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2-5 バンシの戦い 序盤

前回のあらすじ!


誤解です!誤解なんですぅ! ← イマココ!

 ヒノモト軍を守るように前線に出現していくアイアンゴーレムたち。そしてその後ろには多数のワイバーンが召喚士を乗せて空を舞う。ヒノモト軍1万に対して召喚騎士団は100名程度であるが、これはただの100名ではない。

「いよっし、間に合った」

 本営に到着したのは領主ハルキ=レイクサイドである。ワイバーンから降りてくるのはそれぞれの部隊長たちであり側近たちだ。

「おう、ハルキ! よく来たな! 紹介するぜ、こいつはフォレストだ……ぶふふっ。それじゃ俺は突撃してくるからここはよろしく!」

 半笑いの魔王がシウバをハルキに紹介してから前線へと移動する。

「サーセン、速攻でばれました」

「そうか…………」

 あきれ顔の領主と状況を飲み込めない周囲の人間。しかし、そろそろ本格的に戦闘が開始されるために準備にかからなければならなかった。

「ハルキ様、私どもも前線に向かおうと思います」

「うん、ヨシヒロ神出てくるまでは大丈夫だとおもうから頑張って」

 フィリップたちが前線へ向かうと、残るはウォルターとフランのみであった。

「どこまでばれた?」

「ヒノモト国はテツヤ様だけ。あとは、多分……ユーナにばれました」

「そっか、どんまい……」

「必要な事だとは分かってましたが、恨んでもいいですか?」

「あとで誤解を解くの手伝うからやめてくれると嬉しいな」



「攻撃を開始せよ!」

 攻撃型の陣形を組んだスクラロ軍の最前列が魔装で作った弓矢で攻撃を開始する。破壊魔法が存在するこの世界ではあまり遠距離攻撃の必要性がなく、弓に特化する部隊は珍しかった。しかし、魔力を帯びた矢じりであれば破壊力は少なくても貫通力に関してはかなりのものになる。それが例え鉄でできたアイアンゴーレムの体だったとしてもだ。

「攻撃を集中させよ!」

 最も前線にいたアイアンゴーレムが針の山状態になって強制送還される。原理はアイシクルランスの「氷の雨」と同じで局所集中型の攻撃だ。狙いを次のアイアンゴーレムに変えて攻撃は続けられる。

「いかんな、早めに落としちゃって」

 ハルキ=レイクサイドの号令で後方に待機していたワイバーンの部隊が一斉に前線を越えだした。上空へ高度をあげると召喚されるクレイゴーレムたち。そしてそれらが降り注ぐにはスクラロ軍の中央である。

「迎撃だ!」

 スクラロ軍も狙いを上空に定めて集中攻撃で迎撃を始める。クレイゴーレムの半数近くが強制送還される。しかし、半数はスクラロ軍の陣の中央でクレーターを形成しながら多数の兵士の命を奪っていった。後方からゴーレムの着地する際の大音響が聞こえてくると前線の兵士たちの士気が落ちる。

「乱戦に持ち込むぞ! 500騎はついて来い!」

 シウバが魔獣に騎乗して突撃する。それに付き従うのは500騎の精鋭であり、突撃されたヒノモト軍は陣形を崩されてしまった。そのまま奥深くまで突撃を敢行するシウバ、後ろから多数のスクラロ軍が続き、戦場は敵味方が入り混じる乱戦になってしまう。


 ***


「ね、おかしいですぅ! なんでシウバ様が魔獣に乗ってるんですかぁ?」

「確かに! エリナの言う通りだ! やはりあれは偽物だったのだな!」

 シウバ不在の第6特殊部隊は今回の戦いにおいては第5部隊に同行し遊撃隊となっている。いまだに出番の来ない彼らは戦場を見る事くらいしかやる事がない。マジェスターとエリナは突撃したシウバの違和感について話し合っていた。

