4-3 冒険者は形から
前回までのあらすじ!
あれ?プロット無視したけど、これならまだまだ書けそうな感じじゃね?
冒険者ルートなんて、いくらでもネタがころがってるじゃないか!
いやっふぅー!!
いやいや、もともとそういう話じゃなかったっけ? ← イマココ!
「ダメ」
予想通り、引退して冒険者になるというのはハルキ様に却下された。まあ、当然だよな。
「お前らの育成にいくらかけてると思ってんの? 魔石ってめっちゃ高いんだからな」
ごもっともです。
「いや、しかし休暇は与えなきゃと思ってたのは事実なんだけど」
あら?
「明らかにユーナの様子がおかしかったし、お前も体を酷使し過ぎだし」
何か怒られてる?
「だいたい、お前はリヒテンブルグ王国との関係性ってのを軽く考えて過ぎてないか? あの国は文明的にはたいしたことなくても軍事的にはかなり重要な立ち位置にあるんだから…………」
…………ハルキ様の説教は一時間を越えた。
「という事で、第6特殊部隊の任務として、所属したまま冒険者をやるというのならよしとしようか。有事の際には帰ってくるのと、冒険者に依頼を出さなきゃならん要件をたまに回すから、受理するように」
はっ!? 意識がなくなってた気がするが、とにかく休暇と冒険者をやってもいいと言う許可をもらえた。これはユーナが喜ぶな。
「給料少なくするけど、冒険者の報酬はピンはねしないから大丈夫だろ?」
それはむしろ給料上がるって意味だ。
「ありがとうございます」
「やっぱり、お前は自分の立ち位置わかってない」
「え?」
「本来、お前はリヒテンブルグ王国の魔王なんだよ。むしろ俺の方が敬語使わなきゃならん立場だ」
そんな事言われても実感ねえよ。
「という感じで第6特殊部隊はこれから冒険者として休暇に入ります」
自宅にもどった俺はユーナたちにハルキ様の説得(?)がうまくいった事を説明した。
「さすがシウバ様です! 役職を維持したまま好き勝手できるように立ち回るとは!」
マジェスターが人聞きの悪い事を言ってる。
「でも、本当にこちらの要望をくみ取ってくれたですぅ」
「なんか、ハルキ様に悪い事しちゃったかな?」
「有事の際には帰れって言われてるから、気にしないでいいんですぅ!」
エリナの言う通りである。いつか復帰する時のためにも、全力で休むとしよう。
***
「まずは冒険者らしく行かなきゃね!」
かなりやる気マンマンのユーナに率いられてレイクサイド領冒険者ギルドへ入る。
「あっ! 「疾風」ユーナ様だ!」
「あれは「狂犬」マジェスター様! エリナ様までいる!」
すでに有名人なこいつらに比べてこの数か月行方をくらませていた俺に対する噂話は皆無なようである。ちょっと寂しい。
「召喚騎士団の方々が今日はどういったご用件でしょうか?」
受付嬢に聞かれて依頼を受けようとしているユーナ。あれ?ちょっとおかしいぞ?
「ちょっと、待って! ユーナ!」
「何? どうしたのよ!?」
「依頼を受けるその前に…………」
「なるほど! 盲点でした!」
「さすがはシウバ様ですぅ!」
「確かにね! 気づかなかったわ!」
完全にレイクサイド召喚騎士団のフルミスリル装備でここに来ていた俺たち。しかし、これからは違うのだ。俺たちは第6特殊部隊であるが、冒険者になるのだ。それならば装備はレイクサイド召喚騎士団の物ではだめだ。つまりは、まずは装備をそろえる事から始めたいと思う。形から入るという事も重要なのだよ。
以前、冒険者をしていた際の装備を自宅から引っ張り出す。ここらで最も腕のいい鍛冶屋といえば、レイクサイド領主館おかかえのドワーフ、ダンテ親方に決まってる。こういう時だけ俺たちは第6特殊部隊に戻ることができるという特典が付いているじゃないか! さっそく、領主館でダンテ親方を誘か……面会して装備を作ってもらう約束をする。
「いま、忙しいんだよ……」
しぶる親方にそっと、秘蔵のエジンバラ産ウイスキーを差し入れる。こんなこともあろうかと以前ハルキ様の所からくすねてきた物が役に立った。
「ちょうど暇していたところだ! 素材があれば何だって作ってやるぜ!」
「やはり、鎧は軽装ですな!」
「防御力も必要ですけどぉ、あったかいのがいいですぅ」
マジェスターとエリナがかなり盛り上がっている。
