12話
王都への出発日。
俺は村の門までやって来ていた。
そこには既に行商人のシハンさんが出発の用意をしているところだった。
「おはようございます、シハンさん。」
「レンくん。おはよう。もう行けるのかい?私の方はもう少しだけ掛かりそうなんだが。」
「それなら家族と最後に話して来ても良いですか?」
「そうだね。王立学園に入学するのなら数年は帰れないからたくさん話をするといいよ。」
「はい。それでは少し話して来ますね。」
行商人のシハンの元を離れた俺は家族の元に向かった。
「トラブルがあったりしたのか?」
「まだ少し時間が必要なんだって。だからみんなと話をしようと思ってさ。」
それから俺は家族と他愛もない話をしながら、これから当分は家族とも話せないんだなと思った。
「レンくん。私は出発できるよ。」
「終わったみたい。それじゃあ行ってくるね。」
「いってらっしゃい。頑張るんだぞ、レン。」
「怪我や病気には気を付けるんだよ。頑張ってね、レン。」
「「にいちゃん!頑張ってね!!応援してるから!!」」
そうして俺は家族に見送られながら村を出るのだった。
ゆっくりと進んで行くロバが引いていく荷馬車に乗せて貰いながら、俺は行商人のシハンからこれから向かう街のことを聞いていた。
これから行く街はどうやらこの国の流通ルートの1つになっているそうでかなり賑わっているのだそうだ。
だからこそ街の表側は警備もしっかりとしているが裏では危険な人たちもそこそこ多いのだと言う。
そう言った危険な場所に近寄らない様に警告してくれるのはありがたい。知らない場所で1人で行動するのなら危険な場所を知っているか知らないかでかなり変わっていくはずだから。
それから街の話や駅馬車のある場所に付いたなどの話をしていると、何やらこの荷馬車を狙う気配が魔法と気配察知に反応して来た。
「狼ですかね。生き物が接近して来ています。」
「そうなのかい?」
「森で父と狩りをした時に感じた気配と酷似していますから間違いないかと。それで、どうしますか?」
このまま荷馬車で逃げるのか。
それとも襲ってくるだろう狼に対して反撃して返り打ちにするのか。
一体どちらをこの行商人のシハンは選ぶのだろうか。
「レンくん、倒せそうかい?」
「数は3匹だけですから問題ないですよ。倒しますか?」
「うん。お願いするよ。」
「分かりました。とりあえず荷馬車を停めてください。荷馬車の周りに結界を張りますから。」
俺がそう言うと行商人のシハンは荷馬車を停めてくれた。
止まった荷馬車を覆うように俺は結界魔法で荷馬車を守れる様に結界を作って行った。
結界が荷馬車を覆う頃に結界の周りに狼たちがやって来る。
「モンスター化している個体じゃないな。」
結界の周りにいる狼はモンスターではなく動物の狼なのを確認した俺は狼を逃さない様に倒すことにした。
収納魔法から父親から森に出歩ける様になったからと貰った剣鉈を取り出してから全身と剣鉈に闘気を纏わせる。
「おっと、逃すか!」
俺が結界の中から外に出たことでその身に纏う闘気を感じ取った狼は一斉に逃げ出そうとした。
狼たちのその動きは脱兎の如くと呼べるくらいに尻尾を巻いて逃げ出すのだが、今の闘気を纏った状態の俺から逃げ出せることはない。
一歩足を前に出して飛び跳ねる様に駆け出すと、俺は一番近くの狼から順番に3匹の狼の首元を剣鉈の峰で叩いて首の骨を折って狼たちを仕留めていく。
「終わりましたよ、シハンさん。」
「もう終わったのかい?早いねぇ。これが武聖の力、本当にすごい。」
唖然としてこちらを見ている行商人のシハンに終わったことを告げる。
「この狼ってどうします?」
「狼は毛皮が売れるからね。毛皮は欲しいけど解体しないと行けないしね。どうしようか。」
解体しないで荷馬車に乗せるなんてことは荷馬車が村で仕入れた物や売り物があって乗せられないからな。
「それなら俺が解体しましょうか。」
「お!いいのかい。」
「はい。その代わりなんですが、毛皮を買って欲しいです。街まで送って貰っているので安くてもいいですから。」
なるべく王都までに使うお金を減らしたいし、ここで狼の毛皮を買い取って貰えるのならありがたい。
「そうだね。それでいいよ。それじゃあ解体お願いね。」
「分かりました。少し時間が掛かりますから休んでください。」
俺は狼たちを1ヶ所に集めてから解体を開始した。
魔法も使いながら収納魔法から取り出した解体ナイフを使って狼たちを解体していく。
それから10分もせずに魔法も使っているから3匹の狼の解体を終わらせた。
最後に虫殺しの魔法を使ってノミやダニを殺して浄化魔法で俺も含めて毛皮を綺麗にしてから行商人のシハンに毛皮を見せる。
「綺麗に解体したね。毛皮の方も綺麗になっている。魔法ってここまですごいんだね。」
「ははは、まあこれでも頑張って色々と覚えましたからね。それじゃあ街まで行きましょう。」
俺は荷馬車の周りに張っていた結界を解除して街に向かう様に行商人のシハンに言った。
「ああ、そうだね。それじゃあ出発だ。」
行商人のシハンが荷馬車のロバに指示を出して荷馬車は動き出した。
それからしばらくは何事もなく荷馬車が進んでいたのだが、段々と別の街道と合流したこともあって街道を移動する人たちや馬車が増えてきた。
「人が増えてきましたね。」
「ここら辺から街道が合流するからね。流石にこれ以上は合流する街道はないから増えないと思うよ。」
そんな話をしているとまだ遠くの方だが街の外壁が見えてきた。
「あれがこれから向かう街なんですか?」
「目良いね。私はまだ見えないけど、このまま街道を進んだ先にあるのが目的の街さ。」
体内で闘気を循環させながら身体中を満たしているから視力も上がっているし、だからこそまだ行商人のシハンが見えない距離でも見えたのだろうな。
それからしばらく荷馬車は進んで行くとはっきりと街の外壁が見える距離まで来たことで、これから向かう街がかなりの大きさの街なのだと理解できた。
街に入るまでに順番待ちをしないといけないくらいには多くの人通りがある街のようだ。
どれくらいの時間を待ったのか、最低でも1時間は待つことになったのだがようやく俺たちの番がやって来た。




