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3-2 エレメントの若武者

あなた! 何時だと思ってるの? なんで床で寝てんのよ?

え? まだ一行も書いてない? もう三時よ!? 三時!!

昨日は書籍化作業で忙しかったの? え? それはあんまり。お客様が来たから一緒に飲んでただけ?

なんてことを!? 急いで投稿しなきゃ!

もう無理? この茶番書いてる時点で4時52分ですって!?


まさか……それって………



ぎりぎり間に合ったってことよね? ならばよし


 森の精霊「ドリュアス」が舞う。この固有の精霊には森で生き抜く情報を契約者にもたらしてくれる力があるのだ。さらには他にも能力が隠されているようであるが、さすがのルークでもそれは他人に話す事はないらしい。数分待機することになった一向であるが、ドリュアスとルークの話し合いというのはいつも無駄が多い。

「もう、この森にはいないみたいだぜ? 出て行く前に聞いてくれると方角も分かったんだが、形跡をたどるとしたら三方向ってのが分かるくらいかな。一つは南に向かってるし、一つは西だ。もうひとつ少数だけど北に向かってる。その後はどこに行ったかは分からんな。ドリュアスも完璧じゃねえし、森の中の出来事なら大抵は分かるんだけどよ、すでに起こった出来事を確認するってのは苦手な部類であって、できればその時に起こった事を確認する作業の方が向いてるっつーか、監視作業が一番っつーか」

「あー、そんでその中で一番でかい集団はどれなんだ?」

「おっ、それは西に向かった奴だな。情報によれば一万の蟲人がいたんだろ? そのうち二千が南、七千が西、残りの少数が北に行った感じで後がついてるってよ。残念ながら、どの集団にどんな奴がいたかまでは分からんぜ? あくまで森の痕跡的にそんな感じだってのがわかるだけで、偽装されてたらこの数字もあてにならん。ただ、これだけの大掛かりな偽装をするにはかなりの設備と計画が必要だろうけどよ。ドリュアスの目を欺くためには結構マジな偽装が必要になってくるしな、時間も足りんからおそらく集団の規模に関しては問題なく把握できてるんじゃねえかなと思うんだけど…………」

「よし、とりあえず西に向かったら七千をどうにかしよう。南にはシウバとラッセが行ったわけだしな」

「ふぉっふぉっふぉ、ハルキ様。先ほどウォルターと連絡がとれまして、第2部隊がトバン国には急行するそうです。シウバが苦戦するようならば加勢すると。アレクがいるから二千程度であれば問題ないでしょう」

「はっはっは、アレクがいるなら大丈夫だな! なんたってシウバの友達だもんな!」

「…………本当のピンチにならない限り、シウバは一人ってわけだな?」

「…………まあ、シウバなら大丈夫でしょう」

 かなり無責任な事を言っている一向であるが、誰よりもシウバを信用しているというのは間違いない。先ほどもここにいる者でシウバの生存を疑っていた者はいないのだ。


「西ってことはエレメント魔人国か。ブルーム坊っちゃまの国がどれだけ速い対応をしてくれるかな?」

「坊っちゃまって、テツヤ様もひどいねえ。俺はあんまりブルーム=バイオレットと一緒にいたわけじゃねえけど噂によるとあの「魔槍」ジンの一人息子だろ? 自分も「魔槍」を名乗ってるとするとやっぱりそれなりの武人なんじゃねえの? ニルヴァーナ軍がやってきた時にジンをみたやつの話を聞くとそりゃすげえじゃねえか。まあハルキ様が瞬殺したってのはもっとすげえけどよ。あ、そう言えばあいつにとってハルキ様は親の仇になるわけだ。よく、このメンバーと一緒に行動してたな。つっても世界の危機だからそんな事言ってられな……」

「さあ、西に向かった集団を追うぞ」

「いや、もしかしてその集団に斬りこむの? 俺は戦力に換算して欲しくないんだけど。ドリュアスはこういう探索は得意だけど戦闘はからっきしだし。いや、待って。なんで皆無視すんだよ、これから蟲人のところ行くから虫だけに無視ってか? おい、フラン、待てや……」


 ***


「というわけでこちらに蟲人の集団が近づいてきているようです」

「分かりました。ブルームよ、三万の兵を率いて迎え撃ちなさい。それと親の仇であろうとも使える駒は使うのよ。初動が遅れたのはあちらの責任なのですから」

「しかし、母上」

「現実を見なさい。我らの三万の軍がレイクサイド召喚騎士団の百人と戦って勝てると思う?」

「ぐっ、負けはしません!!」

「そう、でも勝てないのよ。人数が少ないというのも召喚魔法というのもあちらにとっては有利な事だわ。召喚獣がやられても次の日には魔力が回復してもどってくるのだから」

「ですが……」

「これに納得できないようであれば、いつまでたっても魔王にはなれません。飲み込みなさい」

 エレメント魔人国は急遽ヴァレンタイン王国へ援軍を要請、カヴィラ領に集合していたレイクサイド召喚騎士団が駆け付けることとなった。


「フラン様からの情報によるとこちらに向かっているのは約七千の可能性が高いとのことでした。蟲人は空を飛べませんので、先に空爆を敢行しに行きます」

 筆頭召喚士フィリップ=オーケストラは到着と同時に襲撃へと向かった。すべての召喚士がワイバーンでの移動を行うためにその機動力は他国をはるかに凌駕する。そして一人ひとりが一騎当千といっても過言ではない。この中の多くの者は「魔槍」ブルーム=バイオレットよりも確実に強い。

「ブルーム、久しぶりッス」

「お久しぶりです、ヘテロ殿」

 次期魔王候補にトラウマを植え付けたこの「フェンリルの冷騎士」ですら、レイクサイド領では三本の指に入らないのである。

「後でゆっくり酒でも飲むッスよ」


「耐えなさい、そして乗り越えなさい」

 母の言葉が重くのしかかる。

「分かっております」

 エレメント魔人国の若き将軍は、苛立ちを覚えつつ、三万の軍を率いて国境へと向かうのだった。


 ***


「いや、マジで乗り込むの? 俺の戦闘能力って冒険者としてはそこそこだけど集団を相手にすると皆無に近いんだけど、そこんところ分かって……」

「ルーク、風がうるさくて聞こえないのですよ。今から攻撃を開始しますんで、ルークにも期待しておりますよ」

「てめえ、フラン! このクソガキが! 聞こえてんだろ! いや、ちょっと、本気で? マジで行くの? いやぁぁぁぁぁ!!」

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