2-3 ゴゼの大空洞
前回までのあらすじ!
「矢継ぎ早」のルーク!
説明が始まると長いので省略! ← イマココ!!
ウインドドラゴンが上空にやってきた。ユーナだろう。
「あ、ようやく来たか。ちょっと待ってろ、いまドリュアスに頼んで上からじゃ見えないようにしてるから……っと」
ルークがなにやらドリュアスと話し合っている。このドリュアスという森の精霊は召喚獣なのだそうだが、かなり特殊な部類に入るのは間違いなさそうだ。そして他に召喚魔法を使っていないのは何故なのだろうか。
「いやいや、そんな事言ってないで早くしてくれよ。あいつらいなくなっちまうかもしれねえぞ? そしたら俺もお前もここまで何のためにやってきたんだか……え? いや、そうかもしれんけど、そこをなんとかするのがお前の役目であってだな。」
なにやらドリュアスとの仲は普通の仲ではないようである。
「いいから、とりあえずやれって。ウインドドラゴンだろうが何だろうが別に森を気づつけたりなんかはしねえだろ。というよりも、あの蟲人たちを放っておいていいんか? よくないだろ?」
『貸し』
「んなわけあるかっ! それはお前の仕事だろうが。早くせんと本気で適当に降りてくるぞ?」
ウインドドラゴンはどこに着陸すればいいのか分からないようである。
「よしよし、最初からそうやれば良かったんじゃないか。本当に素直じゃねえな」
しかし、急にこちらに向かってきたかと思ったら、泉の付近に着陸してきた。どうやら本当に今まで見えてなかったらしい。
「シウバ!」
ユーナが見える。回復魔法もそこそこ効いてきたために手を振って無事であることを知らせた。
「おぉ、あれがユーナ殿か。話だけはかなり聞かされて来てるから初めて会うような気がせんな」
「良かった、無事だったんだね!」
「あぁ、この人に助けらてもらったんだ」
ルークがふふふんと胸をそらしている。
「おい、感動の再会のところ悪いがハルキたちがゴゼの大空洞へ向ってる。急いで合流しよう」
「ちょ、ビューリング殿! ちょっと今だに俺的には状況の把握ができていない上に、それでも大活躍してて、これはフランのくそガキに対してどれだけ貸しができたかも分からんという見せ場的なとこ……」
「全部上空で説明だ、お前に喋らせとくと先に進まん」
ばっさりとルークが切られて、俺たちはゴゼの大空洞へ急いで向かうこととなった。
***
「歯ごたえがないな」
「前に襲ってきたのは精鋭だったんだろうよ、おいブルーム、次はあの集団に行くぞ」
「なんでお前と一緒に戦ってるのか分からんが、まあいいだろう」
「こっちだって、分からんがなぜか楽なんだよ。それにこいつがすげえ」
大召喚士に召喚されたフェンリルの頭をポンポンと叩き、不敵に笑った「魔槍」ブルーム=バイオレットの槍が蟲人を次々と突き刺していく。その周囲にはミランダの放つ業火球がそれを補助するかのように破裂し、二人の進む場所はぽっかりとあいていくように次々と蟲人が倒れて行った。
「それにあれに比べると、俺たちはまだまだだろう」
ブルームが槍で示した先で暴れていたのはコキュートスである。洞窟の内部に突如として出現した氷の大巨人はその魔力と巨大な拳を使って蟲人たちを「破壊」している最中であった。蟲人はかなりの巨体ではあるが、一回り以上大きいコキュートスには蟲人の腕力は効果がなさそうである。そして繰り出される氷の魔法は蟲人たちが今まで見たこともない規模のものであった。
「あの大精霊一匹でここは十分だ」
「違いない、あれを一匹と言うのが正しいならな」
