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3-4 悲哀の神

あなたー!あなたー!

読者の方がいらしたわよー!

またなの? なんで出てこないのかしら?

そんなに逆お気に入りユーザーが99人になったって報告の後に2人も減った事を気にしてるのかしらね?

あなたー!どうせ当分100人達成はできないんだから、100人達成イベントが思いつかなくても構わないのよー!

え?変な事を活動報告に書いたから愛想つかされて削除されたんじゃないかって?

そうじゃないわよ!単純にこの小説が面白くなくなったからよ、って…………あら?どうしたの?お腹痛いって?あらやだ、変なもの食べたのかしら?



「ドーピング・ヴェノム・エクスプロージョン!!!」

魔王に放たれた特殊魔法によって、塔の上層部から青々と茂っていた世界樹が吹き飛ぶ。残った部分もほとんどが炎にまかれて燃え尽きだしている。塔の上層部は跡形もなく、残るは黒焦げの外壁と燻る世界樹だった物体のみであった。一呼吸おいて、後方から歓声が上がる。

「「「テツーヤ=ヒ・ノ・モ・ト!! テツーヤ=ヒ・ノ・モ・ト!!」」」

 魔王の特殊魔法が世界樹を破壊した事でヒノモト軍は完全にお祭り騒ぎだ。魔王テツヤ=ヒノモトは大人気である。そしてこの戦争の目的は世界樹の破壊であったはずだった。つまりは戦争に勝ったのである。お祭り騒ぎは当然であった。

「「「テツーヤ=ヒ・ノ・モ・ト!! テツーヤ=ヒ・ノ・モ・ト!!」」」

 純人とは違う、少しリズムに乗った歓声が塔の周りに起こっている。それに答えるドヤ顔の魔王。かすかに魔力補助のために体が光って見える。



「おぉ、すげえな」

 我ながら2倍重ねドーピングの威力が凄い。パティの見立てでは1本であれば問題なさそうだという事で俺とテツヤ様、マジェスターで飲んで最終的に魔力が跳ね上がったテツヤ様がヴェノム・エクスプロージョンをかました。

 結果は見ての通り、世界樹はもう跡形もない。魔力が回復しだしたのが実感できる。これで、俺たちの勝利という事で良いのだろうか。かなり卑怯な手ではあるが、ヨシヒロ神が提示してきた条件を破っているわけではない。主はものすごく悪い顔で賛同してくれたが、提案した自分がこれでいいのだろうかと思わないでもない。そしてそれに怒る神を想像する事はたやすい。


「哲也ぁぁぁ!!!」

 怒り心頭のヨシヒロ神が飛び出してきた。

「はっはっは! 今なら勝てるぜぇ! 積年の恨み晴らしてやる!」

 テツヤ様も迎え撃つ気マンマンである。ドーピングの効果が数分しか効かないから気を付けてもらいたいところではあるが、そういや説明してなかったな。2人の頂上決戦が始まるが、その後ろから魔王ナトリ=スクラロが出てきた。臨戦態勢ってわけではなさそうだ。魔装をしていない。

「大同盟軍よ、交渉をさせてもらえないか」

 敗北したスクラロ国の魔王はそう言った。その時2人は周囲を巻き込みかねない勢いで戦い出していた。少しづつ離れていく2人を見てホッとしながら、、両軍は和平交渉へとうつる事になった。



 ***



「では、本当に降伏ではなく、「大同盟」に参加という体裁で良いのか?」


 数分間はいい勝負をしていたが、その後にフルボッコされた魔王テツヤ=ヒノモトを置いておいて、和平交渉は思いのほかスムーズに運んだ。フルボッコの時には戦場からだいぶ離れていたためにヒノモト国軍にはやられる所は見られていないのが不幸中の幸いである。

 すでにヨシヒロ神はやる気をなくしており、これ以上世界崩壊を計画する気もないそうだ。主な議題はスクラロ軍の待遇についてであり、魔王ナトリ=スクラロは自身はどうなっても甘んじて受け入れるから国民に罪は問わないで欲しいという事を訴えた。そしてそれに対して大召喚士ハルキ=レイクサイドの提案は降伏ではなく「大同盟」への参加という事にしてはどうかという案だった。


