アルメリア温泉旅行(後編)
温泉入りたいですね。
熱いのが好きです。
田舎の源泉掛け流しとか最高です。
「「「「あぁぁぁぁぁ、生き返るぅぅぅぁ」」」」
「めっちゃ気持ちええなぁ」
「ふぁー、体の芯からほぐれていくねー」
「きもちぇぇぇ」
「姉さん言葉がおかしいよ?」
「ちぃ〜」
「久しぶりに温泉にきましたね!」
「この前の演習ぶりじゃない?」
女子達は今での長旅と精神的苦痛から解き放たれ、温泉にどっぷり浸かり込んで体の軸を投棄させた。
温泉水が、岩塩層に含まれるミネラルを長い年月を経て浸透し、汲み上げられた湯は肌を柔らかくさせ、ツルツルになる効能があると言う。
そんな女性は発狂して喜ぶこと待ったなしの、テティネレの湯に身を任せていた。
「ねぇ瑠香ぁ
女子だけで自己紹介しない?
ニコ、村上さんや天城さんと、真田さんの事知りたいし
もっとみんなのこと知らなきゃいけないと思ってる」
「いいなぁ
そういえば、ろくに自己紹介してなかったね
今更といえばだけど、姉様達はみんなと初めましてだしね」
「せやな」
「「確かに」」
「それじゃぁティナから
ティナ・フェリウス・ウィナーです
一級魔法士だよ
魔法薬も作れます
趣味は魔法を研究するのとお酒飲むこと」
「魔法薬!?」
「恵子姉様、言いたいことはわかるけど待って」
恵子の魔法薬という言葉を聞いた瞬間、村上必死の止めように一種の不安を覚えるティナ。
恵子の纏う匂いに反応して、ニコルが酸っぱそうな顔をしたのをウィルムの使い魔、シェリルは見逃さなかった。
そして、まだあれに対する事象が終わっていなかったのかと、天城は頭を抱え始めた。
「えっ…と、ニコル・ヴォルフガングです
詠唱術というか、詠唱魔法が得意分野だよ
唄というか讃美歌を作ったりする
趣味はお菓子作りと料理かな?
一級詠唱士だよ」
「アリシア・ヴェロナーです
海星府の守護職である近衛騎士団の騎士団長やってます
聖女の魂を受け継いでるから、まぁ多少の怪我はお祈りしたらパパッと解決できるよ!
趣味は延縄漁と魚の酢締め作り」
「その妹のクラリス・ヴェロナーです
海星府の次期、領主になるんです
なれるかどうかわからないけど!
私も一応、聖女の魂の一部を受け継いでるんだ
趣味は釣りとお酒と、炙り物を作ること」
「話に水を刺すのは良くないけど、領主と聖女が釣りするの?
えっ漁業関係者?」
「だから姉さん、待ってよ
まだ突っ込んだらダメだからね!」
早くも新たなるツッコミ役の誕生に、心躍らせようとするアルメリア人達。
謎の高揚感に浸ろうとするアルメリア人の表情をシェリルは見逃さなかった。
否、シェリルじゃなければ見逃してしまう!
頼むから見逃してくれ!
などと思った瑠香だが全てにおいて無駄だと、すでに察知している。
言い切れない何か思いをティナ以外の全員から、ひしひしと受け取り始めていく。
皆の視線の先がティナと恵子のある一部に注がれ始めていた。
そうその部分だ!
「ちぃ?
ちぃちぃ!
ちっぴぴ!
ちっびぃぃ!」
「なんで言ったの?
誰か翻訳できる?」
「えーっと
『私はシェリル、ウィルムの使い魔
好きなことはお洗濯と忍
趣味は…鮮度の良い生牡蠣を見つけること」
「アリシアさん、本当にそれあってるの?」
「ちい!」
「あってんのかい!」
和やかな雰囲気と大阪人が成すほど良いツッコミのおかげで、浴場の空気が一気に明るくなる。
室内浴場のせいか、隣の男性浴場からも時より忍や、マリウスの笑い声が聞こえたり、男性自衛官達の馬鹿笑いが響き渡る。
男性警察官2人はそんな馬鹿笑いに参加せず、濁声混じりに、ひたすらあーっというだけだ。
「じゃあ次私だね
村上千春です
階級は三等陸曹で、瑠香と雪菜から見たら少しお姉さん
お仕事は通信、相手と自分の連絡手段を確保してるんだ」
「私の名前は天城雪菜です
階級は陸士長っていう下から数えて3番目
千春さんの妹分で、瑠香から見たらちょっとお姉さん
お仕事は大砲が乗った車…戦車の発射装置を動かしてます」
「財前瑠香です
みんな知っての通りの空挺隊員です
歩兵…というか、突撃兵というかそんなところ
普通科っていう言い方します
階級は村上さんと同じ
この仕事始めたのが三年前だから、2人から見たら妹です」
「最後に私やね
真田恵子です、
大阪って街の生まれです
東京っていう街で、この国の司法省
私たちの国でいう警察官してます
荷車とかそういう関係の取り締まりしてます」
『みなさん改めてよろしくねー!』
浴場に響く朗らかな声に、客で来ていた若いエルフや年老いた森人種、ニコニコと笑顔で見ていたあらゆる種族の女性達が、謎の拍手を送る。
又聞きしていた男連中ですら、謎の拍手と指笛を鳴らし性別を超えた一体感が生まれた。
それを遅れてやってきたルーシーが、何事かと周りを見渡しクラリスから状況を聞いて、一度フリーズするが全てを理解しなるほどと声を漏らした。
「みんな挨拶したから、私もするね!
