第139話
巨獣刃竜に囲まれた俺だが……正直この程度の竜に後れを取る筈も無く、瞬く間に俺は刃竜達を処理していく。
最初の五匹からいつの間にか追加で何匹か増えてたけど……まぁ数えてないからよく解らん!
適当に盾を投擲して、槍を振るえば刃竜達は紙切れの様にズタボロになっていくので、自分が一体何匹倒したかなんて分かんないのだ。
しっかし一体巨獣刃竜は何処から現れてんだ?
どう考えたってこの数を、この山のどっかに隠しておくなんて不可能だ。
現地の人が地竜と間違えたって言ってたけど、正直こんなに巨獣刃竜が居たならもっと目撃証言があっていいだろ!!
と、いう事で、多分だけどこの山に居た巨獣刃竜と、今現在どんどん増えていってる巨獣刃竜は恐らく別なのだろう。……多分。
なので恐らくだが……別の場所から今いっぱいいる刃竜を召喚している所があるんじゃないかなぁ?
そこからジャンジャンバリバリ刃竜達を召喚して……あの旅館にいるミリヤ達を押しつぶそうとしてるんじゃないのかな?
てゆーかこのまま巨獣刃竜がひっきりなしに召喚されちゃったら、旅館だけじゃ無くて下町も危ないだろ!!
てなわけで……俺は今、取り逃がしたオセはとりあえず置いといて、巨獣刃竜を召喚しているであろう場所を探しているのだが……正直急がなきゃいけない!!
旅館のミリヤ達も心配だし、今現在放置中のエイシャの安否もすごく気になる!!
なので俺は、復活したばかりでやっぱりまだ本調子じゃない体に鞭打って、加速魔法+探索魔法を全開にして探すことにする!!
道中に居る刃竜達をなぎ倒しつつ、探す事約三分(体感時間なので、実際は一瞬!)!!俺はついに巨獣刃竜達を召喚している場所に到達した!!
木々でカモフラージュされた出入り口を抜けると中はちょっとした空洞になっており、恐らくだが……ここは巨獣刃竜の巣……って事になるのかな?
そして空洞の真ん中には巨大な魔法陣が書かれており、その魔法陣が光ればそこから巨獣刃竜達が召喚されていっていた!!
「……フッ。どうやら当たりの様だな……」
俺は見つかった魔法陣に槍を向け……解呪魔法を籠めた魔力を纏ったランスで一気に貫く!!
すると俺の魔力に触れた魔法陣は、その威力と解呪魔法に耐え切れず、そのままひび割れ砕け散るのだった!!
よし!!
これでもう巨獣刃竜を召喚する事は出来ない筈!!
そう思いその場から踵を返そうとして………
「な……な……なんてことを……!!」
さっき取り逃がしたオセを発見したのである。
俺は気だるげにオセに顔を向けると言った。
「お前も随分と間の悪い奴だなぁ……。あのままこの場から逃げおおせていれば、死なずに済んだかも知れないものを……」
「う……ああ……ひぃ……!」
ちょっと殺気を籠めて言ってやれば、オセは腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。
そもそもオセをよく見れば、さっき俺が貫いた胸から大量の血がドバドバと流れている。
魔族は人間よりだいぶ頑丈だろうが、このまま放置しておけば……こいつは勝手に死ぬだろう。
俺はそう思い、そのままへたり込んでいるオセの横を素通りする。
「……!!!わ……私を……殺さない……のか……!?」
「?……今すぐ殺して欲しいならそうするが?それに……どの道その傷では助かるまいよ……。なら今殺そうが、勝手に死ぬのを待とうが同じだろうよ……」
「う……ぐう……」
俺の言葉を聞いて、オセは俺に貫かれた胸を抑えて蹲ってしまう。
……うーーん。
なんだろう……。ここにきてこんな魔族に……俺はちょっと同情してしまう。
おっかしいなぁ。
コウの時ならいざ知らず、なんで黒騎士に変身してんのに関係ない魔族に同情しちゃうんだろ?