「お互いに死人は出ているし、わだかまりがないとは言い切れないが、それは妥協点を探るしかない。今はできるだけ早期に戦争をやめる事が先決だ」

「しかしそちらの国民が納得するのか?」

「未来永劫納得なんかしないよ。それは戦争だったからと割り切って先に進むしかない。やってしまった事はやり直せない。それよりも今後の事を考えよう。アイオライ王は俺たちが説得する。エレメント魔人国やトバン王国は直接的な被害は被ってない。ネイル国も同じだろう。リヒテンブルグ王国は魔物の狩猟ができなくて大変だったみたいだが、あそこの魔王も納得するだろう。な、シウバ?」

「知りませんよ。それより早く帰って旨いもん食わせてください。こっちの料理はちょっと合いません」

「帰ったらセーラにお願いしてやるよ。お抱え料理人をシウバの家に回せってな」

「筆頭料理人のガルムさんでお願いします」

「これで残るはヒノモト国だけだ」

 魔王テツヤ=ヒノモトは出席できていないためにここにはシン=ヒノモトがいる。

「うちとしてはオーブリオン大陸の北部をもらえればいいよ」

 スクラロ軍が占領していたオーブリオン大陸の北部は現在ヒノモト国が実効支配している。

「なら、それで決まりだ。すばらしいじゃないか、世界平和だぞ?」


 ***


「で? なんで?」

「なんでって、もう僕には目的がなくなったからね。そしたら次は面白そうな所に行くにきまってるじゃないか」

「いや、俺は殺されそうになったやつとはできる限り一緒にいたくないんですけど?」

「あ、でも僕も君に殺されそうになったからチャラね」


 何故かヨシヒロ神が俺について来ようとしていた。

「結局、僕は君にやられたようなもんなんだ。最後のテツヤの嫉妬爆発にしたって、君が力を強くしてやったんだろ? 誇ってくれていいよ。神を打ち破ったんだ」

 嫉妬爆発? ドーピング・ヴェノム・エクスプロージョンの事だろうか? 

「君くらいのもんだよ。現地人で僕の予想を上回るのは」

 現地人って何だよ? ほんと意味分かんねえな、この人。あ、人じゃなくて神か。

「めちゃくちゃ迷惑なんですけど」

「大丈夫、大丈夫。僕は気にしないから。1万年も生きてるとこんな事は気にならなくなるのさ」

「いや、俺が気になるって言ってるんだけど……」

 人の話を聞かないやつだな。

「だいたい、ナトリ=スクラロとか友達はたくさんいるって聞いてますけど?」

「うっ、実はナトリと今回呼んだ8人くらいしか友達いなくてね」

 意外と可哀そうな奴なのかもしれないと思ってしまった。

「まぁ、というわけだから仲良くしようじゃないか。お互いに剣を心臓に刺し合った仲だしね」

 そんな嫌な仲の奴と仲良くできるわけないじゃないか。本当に普通の神経してないってのだけは分かったけどさ。

「断ります。ナトリ=スクラロと一緒にいればいいでしょ?」

「そんな事いわないでざぁぁ……」

 縋りつくヨシヒロ神を引きずりながら宿営地へと帰っていく。このままこの馬鹿神が付いて来るという事だけは避けたい。しかし、こいつはメンタルめっちゃ強くてちょっとやそっとの嫌がらせくらいでは追い払えそうにもない。どうすればいいのか。

「シウぽんがいいと言ってくれるまでこの手を離さないよ」

「へんなあだ名をつけるのやめてもらえませんかね」

 次は両手を引っ張ってくる。1万年も生きてるくせに精神年齢は低そうだ。

「シウぽん~……」

 半泣き状態のヨシヒロ神。そんなに今の所に残るのが嫌なのだろうか。まあ、たしかに戦争に負けてしまい、しかも結構な被害がスクラロ族には出ている。皆ヨシヒロ神を信じてついてきた連中ばかりだったはずだ。それが負けてしまい、居場所がなくなったように感じているのは仕方がないのかもしれない。自分がこの立場だったらと、少し可哀そうな気持ちが出てくる。


「仕方ないなぁ。でも仕事の邪魔はしないでくださいよ?」

「うん! もちろんだよシウぽん!」

 その変なあだ名も止めさせないといけないかもしれない。ヨシヒロ神を引きずって宿営地に帰るとテントからエリナが出てきた。

「あ、お疲れ様です。交渉は終わりましたか……あれ? ヨッシー?」



「ちょ、ちょっとよ、用事思いだしたから、ま、また今度ね! さっき言ってたのは無しで!」


 そう言うと、神は泣きながらいなくなった。俺は本気で同情した。そしてああはなりたくないと思った。


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