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1-2 神の敗北

前回までのあらすじ!!


何人だぁぁ!?


魚人とか言われるとは思わんかった ← イマココ!!

「ちっ、この僕が押されるなんて」


 この数千年の間にバグの対処を怠っていた事を後悔する。自分がここまでやる気になるとは思いもしなかったが、精神が安定するという事はこういう事なのだろう。そして、人らしく生きるという事は弱さを自覚するという事だった。数か月前に世界を相手にしていた時に比べて、力が弱まっているという事を信じられなかったが、こうして現実を突きつけられると認めるしかない。無理が祟ったのだろう。

「それでも、神をなめるなよっ!!」

 一太刀で敵を屠る。存在自体は確認していたものの、ここまで大量に増えているというのは予想外であった。しかし、次の敵は神の剣を受け流す。

「貴様が神であったとしても、我らが滅びを受け入れる理由にはならない!!」

 敵の頭領だろう。先ほどからこの軍勢を率いて神に歯向うだけの実力を示している。

「コンソールさえあれば……」

 そう思いかけて自制する。コンソールという神の御業があったからこそ、自分は精神を崩壊させたのではなかったのか。それにしても敵の力を見誤るとは、落ちぶれたものだとも思うが、そもそもこの1万年で本格的に戦ったことなどつい最近までなかったのである。力に過信しすぎた。

「つまりは僕の負けという事か?」

「これほどの同胞を殺しておいて、何をほざく!我らに勝利があったわけではないのは明白だ」

「なるほど、つまりこれはあれだ……」

 神は剣を構えなおす。これ以上の戦闘は体がもちそうにない。

「貴様の強さに敬意を払って、この手で殺してやる。だが、殺されることで貴様が神ではないという証明もしてやろう」

 敵の巨大な剣が神を切り伏せるために構えられた。一対一であったならば後れを取ることもなかっただろうが、数千もの敵と戦い傷ついた後では戦えない。

「先生が言ってた」

 しかし神は不適に笑う。敵にはその自信がどこから来るのかは分からない。


「これは戦略的撤退だ! 負けじゃない!」

 かき消える神。その御業は神と呼ぶにふさわしい。


 ***


「リヒテンブルグ王国はシウバとナノとユーナか。さすがにナノは来ないよな?」

「ええ、魔王ですから。知ってるのはこの3人、俺とユーナが行きます」

「エレメント魔人国からはブルーム=バイオレットを出しましょう」

「うちからはジルが行く。場合によっては俺が出てもいい。他に知ってるのはシンとラミィだけだ」

「ネイル国からはミランダを出そう。知っているのは余と彼女の二人のみだ」

「我が国からはラッセが出る。知っているのは2人のみだ」

「ヴァレンタインは俺とフランとビューリングで行こうと思う。他にはアイオライとジギル、うちの部隊長だけが知ってる」


「よし、情報の拡大はこれ以上なしで行こう。大混乱に繋がりかねん」

 大同盟では「帝王」アイオライ=ヴァレンタインが議長を務める極秘会談が行われていた。神と戦った際と同程度の世界滅亡の脅威と認定された問題に対処するためだ。

「本当に全面戦争しなくてもいいのか?」

 テツヤ=ヒノモトが言う。まずは最精鋭を送り込むと決めた情報源に最も信頼していないのは彼だった。

「だいたい、なんで俺のところじゃなくてハルキの所に行ったんだよ?」

「知るか、本人に聞けよ」


 北のエレメント魔人国やトバン王国のさらに北東には未開拓の土地が広がっていた。そこに住む人類はほとんどおらず、魔物も少ないと言われているが、人を寄せ付けない何かがあると言われ、この数千年においてそこに進出しようとした部族はいなかったのである。そのために魔人族がおらず純人がいまだに住んでいるだとか、強力な魔物の住処になっているだとか、世界の果てが広がっているだとか噂でしか語られてこなかった。召喚獣や魔物による飛行技術が発展したのはこの数年の事で、それまでは地上の過酷な自然を突き進むしか到達する方法がなかったのである。そこに目的を見出したものはいなかった。


