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1-4 見栄と虚勢と結末

「やっぱ無理だぁぁぁぁぁぁ!!」


 恰好つけてみたはいいけど、俺一人でエルダードラゴンと戦えるわけねえだろうが!エルダードラゴンの正面なんかに回ってしまったためにかみつき攻撃を食らいそうになる。あわてて避けるが、俺のワイバーンは他の召喚士と違って特に早いわけでもないから、いつかはエルダードラゴンの攻撃を食らってしまうんじゃないか?

「とりあえずは時間稼ぎだ! 風剣舞!」

 斬撃を飛ばして翼を攻撃してみる。意外とダメージが入っているのか、翼を斬られたエルダードラゴンがよろめいた。だが飛べなくなったわけでもなく、すぐに体勢を整えてこちらへ迫ってくる。速度が落ちたわけでもなさそうだった。あれだけでかいと攻撃が相対的に小さいものになってしまうんだな。

「うおっ!!」

 ついに噛みつき攻撃をワイバーンが喰らってしまった。幸運なことに、俺は噛みつかれなかったためにダメージがないが、ワイバーンが強制送還されて宙に放り出されてしまう。

「やばいやばいっ!!」

 すぐにもう一匹のワイバーンを召喚してその場から逃れる。こんなペースで魔力を使っていたら時間稼ぎなんてできたもんじゃない。

「とりあえず全力で逃げろぉ!!」

 だが、エルダードラゴンは飛ぶのが速い。すぐに追いつかれそうになる。

「地面すれすれを飛ぶんだ!」

 ワイバーンで低空飛行を試みる。たまに両側が高くなっている場所なんかもあって、エルダードラゴンは雪まみれになりながら追っかけてくる。しかし、あまりスピードが落ちているような気がしない。これは、本格的にまずいかも。


 青竜と戦った時は基本的には奇襲だった。朱雀も皆で戦ったし、白虎は見てただけだった。つまりは俺一人ででかい天災級の魔物に勝てた事がないって事になる。せめてマジェスターがいれば……。

 しかし、いないもんは仕方がない。こんな時に他の人だったらどうするであろうか? あ、いつの間にか思考加速スキルが発動しているようである。


 まず、ハルキ様だったらお得意の省エネ召喚でなんとか切り抜けるだろう。朱雀もそれで瞬殺したって言ってたしな。だが、さすがに俺の召喚獣はフェンリルとワイバーンとノームしかいない。これの組み合わせでこの場を乗り切れるとは到底思えないな。では、テツヤ様なら? だめだ、参考にならん。あの人はぎゃーって言って、わーっとやって、ずばっと斬っておしまいだ。全く参考にならん。では、他の人ならどうするだろうか?

 フラン様やマジシャンオブアイス、フィリップ殿であればなんとか切り抜けるだろう。ただし、この人たちは力押しだ。これも参考にしてはいけない。他に強そうな人で、この場を切り抜けられそうな人物を思い浮かべてみるんだ。

 …………誰もいねえじゃねえか!? これはピンチというやつだろう!!


 待て待て、落ち着け。どんな魔物にだって弱点はあるはずだ。そこを突けば倒せはしなくても時間稼ぎにはなるに違いない。参考にする人がいなければ自分で道を切り開くしかなく、死ぬ気になればなんだってできるという事はこの前知ったばかりじゃないか。

 まずはエルダードラゴンの弱点を探すとしよう。さっきからめちゃ早いスピードで飛行してくるし、噛みつき攻撃はかなりやばそうだ。だが、めちゃくちゃ早いスピードで飛行するものと言えば、レイクサイド領ではウインドドラゴンであり、その弱点はあのバカ領主のせいで研究しつくされている。つまりはどちらかの翼をどうにかしてしまえば飛べなくなるというのは当たり前で、飛ぶことで優位に立ってるやつが飛べなくなると無能者扱いされるという感じだ。よし、翼への攻撃を繰り返し、飛べなくなったところで置き去りにすべし。


「風剣舞!!」

 お得意の飛ぶ斬撃で翼を狙う。直接斬らないのかって? 無理だ。近寄るの怖えもん!

