表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は憧れる
9/35

笑わぬ子供は試練に向けて・Ⅳ

 昨日から、血の魔法の研究を始め、ノートにまとめる事にした。本当ならロビンから教えてもらったことも書きたいが、ばれる可能性を考えてダメだろう。


(いや、以外と聞いてみないとわからないかもしれないか?……無理だろうな。確実に隠す方法は無いからな)


 そんな事を考えながらいつもの場所に向かう。


「ロビン、来たぞ」


(……返事が無いな。まだ準備してるのか?とりあえず待つか)


 いつもの場所に座って待つこと数分。漸くロビンが来る。


「悪い待たせたか?」

「ん……少し待ったが問題ない」

「そうか」

「なにか問題でもあったのか?」

「いや、普段使わねえから手間取った」

「使わないのか?」

「使わねえな。設置が面倒だし、収納できないし」

「収納できないのか……それは使いづらいな」

「まあ、アイテムボックスがあればできるが、生憎俺は持ってない。高いからな」

「おいおい、そんなに使い難い罠じゃ、僕が覚えても意味がなくないか?」

「まあ、普通ならそうだ。だがお前さんは、結界を作り、維持し、守ってきた一族だろ?この罠なら、お前さんは道具を必要としないだろう。普通ならこの罠は収納出来ないが、お前さんなら、結界で罠を作れるから収納する必要が無いし、罠を運ぶ時間も短縮できる。まあ、どんな結界かによるけど」

「な、なるほど!」


(アガルタを守る結界を張るなら、大穴も確実に結界で塞いでいるだろう。けど結界は外から来るモンスターの侵入を防いで、内側からは自由に出入りできる。これは僕が実際に地上に出れている事からも明らかだ。外からの侵入に関しても、鳥が入れるし、僕も入れる。この事から、侵入を防ぐのはモンスターだけだ。そしてここまで細かい設定になっているということは、自分の意思で結界の効果を変える事ができるのだろう。結界の詳しい情報はまだわからないが、可能性は大いにある。数日後に行われる試練には、使えないが、その試練をクリアすれば結界を教えてくる筈だ。その後なら使える)


「わかったか? お前さんが結界を使えるなら、この罠はどの罠よりも簡単に使える」

「なるほど……僕はまだ結界を教えてもらっていないが、数日後の試練をクリアすれば多分、教えてくれる」

「やっぱり、まだ覚えてなかったか。お前さんが、結界を守る一族だって言ってきたのは数日前だからな。まだ覚えてないと思ってた。結界ってのは高度な魔法だからな。お前さんの一族が使う結界ってのがどんなのかわからないが、確実にお前さんに合った罠になると思う」

「確かに……この罠は僕に合ってる」

「だろ、そうだと思うんだ。こっからは詳しい解説だが、まずは結界を使う事を想定したやり方を説明していく」

「わかった」

「結界を使うなら、考えるのは設定がメインだ。俺が考えた設定は、入るもの拒まず、出る事は許さない、この設定になるだろう。どこまで設定できるかわからないから、ここからはできたらいいな程度だ。出さない相手を設定する事。これは、モンスターを狩りたいなら、モンスター以外の生物の出入りは自由にするって事だな。これなら、たまたま入ってしまった人や動物を気にする必要はない。罠を使う上で問題になる獲物以外が、罠に掛かってしまう問題が解決される。次は結界に特殊な効果を持たすことだ。属性魔法を使える様になったら、もっと特化した罠を使える様になるかもしれない」

「そういえば特殊な二種類の属性魔法ってどんなの何だ?」

「そう言えば説明して無かったな。じゃあ、今説明してやる」


 そう言うと地面に色々書きながら教えてくれる。


「残りの属性魔法の一つ目は光属性魔法で。この魔法は……」


 光属性魔法……この魔法は、光を操る一対一最強の魔法。利点は、全ての属性魔法の中で最速、そして全属性魔法の中で最強の攻撃力を誇っている点。光で相手の目を潰し、光による防御を無視した攻撃で敵を倒す事が出来る。弱点は、目立つ事と加減出来ない点。使える様になるには、強い憧れと憧れの人物が光属性魔法を使える事か、光の神から加護を貰う事。


