1-1 新たなる人
「隊長!! 大変です!!」
「どうした!?」
「なんか、やる気でねえとか言って、2200文字くらいしか書いてません!!」
「なにぃ!? 書籍化も決まって、イラストも少しだけ見せてもらって喜んでいたじゃないか!?」
「本人によると「たまにはこんな事もあるよね!」とか開き直ってます!!」
「感想か!? 第2部に対する感想が最近ない事に対して拗ねているのか!?」
「あぁ、そんな感じですね。しかも、これマズイですよ。」
「何がまずいのだ!?」
「今回の話の展開は…………」
「ネタバレ禁止だ馬鹿者ぉ!!」
「それで、本当は何をしに来たんですか?」
「さすがシウバッス。ミアも気づいていないのに」
首都リヒテンブルグの冒険者ギルドの酒場で俺とヘテロ殿は昼間からエールを飲んでいた。こっちに来てから気づいた違和感というのがある。それは俺が魔王をしていたことがあったからこそ、すぐに気づくことができたのだが。
「ミア殿にも言えない事なんですか?」
「ちょっと、面倒な問題ッス」
よく考えれば気づくはずだと思うが、レイクサイド召喚騎士団第5部隊隊長「フェンリルの冷騎士」ヘテロ=オーケストラをエルダードラゴンが出現するまでの間なんて不確かな状態で任務から外しておくことなど、為政者としてはあり得ない。で、あるならば半分は仕事と言った仕事の内容があるはずで、それが新たな召喚獣との契約ではなくもっと重要な何かである可能性は非常に高いのだ。しかし、皆の前では話しにくいものなのか。普段は極秘情報は第2部隊が持ってくるものなのだが。
「極秘中の極秘につき、各部隊長とフラン様までで情報が止まってるッス。ここにはそれをシウバに伝えにきたのと、視察を兼ねてるッスよ。副隊長ですら知らない情報なんで、もうちょっと安全な場所で話すッス」
ユーナはヴェルテたちの卒業試験をするとか言って、テンペストウルフ捕獲の依頼についていき、ミア殿も面白そうとか言いながら後を追った。制限時間が5時間とか言ってたから、ついていくと忙しそうだったのと、ヘテロ殿が2人で飲みたそうにしていたために残ったのだ。
ウインドドラゴンで上空へと上がる。適当な依頼を受けたという事にした。シルバーファングの群れくらいならば30分あれば殲滅できるだろう。その間に話をする。
「ヨシヒロ神が動き出したッス」
またしてもあのクソ神か。
「でも、それならばレイクサイド領をあげて動けばいいんじゃ……」
「それが、今回はヨシヒロ神は敵じゃないらしいッス」
え? あんな世界を崩壊させようとしている奴が敵じゃない?
「何でもエリナの妊娠を知って、世界を護ろうと思ったらしいッス」
……なんか、可哀そうな奴だな。それともエリナの子孫に手を出すつもりか?
「それで、いままでやる気がなかったらしいッスけど、ある情報をハルキ様のところに置いていったらしく、その後ハルキ様は3日ほど誰とも会わなかったッスよ。よほどの事だったみたいッスね」
それは、神が隠してたほどの情報ならばショックを受けるのも仕方のない事かもしれない。
「それで、少しだけ部隊長とフラン様を呼んで教えてくれたッス」
そうこうしているうちにシルバーファングの群れが見えて来た。ウインドドラゴンが着陸すると同時にフェンリルが10匹ほどに召喚される。そして殲滅が始まったようだ。ヘテロ殿は降りる気配がない。このまま話を続けるようだ。
「ハルキ様は「バグ」と呼んでたっすけど、俺らにも分かる言い方に替えると…………」
「純人、亜人、獣人、魔人に続く、次の人類がどこかにいるらしいッス」
***
「エルダードラゴンが発生した!!」
レイレットからもたらされた情報はリヒテンブルグ王国に駆け巡った。「邪王」シウバ=リヒテンブルグが引退したこの時期に天災級と同格と思われる魔物の発生は明らかな問題であったからだ。しかし、二代目魔王「統率者」ナノ=リヒテンブルグはその親衛部隊を率いてこれを速やかに討伐する事に成功する。その際に協力した冒険者というのがいるらしいが、首都リヒテンブルグにおいて最強と言われていたヴェルテ達のパーティーは同行していないという。であるならば、ナノ=リヒテンブルグの親衛隊はほとんどその実力のみでエルダードラゴンを討伐したと思われ、二代目魔王の実力を王国中に知らしめるものとなった。
「魔王の親衛隊を輸送係に使うなんて、大胆ッスね」
「すまん、助かる」
「まあ、シウバ様ですから……」
ヘテロ殿にエルダードラゴンの爪を渡して、残りは呼び出したハサウに引き取ってもらうこととした。他にも欲しい素材はないかと聞いたのだが、世話になってるからこれ以上はいらないとヘテロ殿が答える前にミア殿に言われてしまっていたのだ。ヘテロ殿はちょっと残念そうな顔をしていた。
「シウバ、これで帰るッスよ」
召喚契約に成功した召喚獣は鳥型の「ペレグリン」である。ワイバーンよりもむしろ小型ではあるが、ヘテロ殿とミア殿が乗れるだけの大きさはあった。ちょっと飛んでいるところを見たが、あり得ないほどに速い。ユーナがこそっとエルダードラゴンの爪を確保している。あとで朱雀の羽根を使って契約を結ぶつもりだろう。羽は装備品には使いづらかったから保管してあったはずだ。俺も確保しておこう。
「この速さなら明日にはヴァレンタイン大陸ッスね!」
今まで以上に防寒と防風対策が必要そうだった。2人が防寒具とゴーグルを念入りにつけている。
「じゃあ、シウバ。後はよろしくッス」
「ハルキ様によろしくお伝えください」
「それで、ヘテロ様は本当は何しに来てたの?」
「エッ!?」
「言いなさいよ!!」
ユーナにもばれていたようだ。確かに俺も違和感を覚えていたくらいだし、気づいてもおかしくない。さらに俺の様子も普段とは違ったのかもしれない。
「ごめんよ、ユーナ。ちょっと出かける所ができたんだ」
「言いなさいよ!!」
「えっと、だから……」
「言いなさいよ!!」
「いや、言っちゃだめって、ハルキ様が……」
「言いなさいよ!!」
「は、はい…………ちょっと大同盟の極秘会議に出てきます……」
「付いて行くわ!! それで、何を話し合うの!?」
「あ、……はい……」
結局、洗いざらい話をさせられて、大同盟の会議場でハルキ様にため息をつかれた。
ヴァラー・モルグリス!! 本田紬です。
…………新人類は……何人なんだぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!
「邪」は「邪王」で使っちゃったし、当初思ってた「真人」は仏教用語で凄い人だし、「超人」は筋肉な感じだし…………orz
ネタが尽きました。もはや何も思い浮かばんです。
…………そんな新人類はいなかったことにするか? いや、しかし……。