3-6 怪鳥の捕獲
前回までのあらすじ!
アプロは植物型の魔物で触手があってウネウネしてて
冒険者パーティーのうち二人は若い女性で
それで何も起こらなかっただって!? ← イマココ!
「おっしゃ、こいやぁ!!」
「ディフェンスアップ!」
「足、止めるよ!」
リヒテンブルグ大陸北部の雪原。ここには以前エルダードラゴンが発生した事もあって定期的にレイレットから見回りが派遣されることになっていた。そしてそこに住むグレーテストホワイトベアの数も調査されていたりする。討伐対象であるが食料にするには討伐が大変で、その困難さに見合っただけの食料となるわけでもないために放置されることもある。そして、その間引きは討伐隊でなく冒険者ギルドに下ろされるのであるが、これを討伐できる冒険者は皆無であった。
「今回は手助けしねえよ」
「グレーテストホワイトベアですよ!? まだ俺たちには無理なんじゃないですか!?」
ヴェルテが吠える。意地悪な質問してからというもの、多少盾突いてくることが多くなった。きちんと締めるところは締めておこう。
「きちんと戦えば大丈夫だ。よく話し合うんだな」
連携の重要性をもって理解して欲しい。それができれば個々の力がなくても強い魔物を討伐することだって可能であるから。
「とか何とか言っちゃって、ひさびさに熊鍋するつもりでしょ!?」
ユーナには完全にばれているのである。
「なんとか倒せましたっ!!」
グレーテストホワイトベアはSSランクである。それをAランクのパーティーで倒せるという事は、昇進も近いのかもしれない。
「でも、依頼料が少ないんだよなぁ。こんなに強かったのに」
「雪原から出てこないからよ。レイレットまではどう考えても来ないもの」
「あ、でも素材を売ればお金になるかも」
「毛皮はあったかそうだしな!」
それぞれ興奮が冷めないのだろう。だが、そんな事を聞いてはいられない。俺は討伐されたグレーテストホワイトベアの解体を行って、熊鍋の準備をするのだ。
「フォレストさん、手際が良すぎです」
ペタが後ろから覗いてくる。もう何体も討伐してるもんね。
「鍋にして食うんだよ! 香草もたくさん持ってきたし、クセが強いけど病みつきになる味だぞ」
「熊って食えるんですね!」
「料理の腕次第だ」
ホワイトベアといっても白虎ほど毛が真っ白というわけではなく、少し黄色がかっている。毛皮の価値もあまりないかもしれない。であるならば食料として食ってやるのが一番だ。
「とは言っても、そろそろ怪鳥フェザーくらいは手に入れてもらわないと、いつまでもワイバーンで運んでやるわけにはいかないしな」
独り立ちというわけではないが、討伐に俺たちがついていく事で気持ちが緩むという事もある。依頼を見繕ってやりながら指導してやるという事もしたいし、なにより移動手段になれる必要があった。
「でも怪鳥フェザーを買うとなると、結構な額が必要ですよね」
鍋をつつきながら、アヤが言う。このメンバーの中ではしっかりと考えて行動する方であるが、たまに考え過ぎで行動できなくなるという欠点もある奴だった。
「そうだな、じゃあどうすればいいと思う?」
「ガンガン依頼を受けまくって金を貯める」
そしてペタは何も考えないやつだった。魔法を主体とした戦いをするくせに、頭を使わないというのはどういう事だろうか。
「それ以外に方法があるって事ですか?」
意外な事にまで気が付くのはジーンだ。彼女は戦闘中も周りを見て戦う事ができる。ただし、今までは司令塔としての役割をしてこなかった。今回の戦いは前衛のヴェルテを補助しながら後衛に指示を出す事ができていたようだ。特に足止めの氷魔法を要請するタイミングは非常に良かった。
「怪鳥が手に入るんなら、なんでもやりますよ!」
そしてリーダーのヴェルテは迂闊な事をする事が多い。一番年長なのに、誰かが補佐してやらなければいけなさそうだ。しかし、他の三人には慕われている。支え合えば非常に相性のいいパーティーだろう。