「んだと!? じゃあ、俺を斬った奴はシウバじゃなくて、偽物だったってわけか? じゃあ、あの装備は本物っぽいし、シウバの奴は殺されたってことか!?」

 副隊長のヨーレンも手持無沙汰であり会話に混じってくる。

「ひどいですぅ。よくユーナ様の前でそんな事が言えますねぇ!」

「ヨーレン殿、私もエリナの意見に賛同だ。時と場所をわきまえるがよろしかろう」

 TPOがダメなヨーレンに突っ込みが入る。

「マジェスター、ちょっといい?」

 そこにユーナがようやく口を開いた。さきほどから全く会話に入って来ようとせずに考え事をしていたようなのだ。その理由すら話してくれない。

「何でございましょうか」

「ちょっと、私、今日は戦えそうにないや。気が抜けちゃって」

 マジェスターはヨーレンの無粋な言葉がユーナを傷つけたと思いヨーレンをキッと睨みつける。

「分かりました。後は私があの偽物の首をもぎ取ってくることと致しましょう」

「さっき、後ろから見てたけど」

 いつのまにかいたパティ=マートン。今回の戦いには軍医として同行している。シウバがいなくなって故郷に帰るかと思ったが、なぜか居ついてしまった。今ではレイクサイド召喚騎士団専属といってもいいほどの回復師である。

「ユーナさん、あんたの予想、多分当たってるぜ。つまりは余計な事言わずに待ってなよ。きっと、いい事あるぜ?」

「えへへ、多分そうだよね! なんかお腹すいてきちゃった!」

 ここに来るまでの憂鬱そうな顔ではないユーナ。その変化にマジェスターたちの理解が追い付かない。

「どういう事だ?」

「俺が一度診た患者の魔力を間違えるわけがないって事だよ」


 ***


 乱戦になると装備の硬いスクラロ軍は強い。しかし、それはアイアンゴーレムにとっても同じ事である。そのためシウバとその精鋭500騎は集中的にアイアンゴーレムを狙って敵味方の間を縦横無尽に走り回っていた。

「次はあっちだ!」

 その魔獣に騎乗した集団が走る所に被害が出る。それに対してヒノモト軍は最強のカードを最初から切るのであった。


「うぉらぁぁぁぁああああ!!!!」

 次元斬で斬りつける魔王テツヤ=ヒノモト。それを魔力を通したミスリル製の剣で受けるシウバ。

「本気出さねえのかぁ!? シウバ!」

「全力出したいんですけど、手持ちがないんです」

 本物そっくりな返答に笑いがこぼれる魔王。それを単純な戦闘狂と受け取ったのか、シウバは続ける。

「ですが、負けるとも思ってませんよ! なにせあなたは単純な攻撃しかしませんからね!」

 部下を他のアイアンゴーレムに向かわせて自分が魔王を引き付ける。それがドッペルゲンガーのシウバの策略だったはずだ。しかし、ここで魔王がシウバと戦ったとしてもヒノモト軍にもレイクサイド召喚騎士団にも強者はいる。


「ミスリルゴーレム!」

 フィリップ=オーケストラの召喚したミスリルゴーレムがスクラロ軍をなぎ倒していく。乱戦に持ち込んだ事で陣形がとれなくなり、すこしずつスクラロ軍がやられ出したのはこの頃だった。

「リリス!」

 テトもリリスを召喚してかなりの数を倒していっている。全てをシウバ一人で補うには無理があった。そしてそのシウバは魔王と対峙してしまっている。ヒノモト軍もシン=ヒノモトやカイトなどが軍をまとめて反撃に移っていた。

「おら! なんとかしねえと軍が壊滅してしまうぞ!」

 さらにドッペルゲンガーのシウバには魔王を討ち取るだけの実力がなかった。

「くっ!」

 魔王の次元斬をなんとか受け流す。周囲に残っているスクラロ軍はかなり少なくなってしまっていた。



「そろそろ、第二陣が出てきそうだね。ナトリかな? 爺、お願いできる?」

「かしこまりました」

 ハルキ=レイクサイドの予想では次は魔王ナトリ=スクラロが出てくる。この程度ではヨシヒロ神はまだ出てこないだろう。出てきたら、自分が戦うしかない。そしてその準備は整っていた。


「さて、ナトリが爺をさばききれなかったら神楽が出てくるから今のうちに準備しとこうね」

 誰に言ったでもなくハルキ=レイクサイドが立ち上がる。

 スクラロ軍の後方から本隊が動き出したのを見て、遊撃隊の第5部隊への指示を出し、自分も出る準備を開始した。


 そしてそれを見て、誰に気づかれる事もなく陣営を抜け出すシウバ。治ったはずの胸の傷をさすり、任された責任を感じ、過去のトラウマを思い出す。これを乗り越える事で自分はユーナの前に立つ事ができるのではないかと、シウバは思っていた。




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