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3-4 大召喚士の誤算

「隊長‼ 大変です‼」

「あぁ、確認した! ついにやりおった! こっちが完結してないのに‼」

「一体、どうするつもりなんでしょうか!? どうせ、エタるに決まってます!」

「最初にエタ宣言をしておいて、本気でエタった時に言い逃れるつもりだ!」

「なんて、セコい!」

「なんの話か分からない人は作者マイページをどうぞ!」

 エレメント魔人国へと向かった蟲人の集団が壊滅したことで、北上中であったヴァレンタイン軍はカヴィラ領で待機となった。トバン王国、ネイル国およびエレメント魔人国は自国の守備を継続し、ユーナのウインドドラゴンで自国へと帰ったジルはヒノモト国へ連絡し、トバン王国よりもさらに東側を警戒にあたるために船団で出航、シン=ヒノモトとカイトがこの船団を率いた。リヒテンブルグ王国も東側の海岸線を厳戒態勢で見回ることになった。そしてレイクサイド騎士団と魔王テツヤ=ヒノモトは北へ逃走した集団を殲滅するために北上中であった。


「まずはこのゴゼの大空洞より北側を探索する。おそらくは千程度の集団だが、ここのような大きな洞窟でもない限り隠れきることは難しいだろう。見つけ次第空爆だ」

 ゴゼの大空洞の北側には大陸最大の山脈がそびえたっていた。その山頂は雲の上まで届いている山も数多く、万年雪が化粧をしているようである。山々の中腹から上は植物が育たないのか、ほぼ岩山であり、あるのは雪か露出した山肌のみであった。隠れるところは少なそうである。

「第五騎士団は先行しろ。見つけ次第上空に破壊魔法を打て」

 筆頭召喚士第一将軍「鉄巨人」フィリップ=オーケストラの指示でワイバーン部隊が横に大きく広がりながら飛ぶ。眼下には隠れることのできそうな森もあるが、一つ一つをルークのドリュアスが確認する事になっており、むしろ森の中に隠れていてくれたほうが都合が良い。そして、千もの巨人の集団を見つけるのは容易であったようだ。

「フィリップ殿、ドリュアスがこの森にいると言ってますよ。女王と思われる腹のデカい蟲人も確認できましたし、数もちょうど千人くらいみたいって言ってますわ。それにしてもこんなに簡単に見つかるとは思ってないでしょうけど、確かにドリュアスいなかったら分からんくらい奥地に入り込んでいるみたいで。あ、上空から行けば特に問題ない所ですけど、蟲人のあのデカい身体でも十分に隠れることのできそうな窪地があるみたいですね。そんで、奴らは体を寄せあっているみたいで、そこんところは俺らとは違ってやっぱり蟲の要素があるんでしょうかね。かなり密集してると言ってますよ。よくもあんなに抱き合って動き回っていられるもんだとか。想像しただけも気持ち悪くなってき…………」

「よし、総員空爆に移れ!」

 ドリュアスの指定した地点に向けて多くのクレイゴーレムが投下される。第一騎士団はやや低空から破壊されない程度の高度でアイアンゴーレムを投下しており、着地次第蟲人と交戦に入ったようだ。多くの蟲人がゴーレムたちの着地の時点で傷つき、形成されるクレーターと共に吹き飛ばされる。投下されたゴーレムの数は百を優に超え、千人ほどの集団であった蟲人はその過半数が死亡するか戦闘不能へと陥っていた。森が跡形もなく吹き飛び、窪地が土埃が収まると同時に見渡せるようになってくる。着地に成功したアイアンゴーレムたちは生き残りの蟲人と交戦中である。

「破壊魔法部隊!」

 ワイバーンの鞍の後ろから地面に向けて破壊魔法を打つ部隊が外周を取り囲むようにして旋回しだした。そしてその全てから破壊魔法が放たれる。あえて中心を避けるように打たれた魔法によって完全に蟲人太刀は円の外縁部から内部へと押しやられ、逃げ道は形成される事はなかった。

「フィリップ、突撃はどうする?」

 ビューリング=ブックヤードの第6騎士団とシルキットの第2騎士団は主に地上での戦いを主体としている。今はシルキットの第2騎士団のほとんどがワイバーンの後ろに乗っているわけであるが。