「何でもやる…………か?」
俺の悪い顔を見て四人ともに顔が引きつる。ヴェルテの失言に気付いたようだ。
「ちょ、何でもって言っても限度が……」
ペタが何か言っているが、もう遅い。
「ふふふふふふ…………」
「ちょっとフォレスト、ほどほどにね!」
ユーナには言われたくないけど、ほどほどにしとくよ。
***
「よし、行ってこい! 殺すなよ!」
四人を拉致してきたのはヴァレンタイン王国シルフィード領「霊峰アダムス」である。山頂から王都ヴァレンタイン方面に続いて大きくえぐられた傷は雪景色に埋もれてしまっている。しかし、本気のヨッシーとハルキ様が戦うとこうなるんか。恐ろしい。
「無理です!! 無理ですってぇ!!」
「大丈夫だ! 二匹捕獲したら一匹は調教してもらえるんだから!」
ここに来たのは怪鳥ロックの捕獲が目的である。レイレットにはフェルディの弟子たちが魔物の調教施設を作っていた。テンペストウルフや怪鳥ロックをそこで調教して部隊に組み込むのである。討伐中に死亡する魔物も意外と多く、この施設は常に稼動しているようだった。そしてテンペストウルフは自領で捕獲できるが、怪鳥ロックは輸入に頼るしかなく、生かしたままでの捕獲にはかなりの金額を吹っ掛けられる。そしてその調教費用も馬鹿にならない。つまりは個人で調教済みの怪鳥ロックを買おうと思ったら大変なことになるのだ。その分、ワイバーン召喚はまだ現実的な値段で素材を買うことができる。しかし魔人族は召喚魔法にむいていない。仕方ないために、怪鳥ロック二匹の捕獲で一匹分の調教費用と交換してもらうように交渉してこいとヴェルテに言ったのである。
「輸送はウインドドラゴンでやってあげるから!」
ユーナは久々のヴァレンタイン王国シルフィード領という事もあり、町に行きたいそうだ。俺もついて行こう。
「じゃあ、頑張れよ!」
「ちょっと! フォレストさんまでいなくなるんですか!?」
「お前らの移動手段だろ? 俺はワイバーンあるからいらないし」
「そうじゃなくてぇ!!」
ヴェルテたちが怪鳥ロックを二匹捕獲するまでに十日程度かかったという。俺たちはその間にシルフィード観光と、レイクサイド領への帰省などいろいろとヴァレンタイン王国を満喫した。
「おい、めんどくさいから調教した奴とこの二匹を交換しろ」
「シウバ様の言うことだから、その通りにしてあげるわ。でも、こっちも大変なのよ」
「知ってるわい。頑張れ」
「そうやって、私の心を弄んでいくんだから。でも頑張る」
ババア・アウラが気持ち悪い。
「おい、調教済みの奴をくれるってさ。良かったな」
「フォレストさん、相手はあの「策士」アウラ様ですよっ!! なんて恐れ多い」
あ? なんで俺がババアを恐れなきゃならん。というか、ペタうるさい。部隊配属直前の奴を掻っ攫ってやった。あとでローレあたりが怒りそうだけどまあいいや。
「じゃあ、調教の人から説明受けて、特訓な」
怪鳥ロックに乗れるようになるまで一週間は特訓が必要らしい。その間、俺たちはどうするかな?
「フォレスト! そろそろ私たちも討伐依頼こなしとこうよ。最近Sランクがたまってるらしいよ」
「そうだね、ちゃちゃっと片づけてこようか」
冒険者ギルドに素材を卸してやることも必要だった。そしてヴェルテたちには怪鳥ロックをくれてやったけど、他のランクの低い冒険者たちに怪鳥フェザーを融通してやることも必要である。
「ギルド長と相談して冒険者の移動手段について考えたほうがいいかもね」
移動用、逃走用に空を使えたら冒険者ギルドは活性化するだろう。
次の週にヴェルテたちは怪鳥ロックに乗れるようになっていた。この大陸で怪鳥ロックを使って移動できる唯一の冒険者パーティーとなったのである。彼らは一躍有名人となり、ランクはSに上がった。
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