第一話 世界一になった日、私はまだ挑戦者だった
優勝が決まった瞬間、会場が爆発した。
十万人の歓声が床を揺らした。
実況の声が割れた。
チームメイトが叫びながら私に抱きついてきた。
大型モニターには、私の名前が映っている。
WORLD CHAMPION
HOSHINO MIKA
星野ミカ。
FPS/TPS界で、今もっとも強い女。
そう呼ばれるようになったのは、いつからだっただろう。
十六歳で国内大会を荒らした。
十七歳でアジア大会を取った。
十八歳で世界大会決勝まで進んだ。
十九歳で、私はついに世界を取った。
最後のラウンドは、今でも指が覚えている。
残り一人。
敵は前年王者。
撃ち合いの精度も、判断速度も、位置取りも世界最高峰。
普通なら待つ場面だった。
味方の復帰を待ち、投げ物で視界を削り、確実に勝率を積む場面。
でも私は前に出た。
相手が勝ちを確信した瞬間、ほんの少しだけ足を止める癖がある。
その癖を、私は準決勝の映像から拾っていた。
右に音を置く。
左に影を見せる。
射線を一つ捨てる。
そして、相手が勝ったと思った瞬間に、別の角度から刺す。
引き金を引いた。
画面が白く光った。
勝利。
その二文字が出た瞬間、世界が私の名前を叫んだ。
ミカ。
ミカ。
ミカ。
日本語も、英語も、韓国語も、中国語も、スペイン語も、全部混ざっていた。
意味なんてほとんど聞き取れない。
でも熱だけはわかった。
私は世界一になった。
ずっと欲しかった場所に、ようやく届いた。
トロフィーは重かった。
照明を浴びて、銀色に光っていた。
その重さは、今まで捨ててきたものの重さにも似ていた。
学校帰りに友達と遊ぶ時間。
普通の休日。
普通の恋愛。
普通の十九歳。
そういうものを全部、少しずつ横に置いてきた。
後悔はない。
勝ちたかった。
世界一になりたかった。
誰よりも強いと証明したかった。
だから、ここに立っている。
なのに。
トロフィーを抱えた瞬間、私の頭に浮かんだのは決勝の相手ではなかった。
一度も大会に出てこない男。
配信もしない。
顔も出さない。
声も知らない。
本名も知らない。
どこの国の人間かすら知らない。
なのに、私はFPSでもTPSでも、その人に一度も勝てていない。
NoName。
私の師匠。
私の壁。
そして、世界がまだ知らない本当の怪物。
インタビュアーがマイクを向けてきた。
星野選手、世界大会優勝おめでとうございます。今のお気持ちは?
言うべき言葉は決まっていた。
応援ありがとうございました。
チームのみんなのおかげです。
最高の舞台でした。
最高の相手でした。
それでいい。
それが正解。
それが世界王者のコメント。
私は息を吸った。
嬉しいです。
そこで止めればよかった。
でも、止まらなかった。
でも、私はまだ一番強くありません。
会場の空気が、一瞬だけ変わった。
歓声の中に、薄い沈黙が混じった。
実況席も、解説席も、マイクの向こうのインタビュアーも、ほんの一拍だけ遅れた。
世界王者になった今でも、ですか?
私は頷いた。
はい。私には、まだ一度も勝てていない師匠がいます。
言った。
言ってしまった。
その瞬間、世界中のネットは私の優勝よりも、その一言に食いついた。
星野ミカに師匠がいる
世界女王が勝てない相手
NoNameとは何者か
ミカ本人の裏アカ説、再燃
いや、NoNameは男らしい
FPS界の都市伝説じゃなかったのか
MMO界にも同じ名前が出ていた
戦略ゲーム勢も反応してる
格ゲー界の黒瀬レナも昔それっぽいことを言っていた
私はホテルの部屋でスマホを見ながら、深くため息をついた。
やっちゃった。
マネージャーの七瀬さんが、隣で頭を抱えている。
ミカ、優勝直後に爆弾落とすのやめてくれる?