「ビューリング、損害は出したくない。つまらないだろうが後方で待機してくれ」

「うむ、まあそうだろうな」

 この戦い方であると第6騎士団の出番はなさそうである。しかし、いざという時に元獣人騎士団で構成されている第6騎士団の突破力は非常に頼りになる存在だ。

「テト」

「はい」

「あれに女王がいる。抹殺してこい」

「了解!」

 フィリップの指示で第四将軍「深紅の後継者」テトがワイバーンで出る。そして召喚される堕天使リリスが上空から特大の氷破壊魔法を女王目がけて突き刺した。

「上ががら空きですわ!」

 マジシャンオブアイスの「氷の槍」をも上回る特大の氷山が周囲の蟲人ごと女王を押しつぶす。すでに氷の属性なんて関係のない大きさである。全てテトが込めた魔力の大きさを物語っていた。ペニーが第七騎士団を設立してからというもの、第四将軍テトには今までペニーが肩代わりしていた責任が押しかかったのであるが、それをはねのけるほどの成長ぶりを見せている。


「き、貴様らぁぁぁぁ!!」

 蟲人の集団が怒り狂う。涙を流しながら叫ぶ彼らに慈悲を与えるわけにはいかなかった。

「殲滅だ」

 第一将軍の命令は忠実に実行された。



「よう、俺たち戦闘に加わらなくていいのか?……って、なんでへこんでるんだ?」

 戦闘地域から若干後方で親衛隊はハルキ=レイクサイドおよびテツヤ=ヒノモトを護衛しながら陣を張っていた。そしてその主は絶賛落ち込み中である。

「いや、殲滅って久々だったやん」

「やん……って、今更かよ」

「うーん、あいつら喋るんだもん。魔物だとなんとか大丈夫だけど、人はちょっと。魔人族と戦った時も実は結構きつかった」

「魔人族とは違って、喋るっつっても四メートル超えるし、虫っぽいぞ? お前も昔はゴキブリ退治くらいしてただろ?」

「あんなでかいゴキブリとか、……いかん、気持ち悪くなってきた」

 凹むのが収まったかと思えば、次は気持ち悪がっている。

「まあ、あいつら飛ばないから退治も楽でよさそうだな」

「あんなんが飛んで来たらと思うと、人類終わるぞ? 対処のしようがねえ」

「へっへっへ、違いねえ!」

 伝令が、テトが女王を仕留めたと伝えてくる。これで三方向へ逃れた女王全てを抹殺した事になる。ゴゼの大空洞に残っていたもともとの女王も仕留めたため、蟲人は繁殖ができなくなるに違いない。



「なんとか、なったな」

「あぁ、神楽先輩を越えた」

「あー、そういう事になるんか。ところであいつまだ治らねえの?」

「……治らないほうがいいんじゃねえか?」

「…………たしかに」

 実は、ヨシヒロ神はこの時点で全快している。

「ハルキ様、ここにいた蟲人たちは全て始末しました。女王も確認できてます」

「女王ねえ、腹がでかいんか?」

「えぇ、エレメント魔人国を攻めてきた奴と同じです」

「たしかにあいつもゴゼの大空洞にいた奴も同じくらい腹がでかかったな。繁殖するってのは大変だな。戦闘力はほとんどなさそうじゃねえか」

 蟲人は成人の状態で産まれてくるらしい。卵らしきものをゴゼの大空洞で見かけたが、その中で成長するのだろうか。しかし成長中の蟲人はいなかった。であるならば女王の腹の中で大きくなり……。


「まずい!!」

 ハルキ=レイクサイドは重大な事に気付く。それは巧妙に隠された事であり、種の存続のために自分の命を捨ててでも次世代につなげる執念であり、そのためであれば子供であろうが次世代の女王であろうが兄弟姉妹であろうが全て利用し、その一人のために行動する蟲人というものを理解していなかったという事に気付いたのである。

「ルークを呼べ! 第五騎士団と特殊諜報隊もすぐにだ!」


 しかし、完全に後手に回ったハルキ=レイクサイドは結局、「それ」を見つけることはできなかった。そして、時間だけがむなしく過ぎていった。

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