「シウバ! 私は革の鎧がいいな! 最上級の革ってなんなのかな!?」
最上級の革か……分からん。
「ダンテ親方、最上級っていうと何かな?」
「そりゃ、強い魔物の革じゃねえのか? なめした事ぁないからなんとも言えんが、伝説級といえば竜革とか…………」
「「「竜!!」」」
「でしたら! ティアマトとか良いのではないでしょうか!? SSSクラスですし!」
マジェスターの提案にみんなが頷く。
「おし、そしたらまずはティアマトの素材を手に入れる所から始めようか!」
こうして俺たちは各自の装備を作るところから始まったのだった。
「皮を剝ぐためには知っておいてもらわないといけない事がある」
ダンテ親方の皮剥ぎ講座が始まる。魔物の解体はよくやるが、素材としての革を手に入れた事はなかった。要は腐らないように処理しなければならないという事だった。そして毛皮と皮膚ではその処理の仕方が違う。使う薬品も変わっており、覚えるのが大変そうだ。というか、無理。
「うぅー、覚えきれないですぅ」
まずエリナの頭がパンクする。そして俺もついていけてない。ユーナもマジェスターも自信がないようである。
「ったく、しゃーねーな。おい! クロウ!」
ダンテ親方が一人のドワーフを呼ぶ。
「こいつはクロウ。まだまだ未熟者だが、解体くらいはできらぁ。連れて行け」
「はぁ!? なんで俺が付いていかな……ぶへぁ!」
鍛冶用のハンマーで叩かれて頭は大丈夫なのだろうか? 心配をよそにクロウと呼ばれたドワーフは頭をさすりながら起き上がる。
「生意気なところが悪い所だが、解体の腕は確かだ。礼儀を仕込んでやってくれ」
「うぅ、クロウだ。仕方ねえから付いていってや……」
またしてもダンテ親方の鍛冶用のハンマーが振り下ろされる。あれ、アダマンタイト製だよな……。
「いってぇ!」
「辛抱が足らん。それがこいつの作品に足りん所だ。我慢を覚えればまた一段階良いものが作れるようになるはずだ。技術ではなく精神を磨かせてやってくれ」
こんなタフな奴の精神をこれ以上どうやって磨かせればいいのかが分からんが、旅に同行してくれて解体をしてくれるってんならありがたい。
「分かった。ありがとう! とりあえず素材を手に入れたらここに戻ることにする」
「あぁ、次の酒にも期待しておくぜ!」
「マジかよ……」
「俺も連れて行け」
自宅で準備をしているとパティ=マートンに話しかけられた。
「そいつも戦闘要員じゃねえんだろ? そろそろ薬草が生え変わる頃だ。調合方法を教えろ。それに補助魔法もかなり上達したぜ?」
そういえば、こいつに調合薬を教えるのをすっかり忘れてた。薬草の補充を兼ねて連れて行くのもいい。ウインドドラゴンは無理すれば6人乗れないこともない。
「分かったよ、用意しろ」
「へへへっ」
冒険者ギルドでティアマトの目撃情報を聞く。
「ヴァレンタイン大陸では今のところありませんね。」
は? ヴァレンタイン大陸では?
「この前新設されたオーブリオン大陸と、エレメント魔人国の冒険者ギルドで3か所目撃情報があります。どちらも数日前でまだ受理されてないようですが、予約しておきますか?」
知らない間に魔道具が大量に置かれていると思ったら、「大同盟」ネットワークを駆使してヴァレンタイン冒険者ギルドが世界に羽ばたいていた。仕掛け人はオクタビア=カヴィラ領主だそうで。あいつ何やってんの?
「では、シウバ様名義でエレメント魔人国の南で目撃されたティアマト討伐を予約しておきますね。到着は2日以内厳守ですが、間に合いますか?」
「え、えぇ、ウインドドラゴンがありますんで」
「そうでしたか。もし移動手段がなければレイクサイド召喚騎士団ワイバーン輸送がご利用できます。料金はエレメント魔人国まででしたら2日でお一人様片道金貨5枚となっております」
金貨5枚とかありえねえ金額だろうが。むしろ代わりに輸送してやりたくなるほどの高額だ。新人の訓練を兼ねて暴利をむさぼる悪い顔の領主が目に浮かぶ。もうちょっと酒を盗んでくるべきだった。
次の日、カヴィラ領の領主館を宿替わりにした俺たちはエレメント魔人国の南で目撃されたティアマトを討伐しに行くのだった。
なんだって!? オレオが息抜きに新しい小説書いてるだって!?
それも息抜きにならないような重くてつまらんやつだって!?
あ、次から新章です。