ルーシー・アストライオスです
この国の皇女です
まぁお父様のお仕事の手伝いしてます
魔法全般と剣術はできます
よろしくねー」
『おっす、親方!』
「なんか反応違う!」
『もー女子うるさいわよーぉ!』
男性浴場から聞こえる明らかにうわずった声。
どこかおかま口調を無理やり、引っ張り出したかのような声に一瞬固まった。
声の主が誰か気づいた真田と勢いよく立ち上がり、頭に巻いていたタオルを振り回し始めた!
「何がうるさいねん!
羨ましいからって、チャチャ入れてくんな!
このアホ旦那!」
『わーーん!
嫁にアホって言われたぁ
ぼくちん悲しいえーんえーん!』
「きもいねん!
後でしばき回したるわ!」
『しばいたら後で、男衆総出で真田を逮捕するでー』
「何がや樋口兄さん!
えっ…みんなどないしたん?」
ティナと瑠香以外は、慌てて真田を湯船につけようと必死になるが全てが遅かった。
ティナも立ち上がったせいか、標的になってしまい今後仲間になるはずだろう人間が、どこか殺意を向けているのに気がついてしまった。
シェリルはどこ深く風のような出立だったが、全身から赤い蒸気を発する女子達に恐れおののく。
とてつもない悲鳴がこだまする頃、浴場の入り口付近の広間で浴衣を来て2人の男がプロキシマ直送のミルクソフトを頬張る。
父親になれなかった2人が仲良く座って語らっていた。
「瑠香やティナさんとニコルさんとウィルムさん達と
長旅ご苦労手間あった
その任を解く…なんてなぁ」
「田中大佐も、ルーシー殿の保護をされていたのでしょう
貴方も父親になれなかった存在ですから
いや、ありがとうございました」
「お二人方、畏って話すことはないのでは?
もう、あの組織の人間ではないでしょうに」
「「それもそうですな、財前中将
いえ、財前陸将」」
「畏まらないでください
我が古の誇り高き陸軍人様方」
「どうやら、お三方の話に入ってはなりませんか?」
「「「どうぞ、アルバス皇王様とオリオール参謀」」」
全員がソファに腰掛け、さあミルクソフトをと食うかと意気込んだ矢先、顔面真っ赤になるまで風呂に入った女性陣と男衆が出口から顔を出す。
やっちまった思った矢先、全員の目が血走り一点のみを凝視した。
そうミルクソフトを食らおうとするその手だ。
憎しみと羨望を向けた目線が一気に注がれていく。
全員がお前ら何を食おうとしてるんだと怒りに身を任せ、6人から略奪を開始しようとした。
いや、もう略奪していたはずだった。
たった1人の声に一気に我に帰ったのは、
「お前ら揃いも揃ってあの時はよくも!
魔神様も、なんで俺たちに任せてくれなかったのですか!
思い出したくないお前らがなんでここにいる!?
辞表を叩きつけて出て行った奴がいたかと思えば!」
「それはこっちのセリフです!
どうしてここに、オスカー団長がいるんですか!」
数人の部下を連れて、どこかで見たことのある顔だと思った瑠香と忍。
マリウスの一言で一気に血の気が引いてゆき、王凌府で戦った白騎士団長が、目の前にいることに嫌な汗をかく。
「そんなこと、どうでも良い!
財前瑠香と神前忍!
俺はお前に決闘を申し込む!
ティナ・ウィナー、ニコル・ヴォルフガング!
それにそこの妖精使い…お前達もだ!
財前瑠香と似た格好のお前ら全員もだ!
どちらが格が上か、魔神様が見ていらっしゃる御前の前で決闘だ!
逃げようなんて許さんぞ
これは決闘契約だ!」
吐き捨てるようにその場から逃げるオスカー。
何言ってんだろうと思い始めた瑠香だが、マリウスは頭を抱え、アルバスやオリオールはまずいことになったと焦り始める。
そんな一団の1人。
何もない空間をじっと見つめどこか恐ろしく、どこか懐かしい存在に心を奪われていた。
それが人であるのか影であるのかわからない。
だが自分の中にずっと前からあったような錯覚を覚えていた。
「お前は…?」
『会いたかったぞ…花岡康介よ
かつての我によく似ている
…我が名はマーガナルム
また会おう、哀れで救いたいもう1人の我』
加速する。
慰安旅行兼ねて温泉地へ来た御一行様。
大人数が入れる大温泉施設みたいですね。
行ってみたい。
イメージは皆さんが思うような温泉施設と思ってください。
忍と田中源一郎は、みんなが出てこないのを良いことにソフトを食らおうとしてました。
忍もそうですが田中源一郎も、父親になれなかった存在です。
ルーシーが東京にやってきて、アルメリア帰国前に話していた曰く付きとは、彼もまた…。
最後の最後にオスカーロイルが出てきました。
瑠香達が王凌府で四つ巴になって戦った組織であり、マリウスが昔勤めていた騎士団です。
あれ、マリウス?
お前さん王凌府出発前に代休もらったって…
辞めてたの?
マーガナルムと花岡康介が接触しました。
みんなに見えないけど1人に見える。
おっかないことありゃしない!
次回もお越しください。




