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1-5 死の代名詞

前回までのあらすじ!


おい!革と糸を取ったらもう装備ができちゃうんじゃないか!?


いやいや、革の鎧にもいろいろあってな!リングメイルとか、チェインメイルとかにも革は使われてんだ!


フルプレートは?


あれはオレオのこだわりで、「あんなん着てるのに戦えるわけないだろが! ワイバーンやフェンリルに乗る人は例外だけど」というわけで、フルミスリルの重装と言ってもプレートメイルまでしか許さんらしいよ!本気のフルプレートアーマーは騎乗できるものがある人だけしか着せてないんだってさ。ヘテロとかフィリップだけの装備ですな!


そんなんでいいのか!?


もともと弓矢とか一転集中型の攻撃手段の方が剣より強いに決まってるじゃないか。らせん状にぐりぐり弾が貫いていくライフルができてからは鎧は無意味になったというし(それを防げるほどの板の厚みにすると重くて動けない)。着ても着なくても貫かれるなら軽くて暖かい服でいいもんね。だから、あんまり面積の多い装備は作らない設定になってる。そのかわり、寒い地方で戦う事もあるから服にはこだわりたいね!裏設定ばかりで描写がほとんどないけれど!


い、一応、この世界には魔法という物があってだな……


うーん、だからあんまり弓矢は発達してない設定なのだけど。それに魔力を帯びさせた剣もつよい設定でさ。でも、それなら魔力をおびさせた弓矢が最強になっちゃうよね!


な、なんてこった!?あらすじ関係ないじゃないか!


「嫌な予感しかしない」


 受付嬢に渡されそうになった依頼書を受け取るのを躊躇して俺が言う。しかし、受付嬢は必死な形相でそれを俺の手に握らせると距離を取った。これを渡せなかったら大変な事になるというのを理解しているらしい。執念が違うという事を感じる。

「それでは受理いたしましたので!!」

「ちょっと待てぇ!」

「待ちません!! では、御武運を」

 恐る恐る依頼書を見る。何が書いてあるのだろうか。あの魔王の事であるから、ろくな事じゃないとは思うけども。

「なになに? レイル諸島南部における古代遺跡で大量発生中のアンデッドの駆除……」

「アンデッドって何ですかぁ?」

「さあ、なんだろうね?」

 アンデッドという魔物……どこかで聞いたことがある。

「もしかして、魔物じゃなくて召喚獣にそんなのがいなかった!? 死者召喚のことじゃない?」


 ユーナの言葉で思い出した。ハルキ様が禁止した召喚獣の中に、死者召喚と呼ばれる物がいた。その禁止の理由が召喚契約がえげつない物だったという。例えば、素材の中に自分で〇〇した肉親の●●の一部とか、人としての道を誤り、力を求めようとだけする召喚士にしか契約し得ない物が混ざっていたはずだった。そんなアンデッド系の召喚獣が大量に発生しているという。しかし、発生とはどういう事だろうか。

「こちらの依頼は他言無用にございます。守秘義務が生じますのであしからず」

 受付嬢が黒い笑みで付け加える。

「この古代遺跡はヒノモト国が管理しておりますので、場所は地図を進呈しましょう。できるだけ早く向かってくださいとの事でした」

「待て、なんでヒノモト国が管理している遺跡からこんなのが大量発生してるんだ?」

「…………守秘義務がありますので」

 あのクソ魔王! 自分の国の管理のずさんさを俺たちに押し付けやがった!


「なんか聞いた事あるかもー。私がここに定期連絡に通ってた時にハルキ様とアイオライ様とテツヤ様で探索した遺跡じゃない?」

 地図を見ながらユーナが言う。なんでこんな所にハルキ様どころか、アイオライ王が来てるんだよ?

「当時はアイオライ王も王子だったから、グルメツアーに来てたのよね!」

「なにやってんの? ヴァレンタイン王のくせに。王子様なら王子様らしく、そんな危険なところに行っちゃだめでしょうに」

「シウバ様、シウバ様だけはそれを言えない立場にありますよ」

 マジェスターの冷静な突っ込みを無視して、ため息をつく。

「まぁ、前回みたいに汚くて臭い討伐じゃなかったらいいんだけどね」

「あれは悲惨でしたからな」

「まあ、これも持ちつ持たれつという事なんだろう。さっさと討伐してきて、「隕鉄」がありそうな遺跡の探索を始めようぜ」


 ***


「前言撤回だぁぁぁあああ!!」

 遺跡に入った俺たちを待ち受けていたのはゾンビとよばれる死者召喚でよみがえった者たちだった。めちゃくちゃな数が遺跡の入り口の付近にたむろしている。つまりは腐肉であり、汚くて臭い。吐き気が襲ってくる。そして倒れると腐肉をまき散らす。