「なるほど。……条件厳しくね?」

「だから特殊なんだよ。二種類の属性魔法は、条件が明確に分かっているけど条件が非常に厳しいんだ。まあ、条件が厳しいから条件が分かっているのだが」

「後の一つもこんな条件なのか? それだったら僕、覚えれなくない?」

「まあ……何があるか分からないから大丈夫だろ。ちなみにこの魔法の使用者はエリュシオンに多く居る。あそこは神に最も近いと言われている場所だからな」

「へえ、神に近い場所か……面白そうだ」

「そうか? それじゃ、二つ目だな。二つ目は闇属性魔法だ。この魔法は……」


 闇属性魔法……この魔法は、闇を操る援護特化型魔法。利点は相手の視界を奪ったり、自分の姿を消したり出来る点。闇で姿を消して相手に近づき、武器で殺すのが基本戦術。欠点は、攻撃力が皆無な点と明るい場所では効果が薄い所。使える様になるには、強い憧れと憧れの人が闇属性魔法を使える事か、闇の神から加護を貰う事。


「なるほど。……聞けばどの魔法が使えそうか分かるかと思ったが、これは分からないな」

「まあ、これは出会いの運みたいなものだからな」

「そうか。……さて、それじゃあ罠の話に戻しますか」

「そうだな。仕掛けた罠を見に行くか。箱罠も仕掛けてしてあるから、後で見に行こう」

「わかった」


 数分程歩いて森の中で少し開けた場所に出る。そこにあったのは、周囲にある木に結ばれた網が、少し開けた場所を囲っている光景だった。


「これは……」

「驚いたか? これが囲い罠だ。本当ならもっと広い場所に仕掛ける罠なんだが、森を抜けるのは、かなり大変だから今回はここに仕掛けた」

「これは仕掛けるのが大変そうだ」

「まあ、森の中だからな」

「やっぱり平地だと楽なのか?」

「平地でも数個の支柱を地面に刺す必要がある。この支柱は、木みたいに根を張っていないから、かなり深く差す必要がある。そうしないとモンスターに逃げられるからな。木が多すぎると面倒だが、数本程度なら木が在った方がいいかもしれない。まあ俺は囲い罠を使わないから、詳しくないが」

「まあ、僕も結界を覚えたら使わないと思うけど」

「あれ?それじゃ、俺が超頑張って罠仕掛けた意味なくね?」

「あっ……ま、まあ仕掛けの説明とかあるし……」

「そんなに難しい仕掛けなんてない……」

「…………」

「………………」

「……………………」

「……まあ、黙ってても仕方ないし、説明するか」

「あ、ああ、そうだな」

「と言ってもそんなに難しい仕掛けは無い。強いて言うなら、この罠は餌を使ってるって事だ。餌の種類によって、寄ってくる獲物の種類が違う。できるだけ匂いがする物がいい。肉を置くなら、血抜きしていない方がいい。果物なら、食べ時から少し時間がたった、腐りかけの物を置いておけ。獲物が罠の中に入ったら、後はゆっくり仕留めていけばいい。後は……罠の出口は自動でしまってくれないから、自分で閉めないといけないって事くらいだ」

