5-2 最強の蟲人
かなりの数の蟲人がいた。やはり、先程戦っていた蟲人とは強さが段違いであり、一人一人がレイクサイド騎士団ほどに強さがありそうだった。こちらにはヨシヒロ神とテツヤ様がいるから戦いにはなっているが、俺たちはそれぞれ一人か二人を相手にするのが精いっぱいだったのである。
「なんで、急にこんな強い奴らが出て来たんだ? さっき出てきとけばよかったのに」
「確かに、シウバ様の言う通りですが、そうなっていたら我らは死んでましたね」
「何かが起こっているのは確かだな」
きつい。魔力がほとんどないのもそうであるが、かなりの強さなのである。特に腕力が。
「おかしいよね。僕が戦った時にはほぼ全員が武器を持ってたんだけど」
ヨシヒロ神にそう言われてみると、その通りである。最初、精鋭で奇襲をかけた時にはほぼ全ての蟲人が武器を持っていた。先ほどの蟲人からは素手なのである。素手のメリットがある攻撃を始めたわけでもなさそうだった。
「つまり、あれか? 武器を作る余裕がないってことだな?」
「もしかするとね」
テツヤ様もヨシヒロ神も蟲人の甲殻の強さを関係なしにぶった切る。喋る余裕も十分にあるのだろう。
「もしかすると、こいつら生まれたばかりじゃないの? というより、今女王がこの下で子供たちを生みまくってるんだと思うよ。自分の命を燃やして」
生まれたての蟲人。そう言えば、こいつらは成長してから生まれてくると聞いた。今現在、女王が出産を継続中であるという事は地上の戦況が分かっていて、命を燃やし尽くす覚悟で精鋭を産み続けているという仮説だ。否定できないところが恐ろしい。
「だったら、選択肢は二つだ。このままここで女王の限界が来るまで蟲人を殺し続ける。もしくはこれ以上強い蟲人が生まれる前に女王のところまでたどり着くかだ」
「「生まれる前にたどり着く!!」」
テツヤ様とハモってしまった。しかし、こんな所でちんたらしていたら次は何が起こるか分からない。MP回復ポーションとドーピング薬を飲み干す。
「マジックアップ! スピードアップ! オフェンスアップ!」
「テツヤ様! かましちゃってください!」
テツヤ様、マジェスター、アレクにもドーピング薬を投げ渡す。各自それぞれが飲み干した。
「行くぜぇぇ!!」
俺とマジェスターの重ね掛けマジックアップでテツヤ様がドーピング・ヴェノムエクスプロージョンを放つ!その間にもお互いにマジックアップを掛け合う。
「吹き飛べぇぇぇぇぇぇ!!!!」
大爆音と共に蟲人の集団が飛散した。そして地面が大きくえぐられる。
「突っ込むよ!」
ヨシヒロ神が土埃の中に風魔法を叩きこむと、地下への通路があらわになった。テツヤ様を先頭に、あとへ続く。しかし、中から蟲人が沸いて来るようだった。
「斬り伏せる! ついて来い!!」
テツヤ様の次元斬が振るわれるたびに前方の蟲人たちが倒れていく。魔力が上がった俺たちはさきほどよりもかなり強くなっているはずだった。しかし、この状態があまり長く続くわけではないという事は分かる。
「急ぐぞ!」
蟲人たちが殺到してくる方角の通路へ突撃する。途中からはヨシヒロ神が作り出した光を頼りに突き進んだ。前方からは数人ずつの蟲人が行く手を遮り、そして誰かに斬り伏せられていく。しかし、いつまでも湧いて出てくるかのような数であり、女王がどのくらいの速度で産んでいるのか想像できないほどである。
「これは異常だろ! また強くなってる!」
「シウバ様、後方からも!」
後ろからも蟲人たちが迫っていた。前方にはまだ先ほどからなかなか倒れない蟲人が行く手を阻んでいる。しかしその蟲人を一刀のもとに斬り伏せて、ヨシヒロ神が叫んだ。
「テツヤ! 悪いけど、後ろを頼めるかい!?」
その声に反応して後方へヴェノムエクスプロージョンを放つテツヤ様。まだマジックアップが効いている。
「了解! ここは任せな!」
後方からはまだたくさんの蟲人が迫ってくるようだった。テツヤ様一人で大丈夫かとも思う数である。
