1-4 空から降ってくる石
「隊長!大変です!」
「どうした!?」
「暇つぶしに書いた新作小説のアクセスがめちゃくちゃ少ないために作者のメンタルがやられたようです!」
「なにぃ! いつのまにそんなもん書いてたのだ!? しかも、これ異世界かもしれんけど転生でも召喚でもないじゃないか! テンプレはどうした!? テンプレは!?」
「脱テンプレ! だそうです!」
「じゃあ、何も残らんではないか! 奴からテンプレを取ったら何が残るのだ!? 残らんではないか!」
「大事な事なので2回……」
「ええい! うるさい! とにかく、それならば宣伝なりなんなり読んでもらえる努力をせねば!」
「しかし、1話12000文字とかにしちゃってますし、不定期更新です! 人気になる要素は皆無です!」
「12000文字だと!? そんなの読んでるうちに飽きるわ! そもそもここに来る読者はちょっとした時間にちょっとだけ読むのが好きなものばかりであろう! なんて事をしてるんだ!」
「マジでダンケ〇フェルガーですな!」
「…………使い方が間違ってる」
「で、アダマンタイト製のナイフを越える切れ味のものが必要だと」
ハンマーで殴られたクロウが回復するのを待って詳細を聞く。ティアマトの革がそこまで加工しづらいものだとは思わなかった。端の方から加工を始めようとしているらしいが、ナイフがろくに通らないために切った跡が汚くなってしまっている。急遽加工を中止して俺たちを待っていたらしい。デビルモスの糸は最高品質だとお墨付きを頂いた。
「ねえねえ、シウバ!」
そこにむふふんと得意顔のユーナがやってくる。なにやら言いたい事があるようだ。
「シウバの、その魔力を込めたやつなら切れるんじゃないの?」
さすがはユーナ! それであればスパパッと切れるに違いない。だったら、切るところを指定してくれたらその通りに切ってあげよう。
「いや、問題なのは針なんだよ。お前が縫ってくれるのか?」
「あ…………」
革に縫い付ける際の針がどうしても強度が足りなくなるそうだ。裁縫なんてしたことねえよ。とか思っていたら、その針の太さは想像以上だった。そしてそれをハンマーで叩きつけて穴をあけ、そこに糸を通すのだそうで。裁縫どころか、完全に加工の領域に入っている。こりゃ、無理だ。
「で、どうすんの?」
クロウが言ってくるけど、むしろこっちのセリフだ!ボケがぁ! クロウにキャメルクラッチを決めていると、ダンテ親方が言った。
「アダマンタイトやミスリルよりも強い鉱石があれば何となるんだがなぁ」
「え? そんなもの存在するの?」
「ない事は……ないが……」
もったいつけずに早く言えよな。
「でも手に入るかどうかわからん上に、針に加工できるとは思えん」
「とりあえず、なんて鉱石なの?」
「あぁ、すまん。その物質は「隕鉄」と呼ばれててな。何しろ、空から降ってきた鉱石なんだそうだ」
隕鉄? 空から石が降ってくる?