そういや……さっきシトリーさんを攻撃した時も、ちょっと手加減して盾なげちゃったし……前の黒騎士の時から考えるとちょっと考えられない事じゃないか?
黒騎士は自分に害をなすものに基本的に容赦しない。
この黒騎士容赦せん!!っを地で行く黒騎士は、たとえ変身前のコウがどんだけお人好しでも、変身すれば血も涙もない戦士へと思考も様変わりするのだ。
だというのに……なんで敵である魔族が死にそうになって……黒騎士は同情なんてしちゃってんだろ?
こいつはこのまま死ぬとは思うけど、万が一の事もあるし……ここでとっとと殺してしまった方が絶対にいいのに……なんでこのまま放置するって選択肢が俺の頭の中に出来てしまったんだ?
これはやっぱり、心の中で俺の力の正体……シェンや本当の黒騎士に会ってしまった事が影響してるのかも……。
……まぁ考えても仕方ないか!!
正直それが悪い事なのかいい事なのかなんて、結果で見て見なきゃ解んないんだし、何より俺は今非常に急いでいる!!
だからこのままこの魔族を放置するという判断は、そんなに悪い事じゃない筈!!無いと言う事にしよう!!
そんな事よりもエイシャだ!!彼の安否を確認するのが先決だ!!
そう無理やり思い込み、俺は体を霧状に変化させその場から立ち去るのであった……。
◆
俺はその後、探知魔法を最大にして……ようやくエイシャの魔力を発見したのだが、エイシャの魔力は非常にか細くなっており……今にも危ない状態だと言う事が解った!!
俺はエイシャがいる場所の近くに降り立ち、急いで黒騎士の変身を解く!!そしてエイシャの元まで全速力で走る!!
癒しの湯のお陰で俺の体力は大分回復しており、さっき程息切れしないけど……元々クソザコナメクジであった俺は、エイシャの元に辿り着いた時には息も絶え絶えだった!!……もうちょっと近くで変身解けば良かった!!
エイシャは大きな樹木の幹で座る様に眠っており、その傍にはエイシャの守護霊であるケンタウロスが彼を守る様に構えていた。
ケンタウロスは俺を発見すると急いで駆け寄り、息も絶え絶えの俺を支える様に抱きかかえてくれる。
エイシャの守護霊だけあって優しい奴だなぁ……と感心しつつ、俺はケンタウロスに支えられながらエイシャの近くに腰を下ろした。
どうやら周りに巨獣刃竜はいない様なので、ここなら俺も全力でエイシャの回復に力を注げる!!
「……守護霊さん……。私は今から全力で、エイシャ様を癒しますので……その間、よろしくお願いします……」
俺はそう言って守護霊に笑いかけると、守護霊は一度コクリと頷くと俺とエイシャを守る様に辺りを警戒し始める。
そんな守護霊を頼もしく思いつつ……俺はエイシャに向きなおった。
エイシャは規則正しく息をしているが……時折苦しそうに呻く。恐らく魔族にやられた傷が痛むのだろう。
俺は直ぐに全力でエイシャに回復魔法をかける。
……エイシャ。
俺がなんか彼を意識し始めてから、ちゃんと二人っきりでお話する事も無かったけど……本当に無事で良かった……。
彼は最強の勇者様だけど……決して無敵でも万能でもない。でも……誰もが彼を万能無敵の勇者様と称えて、彼の身の安全など何時も二の次にしている気がする。
だから……やっぱり誰かが傍で支えてあげないといけないんだと思う。
そしてそれは……白銀のドラゴンである……俺の役目……なのかなぁ……。
なら……俺は……。
いつも世界を守る為に……そして俺を守る為に頑張ってくれているエイシャに、もっと向き合おうと思う。
それはエイシャの気持ちとか……俺の気持ちとかも含めて……だ。
実際さっきエイシャの偽物にちょっと冷たくされただけで、結構ショックだったし……。
だから…………。
「早く目を覚まして?……エイシャ様……」
俺は回復魔法で掌から淡い光を放ちながら、エイシャが一刻も早く目を覚ますのを祈るのだった……。