「もう嫌だぁ!! 遺跡ごと吹っ飛ばしてやるぅ!!」

 俺の全力のフレイムレインで遺跡の入り口を吹き飛ばす。遺跡の保存は契約には含まれてなかったはずだ。遺跡をぶっ潰してアンデッドを全滅させてば依頼完了だ! だが、遺跡の壁や天井にはまったく傷がつかなかった。そして中からは新たなゾンビが這い出して来る。

「なんでだぁぁぁぁああああ!!!」

 すでに遺跡の出口から地上に脱出し、さらには上空で待機しているユーナとエリナ。女の子なんだし、無理はしなくてもいいけど、一言あってもいいんじゃないかな? 逃げるよ? とかさぁ。ついでに連れて行ってくれたらよかったのに。

「シウバ様! ここは私が!」

「待て!氷属性だと、その場に留まってしまう! いくら凍っててもその上を乗り越えていくのは嫌だ!」

「では! どうすれば!?」

「よし! 切り込め!」

「え?」

 え? じゃないよ。氷属性で固めると道がふさがれるし、臭いのも多少は良くなってもなくならないでしょ? とりあえず、全滅させてからフレイムレインで焼き払えばいいんじゃないかな?

「いえ、シウバ様! それでは私が腐肉まみれになってしま……」

「では、どうするんだ!?」



 ***



『おのれぇ!! クソ虫どもめがぁぁぁあああ!!!』

「ごめんねぇ」

 ゾンビの集団への切り込み隊長として任命したのは天使ケルビムだった。召喚主のユーナの命令にはさすがに逆らえない。憤怒の形相でゾンビたちを斬りまくっているが、その表情を向けるのは俺の方向である。

「ぎゃはははははっ!!」

 剣を振るう度に腐肉まみれになっているケルビムを指差して俺が笑う。こんなに笑ったのも久しぶりだ。たまにケルビムがこちらに向けてゾンビを飛ばしてくるが、それは思考加速のスキルで全て躱す。途中からはかなりの数のゾンビにケルビムは手こずっていた。そしてユーナも含めて誰も加勢しようとしない。

『貴様らぁっ!!』

 その時ケルビムが本気を出した。ケルビムの周囲に光が集まっていく。そしてそれが弾けた。何やら光がゾンビたちを浄化していくようである。次々と倒れていくゾンビたち。

「まるで天使のようだ」

 マジェスターが本気で失礼な事を言っており、それに耐えきれずに俺が噴き出す。

「本当だ、まるで天使みたいだな、お前。ぎゃははっ」

『このっ! 我は天使系のユニーク召喚獣であるぞ!』

 それは知っている。本当に揶揄い甲斐のある奴である。

『くおらぁ! 片付いたぞぉ! 次は貴様らの番だっ!!……なぁっ!?』

 そして俺たちを襲おうとして強制送還される。哀れケルビム。いや、今回は本当に助かった。お前もたまには良い仕事をするじゃないか。

「さあ! 中に入ろうか!」

 一階の入り口にいたゾンビたちはケルビムの浄化の光で全て消滅したようである。次のゾンビが発生しないうちに、発生源を抑えて置く必要がありそうだ。帰りに襲われても嫌だしな。



 だが、遺跡の一階の広場にはアンデッドは待ち受けていなかった。扉をちょびっとだけ開けて中を覗いてみると、代わりに他の召喚獣がいる。

「…………ちょっと、一旦帰るってのもありかもしれないと思って来たんだけど」

「そうですね、シウバ様。一旦帰りましょうか。私もレイルの町の観光に行きたい気分です」

「何言ってんの! 後ろがつかえてるんだから進んでよ!」

 扉を少しだけ開けて中を見た俺とマジェスターの後ろからユーナが押してくる。

「ちょ、ちょっと、ユーナ押すなって! 待って!」

「またまたぁ、それってフリって言うんでしょ? ハルキ様が前に言ってたよ? 押すなって言われたら押さないと失礼にあたるって!」

「ボケってやつですねぇ! 私もそれに興味ありますぅ!」

 エリナも中が見えていないようである。慌てる俺とマジェスター。そして悪乗りするユーナとエリナ。ついに、広場へとつながる扉が全開となってしまった。中の召喚獣たちがこちらに気づく。


「あれ? もしかして?」

「そ、そうだね。アンデッドじゃないから依頼に含まれない、でいいかな?」

「いいと思うよ」


 そこには死の代名詞と恐れられている紅竜が存在した。しかも、三匹も。


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