表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

【後編】〜娘たちのヤンデレ覚醒を見て、冷や汗を流す元女帝と、嬉々とするパパ〜


 時は流れ、激動の本編が幕を閉じたアルビオン王立学院の卒業式の夜。

 かつて「鉄の女帝」と恐れられたエレノア・フォン・グランベルは、公爵家の当主の座を愛娘のアルティナへと譲り渡し、本校舎から少し離れた静かな離宮のテラスにいた。

 夜風がエレノアの艶やかな真紅の髪を優しく揺らす。かつてのような、張り詰めた冷酷な威圧感はもう彼女にはない。当主の重圧から解放された今の彼女は、すっかり角が取れ、どこか艶然とした大人の女性の美しさを漂わせていた。

 ズズズズズズズン……ッ!!!

 その時、夜の静寂を切り裂いて、王宮の上空に想像を絶する密度の魔力が渦巻いた。

 天を衝くほどの巨大な、そしてゾッとするほど緻密な重層魔方陣。そこから放たれたのは、夜空を昼間のように白く染め上げる、世界滅亡規模のノロケ魔法――大輪の花を模した『愛の魔法』だった。

 それは、卒業式にかこつけて極上のイチャつきを披露しているアルティナと、その狂信的な騎士ニケによる、文字通り規格外の「祝砲」であった。

「……ッ」

 テラスの特等席からその光景を見上げていたエレノアは、持っていたクリスタルグラスをガタガタと震わせ、美しい額に一筋の冷や汗を滲ませた。

「クリストフ……。アルティナとニケ、あの二人、いくら何でも世界を何回滅ぼす気かしら……。私の現役時代にあの二人があの規模で覚醒しなくて、本当に良かったわ。もし少しでも対応を間違えていたら、グランベル家どころかこの国ごと消滅(お片付け)させられていたところよ……」

 本気で恐怖し、青ざめる元女帝。そんな彼女の隣から、「あはは!」と緊張感の欠片もない、鈴の鳴るような明るい笑い声が響いた。

「素晴らしいね、エレノア! あんなに綺麗な魔法、俺は生まれて初めて見たよ!」

 現れたのは、金髪の優美な髪を揺らし、若い頃と全く変わらない「歩く光属性」の笑顔を浮かべた夫、クリストフだった。彼は優しく、けれど当然のような手つきでエレノアの肩を抱き寄せ、その引き締まった胸元へと彼女を引き寄せる。

「怯える必要なんて何もないさ。だって、アルティナのあの『愛する男を完璧に首輪で支配する神の眼』、若い頃の君に本当にそっくりじゃないか! それに、ニケ君のあの『魔力を注がれて嬉々として世界を滅ぼす狂犬っぷり』も、元アークライトの血筋である俺の魂をひしひしと感じるなぁ。やっぱり俺たちの娘だね! 支配する側とされる側の血統が、最高純度で完璧に遺伝していてお父さん感動しちゃったよ!」

「な……っ、何を言っているの貴方は!? 私、あんな物騒な愛し方は教えていないわよ……っ!」

 エレノアは耳の先まで真っ赤に染め上げ、夫の胸元にポカポカと拳を叩きつけた。

 かつては冷徹無比にアークライトの三男を「グランベルの犬」に調教したはずのエレノアだったが、結婚から十数年が経った今、力関係は完全に逆転していた。

 クリストフが毎日、最高位の召喚精霊たちに運ばせる手作りのお菓子や、完璧な温度管理で淹れる紅茶、そして何より彼の底なしの愛情に胃袋と心を包まれ続けた結果――エレノアは、クリストフの愛がなければ夜もまともに眠れない、完全にヒロイン化した「可愛い妻」へと変わり果てていたのだ。

「あはは、ごめんごめん。でも、照れてるエレノアはやっぱり世界一可愛いよ」

「からかわないで頂戴……」

 夫の胸にすっかり顔を埋めて、ふい、とそっぽを向くエレノア。クリストフは愛おしそうに彼女の真紅の髪を撫でながら、眩しい笑顔を深めた。

「よしよし。じゃあ今日も、頑張ったエレノアのために、とびきり美味しいお夜食を召喚(手作り)するからね。何が良い? こっそり特製の野菜スープでも作ろうか?」

「……貴方が作ったものなら、何でも食べるわよ」

 上空では相変わらず世界の終わりを告げるような愛の光が爆発し、本校舎ではカイルやレオンたちが胃を痛めている。そんな狂気のハッピーエンドのその裏で――原点である二人は、今夜も変わらぬ甘い平穏の中で、深い愛を注ぎ合い続けるのだった。

### 【結び】幻獣アッシュの絶叫ツッコミ

 そんな親世代の、熟年夫婦による究極の惚気のろけ劇を、お嬢様の影の底から遠隔マジックミラーで覗き見ていた白いモフモフの最上位幻獣アッシュは、ついに泡を吹いてその場にひっくり返っていた。

『おいちょっと待てええええええええ!!!(白目)

 全ての元凶はやっぱりこの親父クリストフだったんじゃねえか!!!

 娘たちのあのガチヤンデレ首輪爆破プレイを見て「支配する側とされる側の血統が完璧に遺伝してる」って、どんな笑顔の納得の仕方だよ! アークライトの狂犬の血筋を自負してんじゃないよ!!

 でも待てよ……元女帝のお母様エレノアが、今さら娘のヤバさに冷や汗を流しつつ、旦那の胸の中で「私あんな物騒じゃないわ……」って赤面してデレデレに甘やかされてるのは、熟年ラブコメとして非常に糖度が高くて健康に良いわ!

 結論:グランベル家の人間は、男女問わず【一途な光属性の狂犬】に外堀から胃袋まで完璧に埋め尽くされてヒロイン化する呪いにでもかかってるんだな。

 よし、これにて親世代のなれそめから本編終了後まで、文句なしの完全大団円! みんなまとめて一生お幸せに爆発しろーーー!!!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