繋がっているけど、右腕がプラプラしてる!!……でも!!!
「お??」
「食らえ……最後の閃光……!!!」
盾に全力の魔力を籠め、そこから光線として打ち出す俺の黒騎士秘密魔法その六にして必殺技!!
デジ〇ンからインスパイアを受けたこの必殺技を受けて、今まで生き残った者などいない!!……使ったの初めてだから当然だけど……!!!
そしてそんな必殺光線を超至近距離で打ち込まれたバエルは……光線と共にバックステップをしながら二振りの剣をバツの字に振るって切り裂いたのだ……!!!
切り裂かれた光線は、一番下は当然バエルの足元に着弾。残りの三つは……なんと!!バエルの後ろにあった街の建物とかに直撃した!!!
超高速で戦闘していて……というか戦いに必死で気が付かなかったが、いつの間にか俺達は街の近くまで移動していた様だ……!!
街の人達……大丈夫かな!!?今すぐ助けに行かないと……!!?
「ふっははぁ!!今のは素晴らしかったぜぇ!!黒騎士ぃ!!!」
「!!!」
次の瞬間縦横無尽に振られる狂剣を俺は盾でいなし……いなしきれない!!
盾はまるで発泡スチロールで出来たかのように、ランス同様ズタズタに切り裂かれ、俺自身も致命傷は何とか避けつつも……全身がズタズタに引き裂かれる……!!
街に一瞬気を取られたのは事実だけど、決してバエルへの警戒を怠った訳じゃない……。だというのに……やっぱりこいつ強すぎる……!!……ていうか初披露の必殺技を普通にいなされてかなりショックなんですけど!!!
「ぐうう!!」
堪らず苦痛のうめき声が出る。
…………うーーーーーん。こりゃぁ……負けたかなぁ……てゆーか……俺、死んだかな……。
そりゃ死ぬのは嫌だし怖い……が、多くの魔族や魔物の命を殺めてきたのだ。今更魔族に殺される事に異を唱えるつもりなんて無い。
只……俺が死ねば……分身はどうなるんだろうか?……やはり分身だから消えてしまうのだろうか?……それとも案外……普通に生き残ったりして……。
だったらいいな……。そしたらミリヤ達も悲しまないだろうし……。
でも……ただで死ぬ気なんて毛頭ない!!死ぬならせめてこいつに一泡吹かせてから……死んでやる!!!
「……いいねぇ……。お前……本当にいいぜぇ……!!ここにきて闘志が上がる奴なんざ……本当に久々に見た!!最高だぜぇ!!!黒騎士ぃ!!!」
やってやらぁ!!!
俺は全身に気合を入れて魔力を張り巡らせる!!今から使うのは黒騎士第七の魔法にして……俺の奥の手だ!!
あんまりにもオーバーな能力である為、使う事なんて無いだろうなーなんて思ってたのだが……今こそ使う時だろう!!!
「行くぞバエル……次が……決着の時だ……!!」
「ふっはは!!そう言うなよ!!まだまだ楽しもうぜぇ!!!」
嫌だよ!!お前と戦うのなんかこれっきりにしたいね!!!!
その思いも全力で籠めて、俺は黒騎士秘密魔法その七……最大強化を発動させるのであった……!!