「待ってください! どうかテツヤ様はヨシヒロ神やシウバたちと共に女王の所へ! 後方は私が防ぎます!」
アレクが言った。どう考えてもアレク一人じゃ無謀すぎる。
「何を馬鹿な! お前が一人で防ぎきれる数じゃないだろう!」
「シウバ! テツヤ様の力がこの先で必ず必要になる! もちろん、お前もだ!」
嫌な予感がする。
「はやく女王を倒さないと! これ以上の強さの蟲人を産んでるかもしれないんだ! 放っておけばそのうち大変な事になる! もし、ヨシヒロ神を越える強さの蟲人が生まれたら……」
誰かが…………。
「マジェスター! シウバを連れて行け! テツヤ様! 頼みました!」
「アレク、死ぬなよ!」
「アレク殿!」
誰かが、戻ってこれないんじゃ…………。
「アレク!!」
すでにアレクはこちらを見ていなかった。前方の蟲人はヨシヒロ神が倒したようだ。マジェスターが俺を抱えて行こうとする。
「馬鹿野郎! アレクを一人で置いていけるか!」
「シウバ様!」
マジェスターのフェンリルが召喚される。その上に押し倒され、フェンリルが走り出す。すでにヨシヒロ神とテツヤ様は先に向かって走り出していた。
「アレクゥゥ!!」
「行け!」
背中で俺にそう言うと、アレクは弓をつがえた。
「俺はお前と違って、死んだふりはしない主義なんでな。最後まで抵抗するさ」
アレクの周囲にアークデーモンが2体召喚される。俺が見たのはそれが最後だった。
***
「母者、何故我らを行かせない? 同胞が、兄弟がこんなにも死んでおるというのに」
女王ガ=メイの出産能力は限界を越えようとしていた。最終的に生まれたのは最強の戦士である我ガ=クユを含む4名である。そして、最後の最後に次世代の女王が生まれるはずである。おそらく、女王が生まれれば、母ガ=メイは死に至る。それが我らには分かる。そしてガ=メイもそれを分かっている事が伝わってくる。しかし、数多の同胞を犠牲にしてまで繋いできた命である。この女王が生まれ、逃げ延びる事ができれば我らは最終的に他の人類を駆逐する事ができるはずだった。現に我は西で暴れているであろう人類よりも強い。
しかし、今ここに向かっている人類の精鋭たちがいた。おそらくは、神もそれに加わっているのだろう
。いまだに一人も脱落していないが、同胞たちはすでに数百が命を散らしていた。我らが最初から出る事ができれば、こんな事にはならなかったはずだ。しかし、神がそこにいたために、女王ガ=メイは慎重になった。自身の命が尽きることも理由の一つだろう。次世代の女王を護る者が必要だった。
「お前ら3人は、次の女王を護れ。我は、同胞の仇を討ちに行く」
我は最強の戦士として生まれた。今まで犠牲になった同胞たちの記憶がある。その全てを受け止めた母の悲しみは想像を絶した。そして、その記憶から我が生まれた。他の3人は無理だろうが、我は神にすら勝てるはずである。
「ガ=クユ。剣を取れ」
神に一太刀入れた先達の剣がそこにはあった。これまで戦った同胞たち全てに渡すことができなかった武器である。武器と、防具がきちんとそろえば奴らは死なずにすんだのだろうか。しかし、今となっては分からない。分かるのは一つである。
「我が、神を斬る」
母が、出産に入ったようだ。
「次の女王が生まれた時に、逃げないでいいようにするのが我の役目」
我が死すれば、この3人が女王を連れて逃げるだろう。
「さよなら、母者」
来たぜフ〇イナルフ〇ンタジーⅩⅤ!!
さっそくやるぞぉぉ! …………え?
データコピー終わらないとニューゲームできないだと?
最終原稿のチェックでこんな時間になって、寝るまでの貴重な時間を使ってるというのに30分以上やらせない?
あー、これはいかんですわー、スク○ニ
やる気なくなりましたわー
明日は休載ですわー、ついでに、仕事やすみますわー
え?仕事行って連載書かないとやらせない……だと……?