「グギャァァ!!」

 おぉっ!! なんとなく効いた感じがする。エルダードラゴンの飛ぶ速度が落ちたんじゃないか? このまま安全圏から攻撃を加え続けることとしよう。風属性の斬撃を飛ばし続ける。しかし、これも結構魔力を使ってしまうな。

「グギャァァ!!」

 いい感じに翼が傷ついてきた。まだ裂けてる所はないし飛ぶのには影響なさそうだが、痛みだけでもスピードを落とすには十分である。だが、ちょっと気を抜いた瞬間に非常にまずい攻撃の動作を確認してしまった。エルダードラゴンが大きく息を吸う。あれはブレスだ!

「逃げろ!! 高度を上げるんだ!!」

 気づかなかったら絶対に逃げきれてなかったであろうタイミングでエルダードラゴンのブレスが吹かれる。それはレッドドラゴンのファイアブレスに似ていたが、もしかしたらそれ以上の威力があるのかもしれない。少なくとも大きさはレッドドラゴンの2~3倍はあるからな。

「死ぬっ! 死ぬっ!」

 意外と長い時間ブレスが続く。そしてそれに追いかけられる俺と俺のワイバーン。このままではいつかブレスで黒焦げにされる気がしてきた。とにかく翼を傷つけて飛べなくしてやらないことにはどうしようもないだろう。腹をくくるしかない。俺はそっとドーピング薬を飲む。そして補助魔法を重ね掛けした。


 ブレスがもう少しで途切れそうになる。ブレスというだけあってエルダードラゴンも次の瞬間には息を吸う必要があるはずだ。そしてそれは大きな隙になる。息を吸っている時に攻撃はしづらいものだからだ。

「とりゃぁ!」

 ワイバーンが大きく右に旋回する時を見計らって、逆の左側に跳躍した。そしてその先に魔装でブロックを作り出し、それを踏み台にしてエルダードラゴンの方へと飛ぶ。急な方向展開にエルダードラゴンとはいえブレス中であり、付いてこれるはずがなかった。首の近くをすり抜け、翼の付け根へと向かう。

「うぉぉぉ!! 剣舞!!」

 久々に飲んだドーピング薬の効果はそこそこあったようだ、エルダードラゴンの右の翼が大きく裂けた。

「うっしゃぁぁ!! いまだぁ!!」

 ワイバーンを回収して乗り込む。翼が裂けて痛みに耐えるエルダードラゴンはこちらをとらえきれなかったようだ。ワイバーンが高度を上げる。そこにブレスを吐こうとしてくるが、飛べはしなかった。

「逃げ切った!」

 ブレスが届かない高度を保つ。魔力的にもまだいけそうだ。翼から大量の血を出しながらもこちらを向いて怒っているエルダードラゴンを見て思う。よくもあれだけ巨大な魔物に追われて生きていたものだ。まだエルダードラゴンは諦めていないようである。こちらへずりずりと這いながらブレスを吐く。


 …………這ってる?

「え? なんで這ってるんだ? 斬ったのは翼だけなのに…………」

 右の翼の付け根からはまだ大量の血が出続けていた。そして、その重症を負った状態で走ってくるかと思いきや、エルダードラゴンは這っているのである。足が使えないわけではなさそうだった。

「もしかして、もともとあまり足で移動する事がないから走ったりできないのか?」

 ただ単に体重を支えるだけの足という事か。そして移動手段であった翼は右側が裂かれ、血が出続けている。方向転換するだけでも大変そうである。



「あれ? これってもうちょっとで討伐できるんじゃね?」

 食料問題、魔王というプライドの問題、この辺りの治安の問題。全て片付く方法があるかもしれない。そしてどんなに急いでもユーナもマジェスターもエリナもここに着くにはまだ1時間以上かかるだろう。


 その後、MP回復ポーション飲みながら遠距離からの斬撃をちまちまと繰り返していたらエルダードラゴンはついに出血多量で力尽きた。まさか、俺一人で討伐できたなんて!?


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