「俺も聞いた話だ。信憑性すら分からん。本当にアダマンタイトよりも凄いかすら分からん」
「しかし、その「隕鉄」とやらがあればティアマトの革が加工できるんだな?」
「その可能性があるってだけの話だ。しかし、本当に質が良くて量も多ければ武器も作ってやれるぞ」
武器と聞いて、俺とマジェスターだけでなくユーナまでもが反応する。「隕鉄」で作り上げた武器とはどれくらいまでの切れ味を誇るのだろうか。非常に興味があるぞ。
「死ぬまでに一度でいいからお目にかかりたい鉱石だな。まあ、それを探すよりはクロウが針に魔力を帯びさせられるようになる方が確実に早いだろう」
なるほど!と全員でクロウを凝視する。
「え? マジで?」
しかし、俺は心の中で「隕鉄」を探しに行く事を決めていた。だが、それがクロウに魔力込めを習得させないという理由には結びつかない。
「というわけで、俺たちは忙しいんでこいつに魔力の込め方を伝授してもらえませんか?」
クロウを引きずってやってきたのはある人の所である。その人物の修行というのは厳しくて有名であり、ダンテ親方なんて目でもないためにクロウがさきほどから全力で抵抗していたが、めんどくさいのでパラライズをかけておいた。そのうち解けるだろう。
「ほっほっほ、それは良い取引ですね」
そう、フラン様の所である。報酬は完成した黒龍革の装備だ。ちょうど新しい籠手が欲しかったんだとか。みんな装備の事になると目の色が変わる。
「分かりました。ちょうど腑抜けがおりました故に、剣に魔力を込める方法を叩きこもうと思っておりました所です」
フラン様の後ろには何故か数名の召喚騎士団らしき物体が転がっているが、あれは触れてはならないやつだ。ヨーレンらしき物体が混ざっているのも気のせいだろう。そしてそのうちクロウもあの中の仲間入りをする事になるに違いない。冥福を祈る。
「あったぁ!」
「隕鉄」の事を調べるために数日かけてレイクサイド領立図書館でみつけた資料には、空から降り注ぐ石の事が書いてあった。それはかなりの昔の事である。場所はレイル諸島と思われる。落ちた時期はまだ魔族がいなかった頃かもしれない。
「これは、もしかしたらあるかもしれない!」
次の目的地はレイル諸島と決まった。資料にはそこに落ちて来た石を祭ったと書いてあった。今では純人はいなくなっているはずなので、遺跡としてなら残っているかもしれない。ヒノモト国であれば、遺跡の探索くらいは許してもらえるだろう。あの国のために第6特殊部隊は結構いろいろやってきたはずだし、シン殿あたりにお願いしてみる事にしよう。
***
シン殿に連絡をしたところ、レイル諸島にはシン殿の方から連絡を入れておいてもらえるとの事で、俺たちはすぐに向かう事にした。パティは留守番である。薬の調合をしたいんだとか。研究熱心である。
ユーナのウインドドラゴンで半日かけて行く。レイル諸島はヒノモト国の中でも2番目に栄えている町になってきている。それはもちろんヴァレンタイン王国とのお取引を一手に担っているからだ。多くの船が港に出入りするのが見える。さらに、最近はここからエレメント魔人国への貿易も始めたらしい。世界が急激に狭くなっていくのが分かる。
「今日はとりあえず、宿に泊まって旨い物でも食うとしようか」
「シウバ! 頼まれたものしなくていいの?」
「あ、忘れてた!」
実はレイル諸島に行くのであればと頼まれたものがあった。それは冒険者ギルドについてである。ここレイル諸島にはまだ冒険者ギルドがなかった。しかし、それを開設しようというのだ。現地で頑張っている職員やまだ育っていない冒険者を助けるという意味も込めて高ランクの依頼を受けてきてほしいというのが頼まれた事である。ちなみにそれを押し付けてきたのはどこかの領主である。
「とりあえず、顔出しとこうか」
宿をとった後に、4人でぞろぞろと冒険者ギルドまで向かうことにした。
「遺跡の探索と同時に行えるものがあればいいね!」
ユーナはいつも前向きな事を言ってくれる。
冒険者ギルドはあまり大きくない建物だった。しかし、1回は酒場が併設してあるあたり、ヴァレンタイン王国のものと差はないようである。ギルドカードを提示して、依頼を漁る。ランクはいつの間にかSまで上がっていた。受けられない依頼はないはずだ。
「これがいいですぅ」
エリナが指差したのはマッドロブスターの討伐依頼である。明らかに食料として認識されている悲しい魔物だ。
「でも、いいのか? 肉を持ってこいって書いてあるぞ?」
「あっ、じゃあダメですぅ!」
やっぱりエリナもそう認識していたようだった。また他に食いものがないかを探し始めた。
「あのう、もしかしてシウバ様でしょうか?」
依頼板の前で騒いでいると、受付嬢から声を掛けられた。受付嬢は純人のようである。
「あ、はい。そうですが」
「伝言をお預かりしております。魔王様から」
魔王だと? つまりテツヤ様が俺たちがここに来るという情報を手に入れたという事か。なんか嫌な予感がする。
「交換条件として、こちらを受理するようにとの事でした」
受付嬢が差し出してきた依頼表はSSランクと書かれている。なんだ? ティアマトがまた出たのか?
しかし、それはそんな物ではなかった。俺たちはここに来た事を後悔することになる。
ダン○ルフェルガーが分からない諸君は「本好き○下克上」を読もう!すぐ読めるよ!542万文字くらいしかないから!