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4-2 神の領域

 ある日、私は「声」を聞いた。それは他の誰にも聞こえなかったようで、私だけがそれに反応した。いつもの職場、いつもの時間。何気なくスマホやPCを見ていても、誰にも邪魔されない休憩時間である。


「はやく」

 その「声」はそう言ってるように聞こえた。


「早く、終わらせて」

 何を? とは思わなかった。私はそれが何なのかをはっきりと分かっていたからだ。


「さっさと早く終わらせろ。第三部書くくらいなら第二部の続きをさっさと次を書け」

 はっきりと「天の声」はそう言うのだった。


 今、私はメールを読んでいる。いや、見ているといった方が正しいのだろう。そして、これが幻聴であるかもしれない事も認識している。しかし、事実は小説よりも奇なり。







 なんで、Amaz○nからのオススメメールの一番上がF○15なんだろうか。これは運命かもしれない。






 エレメント魔人国が軍隊を守備に付かせた時、すでに蟲人の大軍は国境付近にまで迫っていた。

「ブルーム、損害を減らしつつ堅守しなさい」

 リゼ=バイオレットは総大将にブルーム=バイオレットを指名し、援軍が来るまで耐える指示を与えた。同時に「大同盟」各地に援軍を求める使者が飛んだ。

「母上、一人一人の力が明らかにあちらが上ですが、数まで多い。もしやすると我らも……」

「泣き言ならば、あの世の父親の前でしなさい。今はあなたが総大将「魔槍」ブルーム=バイオレットです」

「……分かりました」

 父の遺品である槍を持ち、ブルームは最前線へと出ることを決心する。援軍が間に合えば必ず打倒することができるはずだ。しかし、蟲人の大軍は5万を超すと言われていた。



「ミランダ、私も行く」

 サイド=ネイル12世はネイル国軍を率いて自ら援軍に出る事を決めた。エレメント魔人国が滅亡した場合、北の大陸で残る大国はネイル国のみとなる。標的が次にこちらへ向くのは明白だった。国軍の大半を率い、サイド=ネイル12世は最大戦速で向かう。友軍が壊滅することが、自国の滅亡を意味するものであり、大召喚士の発現を聞き流したツケだった。



「テツ兄から連絡があってね、このまま上陸して奴らの背後から攻撃を仕掛けるよ。あまり無理する必要はないけど、挟撃という形を保つことは必要だからね」

 シン=ヒノモトはライクバルト艦隊を含めたヒノモト国の軍をほとんど引き連れて滅亡したトバン王国に上陸した。そしてその後は西進し蟲人の背後を突くのである。

「そこら中に穴がある。もしかしたらこの穴から奴らの増援が出てくるかもね!」

 笑いながらその穴に枯れ木を突っ込み油を撒かせるのである。

「蓋したら火をつけてよ。風魔法が得意な奴に入り口から風を送り込ませてやってね。もしかしたら見つけられてない穴から煙がでてくるかもよ。そしたらそこを蓋しに行ってね」

 この行為で穴の中に潜伏していた数千の蟲人が全て窒息することになったのだが、シン=ヒノモトも含めて誰も確認すらしようとしなかった。その後、後顧の憂いを完全にたった「笑顔の殺戮者」は、完全に不意を突いた形で蟲人の軍勢の後方に軍を展開してこう言ったという。

「エレメント魔人国とネリル国の連中がある程度やられてから攻撃しようか。レイクサイド騎士団が来るまでに攻撃態勢に入ってれば文句は言われないよね……って、もう来てるの? 仕方ないなぁ。突撃する?」



「フェルディ、先に行くぞ」

 怪鳥ロックの部隊が東へ飛んでいく。後方にはテンペストウルフたちを積んだ船が数十隻続いていた。

「ナノ様、お気をつけて。ライレル、ナノ様を頼んだぞ」

「了解だ。おそらくすでにシウバ様は戦場に駆けつけておられる」

「急がねば。同盟国としても魔人族としてもこれはかなりの危機だ」

 リヒテンブルグ王国は精鋭部隊を先行させることにした。船での到着には数日から十数日かかってしまうが、怪鳥ロックに輸送された一部は明後日には戦場に付く。突進力に関しては相手が巨体の蟲人であっても負けるはずがない。エレメント平原でのアイアンゴーレムとの戦いがあったと想定しての訓練を続けてきたのだ。そしてリヒテンブルグ大陸に発生する魔物は他の地域とはレベルが違う。その魔物は自分たちにとっては単なる食料だった。「統率者」魔王ナノ=リヒテンブルグのプライドをかけた精鋭部隊である。


 ***



 到着した時にはエレメント魔人国の部隊は中心を大きく押されている状態だった。そして後方にネイル国軍が迫っている。しかし、二つの国を合わせても蟲人の集団の方が二倍以上多く見えるのは、それぞれの大きさが違うからだろう。数ではほぼ同数であるはずだ。鉄巨人の指示が飛ぶ。