「なるほど。出口はいいとして、餌か……果物ならいいが、肉は大変だな」

「まあ、獲物を狩る為の必要経費だと思え」

「まあ、そうだな。僕がこの罠を使うとしたら、結界を覚えてからだし、問題ないか」

「さて、ここにいると、俺が悲しくなってくるから、箱罠の方にいくぞ。と言ってもすぐそこだが」

「わかった」


 一分程歩くと、ロビンが急に止まる。


「どうした?」

「罠に獲物が掛かってる」

「へえ、それは運が良いな。早く見に行かなくていいのか?」

「ああ、行こう」


 草に隠れるように設置されている長方形の箱の中に、ネズミ型で棘のような物がある長い尻尾を持つ動物がいる。


「おお、これは【ソーンラット】か、背中に紫の斑点模様が無いから、毒は持っていないようだ」

「そいつはモンスターなのか? 弱そうだな、ゴブリンより弱そうだ」

「確かにネズミ型モンスターであるソーンラットは、小さくて、攻撃力が低そうで弱そうに見えるが、ゴブリンとは比べられないほど危険だ。背中に紫の斑点模様がないから毒は持ってないが、ここで言う毒ってのは即効性がある症状だけだ。即効性のある強い毒を持ってると、ネズミ型のモンスターは背中に斑点ができる。けどこの模様が無いからと言って安全じゃない。こいつは罠に掛かってるからいいが、そうじゃなかったら動きが速くて攻撃が当たらないし、歯や尻尾で攻撃されると、攻撃された所がゆっくり腐っていたっり、なんらかの病気になったりする」

「水で洗うだけじゃダメなのか?」

「ダメだ。歯や尻尾での攻撃された場所を水で洗うなら、攻撃された瞬間、即座に、洗わないといけない。けどそんな悠長なことしてたら、別の所を攻撃されるぞ。対処するには、回復魔法を使える奴に頼むか、光属性の魔法で怪我した所を消し飛ばすか、魔法で作り出した水に、特殊な光魔法をかける事で出来る聖水を使うしかない。ただ聖水はエリュシオンでしか買えないし、他であっても基本偽物だ。あと高い。回復魔法を使える奴は希少だから、それもほぼ無理。そんな訳で、ネズミ型モンスターは非常に危険だ。ゴブリンは力は人より強いが、人より知能が一応低いし、一匹なら冒険者や狩人みたいな戦闘を生業としていない人が、無策でも五人~十人いれば狩れるが、ネズミ型は策が、罠が無いと狩れん」

「それは……恐ろしく危険だな……」

「だろ。ただネズミ型のモンスターは基本、餌が人間じゃない。それが唯一の救いかもな。もし餌が人間だったら、人間は全滅してるよ」

「ゴブリンは、そういう病気とかは持ってないのか?」

「ゴブリンってのは人型のモンスターで、人より知能が低いが基本構造は変わらない。人が死ぬような病気に罹ったら、ゴブリンも死ぬ。だからゴブリンは、弱い方なんだ」

「なるほど。それで?そのソーンラットはどうするんだ?」

「こういう病気になるような菌を持ってるモンスターは、素手で触ってはいけない。火属性魔法で燃やすのが一番なんだが、それも出来ない。そういう時は、剣とかで殺して、とりあえず火に入れて燃やせ。土に埋めるなよ、土に埋めても死体からほかの菌が出てくることもあるらしいからな」

「殺したら安全って訳にはいかないのか」

「普通の毒だったら、そんな面倒な事しなくて良いし、毒は買い取り屋で高く売れるからな」

「ソーンラットは売れないのか?」

「売れない事は無いが、解体するのが危険すぎるし、危険なのに安い。そして俺はアガルタに入っていないからモンスターを売れない」

「なるほど」

「さて……そろそろ夕方になるし、早めに処理しよう」

「わかった。何をすればいい?」

「とりあえず火を起こしてくれ」

「わかった」

「これを使え」


 そう言ってロビンは小さな石を渡してきた。


「これは?」

「知らないのか?それは火を起こすマジックアイテムだ」

「こんなものがあるのか」

「なんだ? アガルタには無いのか?」

「アガルタではマジックアイテムは希少だよ。錬金術師がほとんど居ないからな」

「へえ、そうなのか。他だとこんなマジックアイテムは誰でも持ってるぞ」

「そうなのか。それで? どう使えばいい?」

「少し魔力を流せば、熱くなってきて、燃える物の近くに置けば、発火する」

「魔法は使えないんじゃなかったか?」

「む……そんな事も知らないのか?アガルタはかなり情報が遅れているようだな。まあ国の理想的に仕方ないか。説明すると魔法が使えなくても魔力自体は誰でも持ってるぞ。魔法が使えない奴ってのは、魔力の所有量が少ないんだ。魔力ってのは使いすぎると、死ぬって言われてる。実際死んだ奴もいる。このことから、研究者は魔力は生命を維持するのに必要だと言った。そうなると魔法が使える奴と、使えない奴の違いはなんだ?ってなった。それで研究した結果、人は誰でも魔力を持っており、魔法が使えない奴は魔力の量が少ないってことが分かった。魔法を使える奴ってのは、生命を維持するのに使わない、余った魔力を使ってるって事がわかった」