すみません。
すみませんで済むなら広報はいらないの。
でも、本当のことです。
そう言うと、七瀬さんは困った顔をした。
その師匠って、本当に実在するの?
実在します。
顔は?
知りません。
本名は?
知りません。
年齢は?
知りません。
所属は?
知りません。
連絡先は?
ディスコードチャットだけです。
七瀬さんは目を閉じた。
それ、実在するって言い切っていい相手?
私は返事に詰まった。
普通に考えれば、怪しい。
怪しすぎる。
顔も知らない。
声も知らない。
名前もない。
大会記録もない。
配信履歴もない。
所属チームもない。
ただ、ディスコードに現れて、私を負かして、短い言葉だけ残して消える。
それだけの相手。
でも。
彼はいる。
それだけは、疑ったことがない。
三年前、古いタクティカルFPSのレイド任務で出会った。
当時の私は、まだプロではなかった。
でも、自分のことを弱いとは思っていなかった。
野良マッチではほとんど負けなかった。
エイム勝負なら勝てた。
索敵もできた。
敵の裏も取れた。
味方を動かすことも、それなりにできた。
だから、少しだけ思っていた。
私はたぶん、強い側の人間なんだと。
その古いタクティカルFPSは、今ではほとんど人が残っていないゲームだった。
ただ、一部の古参だけが異常にやり込んでいた。
敵のAIは癖が強い。
マップは広い。
任務は長い。
一度崩れると立て直しが難しい。
その中でも、レイド任務と呼ばれる高難度クエストがあった。
攻略情報はほとんどない。
途中離脱者が多い。
野良でクリアするのは無理だと言われていた。
私はそこで、NoNameと出会った。
最初は、ただの無口なプレイヤーだと思った。
初期スキン。
称号なし。
クランタグなし。
プロフィール欄も空白。
名前だけが、NoName。
変な名前。
それが第一印象だった。
任務開始から十分で、パーティーは崩壊しかけた。
前衛役が突っ込みすぎて倒れた。
後方の支援役は射線を切れずに落ちた。
索敵担当は敵の増援を見逃した。
チャット欄には、言い訳と苛立ちが並んだ。
私は舌打ちしながら、撤退を提案しようとした。
この人数じゃ無理です。引きますか?
すると、NoNameから返事が来た。
勝てます。
短い一文だった。
私は画面の前で眉をひそめた。
無理です。火力も支援も足りません。
足りないのは火力ではありません。
じゃあ何ですか。
配置です。
その時の私は、少し苛立っていた。
味方が倒れている。
敵は増えている。
弾薬も少ない。
視界も悪い。
状況は最悪。
なのに、配置。
そんな言葉で片づけられるほど簡単な場面じゃない。
そう思った。
でもNoNameは、それ以上説明しなかった。
ただ動いた。
そして、戦場が変わった。
彼は派手な撃ち合いをしなかった。
キル数を稼ぐわけでもない。
目立つスーパープレイもしない。
なのに、気づけば敵の進路が塞がれていた。
私が撃ちやすい角度に敵が流れてきた。
味方のミスが致命傷になる前に、退路が作られていた。
敵が強かったのではない。
戦場の順番が悪かったのだ。
NoNameは、その順番を組み替えていた。
私は撃った。
走った。
隠れた。
また撃った。
彼の置いた場所に入るだけで、なぜか撃ち勝てた。
彼の指示したタイミングで引くだけで、なぜか生き残れた。
彼が短く送ってくるチャットに従うだけで、無理だと思っていた任務が少しずつ崩れていった。
右、二秒待ち。
私は待った。
撃たないで、左へ。
私は撃ちたいのを我慢して左へ動いた。
今。
私は引き金を引いた。
敵の隊長格が倒れた。
それが起点になり、戦場の流れが一気に変わった。
誰も攻略できなかったボスを、彼はただの作業みたいに処理した。
私はその時、初めて思い知った。
自分は強いと思っていた。
でも、強いの基準が低すぎた。
彼は回復役でも、攻撃役でも、指揮官でもなかった。
戦場そのものを読んでいた。
敵の行動。
味方の癖。
私の焦り。
次に起きるミス。
その全部を、最初から計算に入れていた。
ボスを倒したあと、私はしばらく動けなかった。
クリア報酬の画面が出ている。
チャット欄には、残ったメンバーの歓声が流れている。
でも私は、それどころじゃなかった。
震える手でチャットを打った。
あなた、何者ですか。
返ってきた言葉は短かった。
通りすがりです。
強すぎませんか?
