第80話 勇者の力(勇者ギーツ視点)
「ごふ……!!?」
「なにぃ!?」
突然吐血したベリアルを見て、俺は驚愕の声を上げる。
なぜ今のタイミングで吐血した!!?俺もエイシャも何もしてねぇぞ!!?
本気を出したベリアルは本当に強かった。
炎の戦車は、燃え盛る業火で簡単に近づくことが出来ないだけじゃなく、高速で移動して俺達を翻弄する。
そんな俺達をベリアルは、毒付きの伸縮自在の槍で牽制してくる。あの槍が掠りでもしたら……俺たちゃコウたんを同じ運命を歩むだろう。
その槍を必死で避けると……当然の様に戦車で轢きに来やがるから攻撃に転ずる間なんてねぇ!
エイシャも旨いことアウトレンジから弓で攻撃を繰り出すが……ベリアルはそれを炎の戦車と槍でいなしつつ……時には羽で羽ばたき直接エイシャを攻撃しに行く。そして、その間も俺は自律で動く炎の戦車に翻弄されていた。
エイシャは弓の勇者だが、決して接近戦も弱くはねぇ。だが……ベリアルはエイシャを完全に上回る戦闘能力を持っており、エイシャは防戦一方だった。
正直魔族がここまで強いなんて俺は思ってもみなかった。
今まで俺が戦ってきた魔族は雑魚ばかりだったのだと、身をもって教えられちまった。
そんな感じで劣勢を強いられていた俺達だったのだが……不意にベリアルが止まると、突然吐血したのだ!!
「な……なんだぁ!!?何が起きたんだぁ!!?」
「……!!!ギーツ!!!呪詛返しだ!!今の隙をついてこいつを叩くぞ!!!」
呪詛返し??なんだそりゃ??
突然エイシャが意味の解らねぇ事を叫んだが……よくわからねぇがチャンスだ!!
奴の戦車も奴に合わせてか動きを止めているため、本当に今がチャンスなのだろう!!
これが奴の誘いだとしても……ここで怖気づいてたんじゃァ勝てるもんも勝てねぇ!!!
「うおおおおお!!!食らいやがれ!!大・斬・波ァ!!!」
「煌閃・一閃の光!!」
俺とエイシャの渾身の必殺技が、ベリアルを襲う!!
超強力な衝撃波と共に放たれる俺の渾身の一撃と、極大の魔力を籠めたエイシャの全霊の一矢!!これを受けて平気な奴なんて要る筈ねぇ!!!
俺は勝利を確信する!!この一撃は絶対にベリアルを粉砕する……と!!
しかし次の瞬間……!!
「な……めるなぁあああああ!!!」
ベリアルの全身から放たれる極大の魔力!!それにより俺達の必殺技は……かき消されてしまった!!
「な……なにぃ!!?」
「なんだと……?」
「く……くほほ!!呪詛返しとは舐めた真似を……!!仮初とはいえ聖女をなめてたわねぇ?」
ベリアルはゆったりと体を動かすと、気だるげに俺達に問いかけた。
「ねぇ……勇者君たち……。これで白銀のドラゴンが死んでない事が確定したんだけど……まだ戦る?正直もうこっちはやる気無くなっちゃったのよねぇ……」
「ざけんな!!てぇめを野放しに出来る訳やねぇだろうが!!」
「その馬鹿の言う通りだ。貴様の様な危険な魔族をここで逃がすわけにはいかない」
なんで今のでコウたんが助かったことが確定したのかはさっぱり分かんねぇが……ともかくこいつは危険すぎる!!
俺とエイシャ二人がかりで押される魔族なんざ……あの街で野放しにするわけにゃいかねぇ!!
そんな俺達の答えに、ベリアルは大きなため息をついて言った。
「はぁああ。もーーーーー!!めんどくさいわねェ!!イーじゃない!!白銀のドラゴンに打ち込んだ毒には私の呪いが掛かってたの!!呪詛返し受けたって事は、呪い諸共毒が浄化されたって事!!ンてことは……もう私達が争う理由は無くなったの!!解らない!!?」
おおお!!そう言う事か!!さすが聖女様だぜ!!
「ふざけるな。コウが助かったからと言って、はいそうですかと貴様を逃す訳がなかろう?」
「はぁあ?逃す?あんた達が私を?……違う違う!私がめんどくさいから、あんた達を見逃してあげるって言ってんのよ!!だって……どう考えたってもうあんた達じゃあ私に勝ち目なんてないじゃなーーい?」
悔しいがベリアルの言葉は少し正しい。
俺達じゃあこの怪物を倒すことは……難しいかもしれねぇ……!!
というか……。コウたんが助かったって聞いて、拙者気合が少しゆるんじゃったでござるよ!!
続かねぇ!!久々のシリアスモードがががががが!!?
「なめるな。俺が今まで本気を出していたとでも思っていたのか?」
え???
エイシャってばまだ本気じゃなかったでござるか!!?なしてじゃあ今まで本気出してなかったのよ!!?
「は?負け惜しみ言ったって……な!!?」
ベリアルも訝しげに言うが、言葉を途中で止める。何故ならエイシャの隣に、ケンタウロスみたいな精霊??が何時の間にか存在していたからだ。
「コウの護衛をさせていたのだがな……少々遠くで護衛をさせていた為、先程は貴様の毒に対応しきれなった様だが……コウが無事と解った以上、こっちも全力で戦らせてもらうぞ?」
「ん……っふふ……。どうやら負け惜しみじゃあ無かったみたいねェ??」
ベリアルの言葉が終わると同時に、エイシャが消えた。
「!!!」
驚愕するベリアルだが、エイシャが瞬間移動が使える事を思い出したのか、直ぐに戦車に飛び乗り体制を整えようとして……守護霊?から雨の様に打ち出された矢を見て急いで戦車を走らせる。……だが!!
「遅い!」
「んえぇ!!?」
雨の様な矢の方を見ながら戦車を走らせたベリアルは、戦車の正面に現れたエイシャに一瞬気付かなかった。
走り出した戦車の正面に瞬間移動してきたエイシャは、そのままベリアルに剣を振るう。反応に遅れたベリアルは、体を捻りながら躱そうとするが……!!
「あぎぃ!?」
そんなベリアルを、今度は一直線で矢を撃ちだした守護霊??の矢が貫いた!!!
矢が胸にクリーンヒットして、ベリアルは堪らず羽ばたこうと翼を広げて……その翼と毒の槍を持った右腕をエイシャが瞬時に切り裂く!!
「ああ!!?あぐぐ!!!」
右腕と右の翼を失って痛みにあえぐベリアルに、今度はエイシャは高く飛び上がり剣を掲げる。すると何時の間にかベリアルの戦車の側に守護霊がおり、ベリアル周りを駆け回りながら無数の矢を撃ち放つ!!それと同時にエイシャは空高くから剣を振り下ろし、振り下ろされた魔力は斬撃に変わり、矢と共にベリアルを襲った!!!
「煌閃・双魂の裁き……!!」
「いぎやああああああ!!!?」
き……決まったぁああああ!!!
エイシャの攻撃は完全にベリアルを捕らえた!!これは……決着かあぁあああ!!!?
これぞ勇者の力!!勇者の本気!!!我らがエイシャの……実力だぁあああ!!!
……あれ!!?拙者なんもしてねぇ!!?ていうか、エイシャってば拙者と一緒に戦ってないほうが強いんじゃね!!?あれ!!?拙者いらなくねwww