「そうなのか! 初めて知った」

「まあ、アガルタは閉鎖的だからな。冒険者も滅多に入らないし」

「けどサーカスってギルドがもうすぐ来るらしいぞ」

「へえ……アガルタに入るのも面倒なのに、出るのはもっと面倒なアガルタに入るとは……相変わらず変わったギルドだ」

「サーカスを知ってるのか?」

「かなり有名なギルドだからな。芸をするギルドなんてサーカスくらいしかない。中々面白いから、来たら見ると良い。っとこんな事を言ってる場合じゃない。早く処理して、今日は解散しよう」

「そうだな……わかった」


 そう言い、その辺に落ちてる枝を集めて、マジックアイテムの石で着火し、ソーンラットを燃やす。


「良し、これで終わりだ。今日は解散しよう」

「わかった。今日で罠の種類の説明と、罠を使った狩りの説明が終わったから、明日からは一撃で仕留める狩りか?」

「そうだな……明日は一撃で仕留める狩りの話だな」

「わかった。じゃあな」

「おう、じゃあ明日」


 そう言ってロビンと別れて屋敷に戻る。屋敷に帰るとセイデンから伝言を聞かされた。父親の部屋に行けとの事だ。

 伝言を聞いたからにはすぐに行かねばならない。正直休みたい所だが、仕方ない。


「父上、参りました」

「ラクーンか、入れ」

「失礼します。それで? ご用件は?」

「ああ、一つ目はお前の部屋に、地下への通路を作っておいた。場所はベッドの下だ」

「ありがとうございます」

「ベッドの下に血を入れてスイッチを押せ。そうすればベッドが動いて、通路が出てくる」

「わかりました。ありがとうございます」

「二つ目は、血の魔法についてだ。血の魔法に柔軟性を持たせる方法を教えてやる」

「それは楽しみです」


(どうやら今日は血の魔法に柔軟性を持たせる方法を教えてくれるらしい。これで、より、沢山の事ができるようになる)


 そして地下室へと向かう。地下室に着くと、血で鍵を作りドアを開け、地下室に入る。


「さっそく血の魔法に柔軟性を持たせる方法を教えていく。とは言っても非常に簡単だ。血に混ぜる魔力の量を増やせばいい。普通に固めるのは少量の魔力で良いが、柔らかくする時は魔力を多く混ぜれば混ぜる程柔らかくなる。ただし限度がある。魔力と血の比率が半々にはできない。半々にすると、混ぜても固まらなくなる。」

「わかりました」


 爪で指に傷をつけ、血を出し、その血に魔力を混ぜる。


(思ったよりも難しいな。魔力の量が多くなると、混ぜるのが難しくなるのか。これは、血と魔力を混ぜる練習をしておいて正解だったな。最初からこれをやるのは難しすぎる。けど、今ならできる)


「さすがだな。こんなにもすぐ出来るとは。俺は使えるようになるまでに、一週間もかかったぞ」

「いえいえ。教え方がいいんですよ」

「まあ、そういう事にしておこう。しかし、こんなに早く終わってしまうとはな。これ以上、今教えれる事は無いから今日は休んでいいぞ」

「では、そうさせてもらいます」

「ああ」

「それでは失礼します」


(さて、早く戻って休もう。今日は研究をできなかったが、仕方ない。けど今回の事で研究する事が増えた。これでもっと楽しみが増えるかもしれない)


 こうして四日目が終わった。


ここまで読んで下さってありがとうございます。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