あなたは、勝ち方だけを覚えすぎています。
その一言が、私の人生を変えた。
腹が立った。
勝った直後に言うことが、それなのかと思った。
勝ち方だけを覚えすぎている。
それはつまり、私が本当には強くないと言っているのと同じだった。
私は聞いた。
じゃあ、どうすればもっと強くなれますか。
彼は答えた。
負けた理由を、言い訳できない形まで分解してください。
その日から、私は彼に負け続けた。
一対一の撃ち合いで負けたわけじゃない。
いや、撃ち合いでも負けた。
でも、それ以上に負けたのは、戦う前だった。
私が有利ポジションを取ったと思った時には、彼はもう別の射線を作っていた。
私が敵の裏を取ったと思った時には、彼はその裏口に罠を置いていた。
私が味方を助けに行こうとした時には、その判断が三十秒後に部隊を崩すことまで読まれていた。
彼は、私より先に敵を見ていた。
私より先に味方を見ていた。
そして何より、私より先に私を見ていた。
それが悔しかった。
腹が立った。
何度もチャット欄に文句を書きかけた。
でも、そのたびに彼は短く言った。
今の負け方を覚えていますか。
私は言い返せなかった。
負けたことは覚えている。
悔しかったことも覚えている。
惜しかった場面も覚えている。
でも、なぜ負けたのかを、私は説明できなかった。
彼はそこを許さなかった。
負けた理由を、感情でまとめないでください。
悔しい、惜しい、運が悪い。
その三つを使った時点で、次も同じ負け方をします。
最初は嫌いだった。
本当に嫌いだった。
何様だと思った。
顔も知らない。
声も知らない。
大会にも出てこない。
名前すらない。
そんな相手に、私の負け方を淡々と分解される。
屈辱だった。
でも、一つだけ認めざるを得なかった。
彼の言葉通りに直すと、私は強くなった。
一週間で、勝率が変わった。
一ヶ月で、視界が変わった。
三ヶ月で、敵の動きが遅く見えるようになった。
半年後には、国内のトップ層と撃ち合っても怖くなくなった。
一年後、私は初めてプロチームから声をかけられた。
その夜、私は彼に報告した。
プロに誘われました。
返事は、いつも通り短かった。
知っています。
なんで知ってるんですか。
あなたなら、そろそろ誘われます。
私は画面の前で固まった。
嬉しかった。
たぶん、褒められたかった。
でも彼は、次にこう言った。
ただし、今のままなら一年以内に潰れます。
最低だった。
本当に最低だった。
私はキーボードを叩き壊しそうになった。
それでも、聞いてしまった。
どうしてですか。
彼は答えた。
あなたは勝てる場所で勝つのが上手い。
でも、勝てない場所で壊れない方法を知らない。
プロは、そこからです。
その言葉も、私の人生を変えた。
私はプロになった。
勝った。
負けた。
泣いた。
叩かれた。
持ち上げられた。
炎上した。
スポンサーの顔色を見た。
チームメイトとぶつかった。
ファンに励まされた。
知らない誰かに人格まで否定された。
それでも折れなかった。
彼が教えた通り、負けた理由を一つずつ殺した。
エイムで負けたなら、練習量を変えた。
索敵で負けたなら、見る順番を変えた。
判断で負けたなら、判断する前の情報の集め方を変えた。
メンタルで負けたなら、負けても次の一手を選べるようにした。
悔しい。
惜しい。
運が悪い。
その三つを、私は言い訳に使うのをやめた。
そして三年後。
私は世界大会で優勝した。