腕を一振りするごとに蟲人が吹き飛ばされ、凍らせられていく。よほど強い個体が現れない限りは、ここでコキュートスをどうにかされる事はなさそうだ。ちなみにここの部隊を率いていたようなゴ=サンという個体は名乗っている最中にテツヤ=ヒノモトに斬られてしまっている。
「サッサト、殲滅ダ」
魔人族にしてはデカイはずのジルが、さらに巨大な蟲人を掴み放り投げている。そしてその腕力からは想像もできないような風の破壊魔法が追い打ちをかけた。力比べで負けたうえに風で斬り裂かれた蟲人が絶命する。
「殲滅って、この数をか? 時間稼ぎをするつもりだったんだがな」
「全テ殺セバ、問題ナイ」
ゴゼの大空洞に殴りこんだ一向は、女王が産卵をするはずの奥の間を目指した。ある程度の所までは大量の蟲人が襲ってきたが、テツヤ=ヒノモトのヴェノム・エクスプロージョンでほとんどが吹き飛び、この先に女王がいそうだという事でハルキ=レイクサイドがコキュートスを召喚した。最強戦力としてテツヤ=ヒノモトとフラン=オーケストラが内部の女王たちを殲滅してくる間、残りはここで蟲人の大群が奥の間に入ってこれないようにするために足止めの役割を担う事にしたのであった。
「この程度の連中なら、いくら来ようがこのメンツを抜けるわけがないんじゃないか?」
「たしかにそうだろうな」
「油断ハシナイ」
そしてここにいないテツヤ=ヒノモトとフラン=オーケストラは奥の間で女王と対峙していた。
「おい、フラン。これはどう思う?」
「テツヤ様の思ってる事が正しければゆゆしき事態ですな」
女王を護るように展開した蟲人たち。精鋭である事は間違いないだろう。しかし野営地を襲撃してきた蟲人たちと比べてどちらが強いかと言われると分からない程度である。そして襲撃の際には地上で迎え撃ったために数百人という数を生かしての攻撃だったが、ここは女王の奥の間であり奴らには守るべき対象があった。それは数で押しつぶそうとした際に制限となってしまうものであり、さらには狭い空間で最も効果を現わすえげつない特殊魔法を得意とするヒノモトの魔王がいたという事は不幸以外の何物でもないだろう。
最初の接触でほぼすべての蟲人がヴェノム・エクスプロージョンの餌食となった。回避しようにも回避する空間がないのだ。女王を護る数十人の蟲人の中で無傷であったのは数人という所だろう。そしてそこに二人が斬りこんだ。結果は虐殺と呼んでよいものが残っただけである。そして最初の爆発で腹部を大きく損傷した女王が二人の前で横たわっている。親衛隊の中で生き残ったものはほぼおらず、いたとしても戦闘能力は大きく削がれていた。
「もしかしてだが、俺たちは間に合わんかったのか?」
刀についた蟲人の体液を布でふき取りながら、テツヤ=ヒノモトは女王へ問いかけた。
「その通りだ、小人族よ。新たな王たちは生まれた。ここにいるのは十分に生きた年寄りのみよ。お前たちは終わりだ。王たちの準備が整えば、お前らの世界は我らのものだ」
「フラン、ハルキと交代してくれねえか? こいつ殺すかどうかを相談したい」
「かしこまりました。では」
その後、ゴゼの大空洞に残った蟲人は全てが死に尽くすまで襲いかかってきたという。その瞳には涙があふれ、母を殺された執念は殺されるまで止む事はなかった。だが、その数は当初想定していた一万程度には遠く及ばず、一割程度のものでしかなかったという。
書籍化作業は全く問題ないのですが、本職の仕事の方が忙しい事になってます。
時間の余裕もないし、ストレスもかなりのもの。そして4月からはさらにひどいことになるでしょう。
物語も最後のお話に差し掛かってるんで、できるだけ毎日投稿していきたいところですが…………。
余裕がある時に描きためるしかないかなぁ。描き溜め、嫌いなんですよねえ。