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第81話 なぜ戦うのか(勇者ギーツ視点)

 エイシャの必殺が完全に決まり、もうもうと煙が立ち込める中から……ベリアルはゆっくりと姿を現した。


「ぜぇ……ぜぇ……ぐぼぉ……!!」


 だが姿を見せたベリアルは……最早満身創痍だった。

 片羽と片腕を失い、体には無数の矢が刺さっており、エイシャの斬撃で肩口から胸までバッサリと切り裂かれている。

 

 そして吐血しながらもゆっくりと前進するベリアルを……エイシャは止めを刺すべく弓を構えた。


「あれを受けて無事なのは流石だが……今度こそ終わりだ……」

「げぼぉ……く……くほほ……!!なめんじゃァ……ねぇわよ!」


 次の瞬間ベリアルは、吐血と共にエイシャに口から血を吹き出す。恐らくは猛毒なのだろうが……それをエイシャの前に現れた守護霊??が結界の様なものを張って防ぐ。


「!!!」

「言った筈だ……終わりだと……」


 そして瞬時にベリアルの後ろに瞬間移動したエイシャが、今度こそ止めを刺すべく弓を撃つ。


 エイシャから打ち出された矢は抵抗なくベリアルの頭を捕らえ……様として、残った羽でベリアルはそれを防いだ。


「悪あがきを……」

「負け……られ……ないのよ……!!私は……まだ……死ぬわけには……!!いかない……!!あの子達の……為にも……!!生きて……あの子達の……勇姿を……見届けるまでわあああああ!!!!」

「!!!!」


 ベリアルにも譲れないものがあるのだろう。拙者達の様に……。

 

 ベリアルはDevil(デビル)'s Wink(ウインク)をプロデュースしているアイドル会社の社長だと言っていた。正直……魔族がアイドルのプロデュースなんて何考えてるんだ?っと思うが……死ぬ間際に出てくる言葉……心の奥底から出る言葉が今の言葉だとすると……こいつは本気で彼女達の事を?


 だとすると……こいつがここで死ねばDevil(デビル)'s Wink(ウインク)のメンバーは……アリヨクちゃそ達はどうなる?

 

 拙者は彼女達が、この街の影……つまりスラム出身であることを知っている。

 それを救ってくれて、ここまで育ててくれたであろうベリアルが居なくなったら……彼女達はどうなってしまうのだろうか?


 会社は継続できるから彼女達は存続できるだろうが……心配なのは彼女達の心だ。


 Devil(デビル)'s Wink(ウインク)のメンバーは皆、自身の社長を大変慕っていて、事あるごとに社長の話をしているのを思い出した。つまり彼女達にとってベリアルは……親代わり、無くてはならない大切な存在なのだ。そんな存在が居なくなったら……彼女達は耐える事が出来るのだろうか?


 そう思った瞬間、俺の体は動いていた。


「!!?」

「……ギーツ……貴様……どういうつもりだ……?」


 そう。エイシャの最後の一撃。

 確実に命を刈り取る一矢を……俺は斧で弾いてしまっていたのだ……!!


「な……なんで……あなた…?」

「るせぇ!!てぇめを助けた訳じゃねぇ!!!俺は……俺は全てのアイドルの守護者になるって決めたんだ!!!だから……てめぇじゃなくて、アリヨクちゃそ達の為だァ!!!」

「!!!」


 正直こいつは許せねぇ!!

 コウたんを殺そうとしたこいつを、俺は許す事なんて……できやしねぇ!!!


 だが!!


 俺はDevil(デビル)'s Wink(ウインク)の子達の涙なんて見たくはねぇ!!!


「なぁエイシャ……こいつはもう戦えねぇ……。ここは一つここらで手打ちって事に……」

「出来る訳ないだろ?遂に脳みそにウジでも湧いたか?……どけ、二度は言わん……」

「エイシャ!!お前の気持ちは解る!!だが……こいつの為じゃねぇ!!確かにこいつは許せねぇ!!だが、こいつを慕っている子達もいるのも事実なんだ!!!その子達の涙を俺ぁ見たくはねぇ!!!」

「あ……あなた……!」


 俺は必死にエイシャに向かった言葉を続ける。


「こいつはこれから悪さをしない様に俺がしっかり見張っとく!!もしまた悪事を働く様なら俺が……俺がこの手で絶対に落とし前を付けさせる!!だから……!!頼むエイシャ!!!」

「こいつにいい様に転がされていたお前が、こいつを止める?……冗談にしても全く笑えん。そもそもこいつは魔族だ……それに……コウを傷つけた!!!殺そうとした!!それだけで万死に値する!!どけギーツ……どかないなら……お前ごとそいつを殺す!!」

「エイシャ!!!確かにこいつぁコウたんを殺そうとした!!だが……結果コウたんは助かったんだろ!!?なら……こいつは裁かれるべきだが、殺す必要まではねぇはずだろ!!?魔族だからって……殺していい権利なんざねぇ筈だ!!!」


 とうとうエイシャは俺に向けて弓を構える。

 やっぱり……エイシャを説得なんて出来ないのか!?くそ!!


「くほ……くほほほほほ!!!」


 俺もエイシャに斧を構えると、俺の後ろに居るベリアルが突如笑い始めた。


「もーーー。笑わせてくれるわねぇ……ギーツ君。あんた達のゴタゴタのお陰で……私もだーいぶ回復出来たわぁ??ありがと……ギーツ君……」

「て……テメェ!!!」

「んふふ。さぁてと……んじゃそろそろ……」


 第二ラウンドを始めるってか!!?俺ぁ……やっぱり甘かったのか!!?


 エイシャと俺がベリアルに構えると、ベリアルはニヤリと笑い…………両手を上げた。


「降参よ、こ・う・さ・ん!!君たちには謝るわぁ……特にイケメン勇者君は……千年前の勇者と引けを取らない……所か彼らより強いんじゃない??」

「最後の言葉としては冴えないな……」

「私だってしょーじき白銀の(エンシェント)ドラゴンを殺す事なんて……どーでもよかったのよ……でも……魔王様の命令じゃあねぇ……」

「ならば貴様を生かしておけば、また魔王の命令でコウを狙うだろうが。……言いたいことはそれだけか?」


 エイシャの言葉に、ベリアルは困った様に笑い……そしてまた口を開く。


「……最初はこの街のスフィアの魔力を狙って、アイドルの子達を育ててたの。でも……本心を言うと、もうこの街のスフィアの力なんて、どーでもいいのよ。ただ、あの子たちの成長を見守りたい……あの子達が勝利する所をこの目で見たい!……それだけなのよ……」

「……っち」

「……私は……魔王直属の魔族を抜けるわぁ……今回の件でもう懲りたの」

「なに!?」


 ベリアルの言葉に、エイシャが驚きの声を上げる。かく言う俺も今のベリアル言葉に驚いていた!


「信じてくれ!なんて言っても信じれないと思うけど……私はもう、人間たちをどうこうしようなんて思ってないのよ?……この街で……そうねぇ……魔王様達からすると、おままごとを頑張ってたの……でも……」

「でも?」

「そんな私の思いを見越してか、魔王様は彼を私に送り込んできた」

「彼……?」

「そう。千年前の戦争で人間にも魔族にも……恐らく魔王様にも恐れられた世界最強の怪物………バエルよ……!!」

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