「テト! ウインドドラゴン隊を率いろ!」

 ウインドドラゴンを召喚できるのはハルキ=レイクサイドとフィリップ=オーケストラを除けば、テト、リオン、レイラ、ユーナ、ヘテロ=オーケストラである。その中でヘテロ=オーケストラは最速の召喚獣ぺリグリンに乗っていた。他の4名が破壊魔法担当の騎士団を数人ずつ乗せてウインドドラゴンで飛ぶ。4匹のウインドドラゴンが迫りくるとかなり壮観ではあるが、蟲人たちはそれに対抗して羽が生えて飛ぶことのできる部隊の総勢数千が上空を舞った。

「撃ち落とせ!! 行くよ、リリス召喚!! 紅竜召喚!!」

 ウインドドラゴンに加えてリリスまで召喚する第4将軍「深紅の後継者」テト。そしてさらに後方にレッドドラゴンまで召喚するという離れ業を行っている。それを見て青ざめる騎士団一同。これほどのあり得ない総魔力は大召喚士以外では見たことがない。

 4頭のウインドドラゴンと1頭のレッドドラゴンが蟲人の集団に突っ込む。周りには暴風が吹き荒れ、破壊魔法が飛び交うが、蟲人たちはその数の優位を全面に出して圧殺しようとしていた。

「近づかせるな!!」

 テトのウインドドラゴンを中心にかなりの暴風が吹き荒れ、それは地上にまで届いた。吹き飛ばされる蟲人が続出する。そして、それに追撃するようにリリスの破壊魔法とレッドドラゴンのファイアブレスが次々に蟲人たちを絶命させていった。騎士団からの破壊魔法も確実に蟲人を撃ち落としていく。


「対空戦で負けるわけにはいかないッス!!」

 ウインドドラゴンたちが過ぎ去ったのちに突撃を敢行したのは第五騎士団であった。将軍ヘテロ=オーケストラのぺリグリンを先頭にうち洩らした蟲人たちを狩っていく。

「……ッス!!」

 久々に「フェンリルの冷騎士」将軍ヘテロ=オーケストラが本気を出していると部下たちは認識する。聞き取れない言葉であったが、部下たちだけには分かるのである。あれは「皆殺しッス!!」と言ったという事が。将軍の本気の方が巨大な蟲人よりもよっぽど怖いことを部下たちは正確に認識していた。いままでは緩衝材となってくれていた副隊長は第八騎士団の将軍として栄転していってしまったのである。容赦のない攻撃を加えなければ、こちらの命が危ない。


「上空は問題ないな。所詮は付け焼刃の羽だ。対空戦がどんなものかを教えてやれ」

 しかし問題は地上戦である。上空がいかに優勢とはいえ、このままでは空爆を敢行することはできないのは間違いない。そして地上では多くの友軍がいまも虐殺に近い攻撃を受けている。

「第一、第二、第三騎士団はアイアンゴーレムを中心として陣を築け! 合間から破壊魔法が降り注げるようにな! 第六、第七、第八騎士団は突撃に備えろ。第四騎士団は遊撃隊として待機だ!」

 ワイバーンから続々とアイアンゴーレムが投下されていく。敵の最前線に投下された鉄の巨人たちはそれまで味方を攻撃していた蟲人たちの最前線を屠り、さらには陣形を組んで体制を立て直させた。エレメント魔人国軍の士気が持ち直される。満身創痍のブルーム=バイオレットが一時的に意識を失ったのはこの時だった。さらに召喚されていく召喚獣たち。そしてその合間から破壊魔法を打つべく騎士団が展開する。


「押し返せ!!」

 しかし、数が多い蟲人たちを前に完全に押し返す事は不可能であった。徐々に強制送還されるアイアンゴーレムも目立つ。



「親衛隊、出るぞ」

 そして、戦場に降り立つ「大召喚士」。この時の彼の召喚は歴史書に残るほどのものであり、先ほどのテトの召喚が霞んでしまったのは間違いない。親衛隊に周囲を守られたハルキ=レイクサイドが時間をかけて召喚を行う。彼がこのような場で本気を出したのは初めてではなかろうか。



「四大精霊、同時召喚!!」



 炎の大精霊「イフリート」、氷の大精霊「コキュートス」、風の大精霊「シルフ」、土の大精霊「タイタン」。実はこの召喚を行った伝説の人物がいる。それは突如発生した魔物の大群から人類を守ったとされる人物であり、約一万年前にもさかのぼる。その人物の名は「ヨース・フィーロ=カヴィラ」であり、神とも英雄ともいわれた人物であった。ヨシヒロ神ではないはずだ。

 「大召喚士」が神の領域に足を踏み込んだと言われるのはこのためである。



 四大精霊の力をもってして、初めて蟲人の大軍はすこしずつ押され始めた。


閲覧履歴参照ってのがあってだな。

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