でも、まだ彼には勝てていない。
だから私は、世界一になった夜に言ってしまった。
私はまだ一番強くありません。
勝てない人がいます。
私の師匠です。
七瀬さんがスマホを見ながら、低く唸った。
ミカ、これ見て。
差し出された画面には、海外のまとめサイトが表示されていた。
NoNameについての考察スレッド。
投稿数は、すでに異常な速度で増えている。
その中に、見覚えのない名前がいくつもあった。
月城ユイ。
MMOレイド攻略と戦略ゲーム界隈で有名なプレイヤーだ。
大規模レイドの世界最速攻略チームを率い、戦略ゲームの国際大会でも優勝経験がある。
盤面の女王。
そんな呼ばれ方をしている。
その月城ユイが、二年前のインタビューでこう言っていたらしい。
私は盤面では負けないと思っていました。
でも、あの人だけは別でした。
その下に、別の切り抜きが貼られていた。
黒瀬レナ。
格闘ゲーム界の女王。
読み合いと間合い管理の化け物。
一対一なら人間じゃないとまで言われている選手。
その黒瀬レナが、昔の配信で笑いながら言っていた。
あいつは人間じゃない。
読み合いをしてるんじゃない。
こっちが読む前の私を読んでる。
私は画面を見つめた。
七瀬さんが眉を寄せる。
ねえ、ミカ。このNoNameって、本当にあなたの師匠だけなの?
私は答えられなかった。
NoNameは、私だけのものだと思っていたわけじゃない。
そんなことを言う権利はない。
でも、彼が他のジャンルの頂点にも触れていた可能性を、深く考えたことはなかった。
FPS/TPSで私を負かした男。
それだけじゃない。
MMOと戦略ゲームで月城ユイを負かしたかもしれない男。
格闘ゲームで黒瀬レナを負かしたかもしれない男。
各ジャンルの女王たちが、別々の場所で、同じ影を見ている。
七瀬さんは小さく息を吐いた。
これ、ただの師匠発言じゃ済まないかもね。
どういう意味ですか。
あなたが世界一になったことで、今までバラバラだった噂が一本につながり始めてる。
私はスマホを握りしめた。
画面の中で、NoNameという名前だけが何度も流れていく。
NoNameは誰だ。
本当に人間なのか。
星野ミカの裏アカなのか。
月城ユイとの関係は。
黒瀬レナも知っているのか。
各ジャンルの王者を育てた存在なのか。
世界王者たちの上にいる、表に出ないプレイヤー。
そんな見出しまであった。
私は苦笑した。
表に出ないプレイヤー。
それは、たぶん正しい。
でも、育てたという言い方は少し違う。
彼は優しく手を引いてくれたわけじゃない。
褒めて伸ばしてくれたわけでもない。
わかりやすく教えてくれたことなんて、一度もない。
ただ、私の負け方を見逃さなかった。
私が目を逸らした場所に、必ず線を引いた。
ここで負けた。
ここで逃げた。
ここで考えるのをやめた。
ここで勝った気になった。
そのたびに私は腹を立てて、泣いて、反発して、それでも直した。
だから強くなった。
七瀬さんが立ち上がった。
とにかく、今日はもう余計な発言禁止。SNSも触らない。明日の公式会見では、師匠の個人情報は知らない、相手に迷惑をかけたくない、この二点でいくから。
わかりました。
本当にわかってる?
わかってます。
じゃあ、ディスコードも今日は駄目。
私は目を逸らした。
七瀬さんの目が細くなる。
ミカ?
……少しだけ。
駄目。
優勝報告だけです。
絶対に対戦しない?