「唯一確認されていたのがここだ」

 アイオライ=ヴァレンタインが地図で示したのが北東の一点である「ゴゼ大空洞」である。リヒテンブルグ山脈や霊峰アダムスをはるかに超える高度の山々の麓にあるこの大空洞は多くの魔物の生息が確認されていた。しかし、人が住む集落からあまりにもかけ離れているためにその存在は分かっていても詳細が伝わることはなかったのである。

「そこにいるのは確実だそうだ」

 敵と断定されたそれらが大空洞に住み着いた。他にも多くの敵がいるという。


「しかし、ヒノモトの魔王の言うとおり、信用できるのか?」

「ヨシヒロ神に嘘をつく理由が今のところありません」

 サイド=ネイル12世の言葉に反論するハルキ=レイクサイド。彼は第2部隊隊長を現地に派遣している。そして、すくなくともその存在は確認した。敵であるかどうかは分からないが。

「我らを攻め滅ぼそうというのか。それほどの規模が?」

 ベナ=トバンも懐疑的であった。しかし真向から反論を行うほどにこの会議での発言権があるわけではないのを自覚している。

「全部で一万いるかいないかくらいとの事でした。しかし、一人一人の戦力が違います。実物を見ればすぐに理解できるかと」

「しかも頭も良さそうなんだろ?」

「その通りで、魔物にも似たようなのはいますが強さが違います。」


 現在ナトリ=スクラロの魔王館で療養している「神」ヨシヒロ=カグラ。その体中に付けられた傷が物語るのはこれまでの敵とは明らかに違うということだった。表面上の傷は回復魔法でなんとかなったが、内臓に到達した一撃は普通の人類であれば致命傷であったに違いない。そしてその歪みは魔法での治癒を困難としていた。

「ふむ、あの邪神がそこまでやられたのか……」

 サイド=ネイル12世は直接ヨシヒロ神の戦いを見ていたわけではない。だが、その強さを聞けば想像を絶するものであるし、そしてその神がそこまでやられるという事で敵の戦力を測ろうとしている。

「本人によると、すでに数千を道連れにはしたそうですが」

「それで大召喚士殿。少数精鋭での行動の説明がまだであるが? 大同盟の戦力を直接ぶつければ損害は出るが敵を殲滅することもできそうだ」

 エレメント魔人国魔王代理リゼ=バイオレットが初めて発言をする。もったいつけずにその理由を早く言えと目が物語っている。ちなみにハルキ=レイクサイドは夫の仇だ。


「まず一つは軍を編成するには時間が足りないという事。全ての大同盟軍を集めるのにどれだけの時間がかかるか分かりません」

 これは世界樹の塔を攻める際にも問題となった事だった。一同は、その理由には納得したものの、まだ弱いといった表情である。

「そして、その軍が「ゴゼ大空洞」に到達するまでに数か月かかってしまう上に、それまでの道のりが辛く険しいもので、兵站が持ちません。逆に、敵はものともせずに攻めてこれるでしょう」

 誰も、それを何故とは問わない。理由が明白であるからだ。

「最後に、彼らの「王」が誕生するのが近いようです。ヨシヒロ神がこのタイミングで戦いを仕掛けたのも、彼らの「王」が誕生する前にケリをつけたかったというのが理由ですね」

 ヨシヒロ神が敵の一部を拷問して得た情報らしい。そしてその「王」の力というのは計り知れない。現在の頭領ですら、神を押し切る力を持っていたのだ。敵は成長してから生まれてくる。子供の敵はいない。それも厄介だった。


「その前に、「王」を宿した「女王」を殺す。そのための最精鋭です」



 敵の名前は「蟲人」。硬い外皮に覆われた巨体を持ち、数百年前から独自の文明を築き、近づいた人類を攫う事で学び、こちらに攻めてくる時期を狙っていた。その平均しても4メートルはあろうかという巨体が今日まで発見されていなかったのは、完璧な統率能力と、成長してから生まれてくるという特異な体質が理由である。そして、その「蟲人」たちはついに南に目を向けた。阻止を試みた神を排除し、準備が整えば襲い掛かってくる。



「蟲」か「蠱」で悩み中

しれっと替えてたらスマヌ

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