私は黙った。
七瀬さんは頭を抱えた。
世界王者、なんでそこだけ子供なの。
だって。
だって、報告したかった。
優勝した。
やっとここまで来た。
あなたに言われたことを、全部じゃないけど、少しはできるようになった。
そう伝えたかった。
それに。
たぶん彼は、私の試合を見ている。
そんな気がした。
七瀬さんが諦めたようにため息をついた。
五分だけ。対戦はなし。変なこと言わない。スクショを撮られても困らない内容だけ。
はい。
私はノートPCを開いた。
ホテルのWi-Fiは少し不安定だった。
それでも、ディスコードはすぐに立ち上がった。
フレンド欄を開く。
心臓が跳ねた。
NoNameはオンラインだった。
三年前から変わらない名前。
変わらないアイコン。
変わらない空白のプロフィール。
私は数分、画面の前で止まった。
言葉が出てこない。
優勝しました。
それだけでいいのか。
あなたのおかげです。
それは少し違う。
私はあなたに勝てていません。
それは正しい。
でも、悔しい。
結局、私は一番短い言葉を選んだ。
優勝しました。
送信。
すぐに既読がついた。
息が止まる。
一秒。
二秒。
三秒。
世界大会の最終ラウンドより長く感じた。
そして、返事が来た。
見ていました。
私は唇を噛んだ。
ありがとうございます。
少し間があった。
次の返事は、いつも通り淡々としていた。
最後の判断、甘かったです。
私は椅子から落ちそうになった。
世界大会優勝したんですけど。
相手が焦らなければ負けていました。
わかってます。
では、なぜ自分は一番強くないと言いましたか。
指が止まった。
七瀬さんが横から画面を覗いている。
でも、私は気にしなかった。
この質問にだけは、ちゃんと答えたかった。
私はゆっくり打った。
あなたに勝っていないからです。
送信。
返事はすぐに来なかった。
珍しい。
NoNameが迷っている。
それだけで、少しだけ勝った気がした。
けれど次の一文で、その小さな勝利は粉々になった。
では、次は勝ってください。
その下に、ルームコードが貼られていた。
七瀬さんが叫んだ。
対戦しないって言ったよね?
私は画面を見たまま答えた。
言いました。
じゃあ閉じて。
でも、師匠が次は勝てって。
ミカ。
五分だけ。
絶対五分で終わらないやつ。
一戦だけです。
一戦で終われる顔してない。
私は返事をせず、ルームコードを入力した。
七瀬さんが背後で何か言っている。
でももう聞こえない。
ルームに入る。
そこには、見慣れた名前が一つだけあった。
NoName。
初期スキン。
称号なし。
装飾なし。
ランキング表示なし。
でも私は知っている。
画面の向こうにいるのは、世界中の誰よりも怖い相手だ。
私の師匠。
私の壁。
いつか必ず越えたい人。
私はディスコードにメッセージを打った。
今日こそ勝ちます。
返事はすぐに来た。
その考え方では、今日も負けます。
腹が立つ。
でも、嬉しかった。
これだ。
世界大会決勝より、今の方が緊張している。
試合開始のカウントが進む。
三。
二。
一。
開始。
私は最初から全力で動いた。
大会なら温存する集中力まで、全部使った。
見える情報を拾い、見えない情報を予測し、射線をずらし、音を消し、相手の呼吸を読む。
今の私は、三年前の私じゃない。
世界一になった星野ミカだ。
そう思った。
三十秒後。
私は、あっさり負けた。
画面に敗北の文字が出た。
ディスコードに通知が来る。
世界一、おめでとうございます。
その次に、もう一文。
では、二戦目です。
私は唇を噛んだ。
悔しい。
嬉しい。
情けない。
でも、最高に楽しい。
私はキーボードを叩いた。
お願いします、師匠。
その夜、世界女王になった私は、正体不明の男に二十七連敗した。
そして翌朝。
世界は新しい噂で騒ぎ始めた。
星野ミカの師匠、実在か。
NoName、再浮上。
世界女王が勝てない男。
月城ユイ、黒瀬レナとの関連も調査へ。
人類最強プレイヤーは、まだ大会に出ていない。
私はその記事を見て、小さく笑った。
そう。
私は世界一になった。
でも、本当の物語はそこから始まった。
最後までお付き合いいただき感謝します。
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