コスプレも楽じゃない6
マンションに戻った3人は、それぞれの場所へ散った。
美穂と高木は事務所へ、由香は最上階の自室へ。 事務所のドアを閉めた瞬間、美穂はスマホを取り出し、仁に電話をかけた。
「仁さん、イベント無事に終わりました。異常はありませんでした。囲み撮影も健全なファンばかりで、いやらしい写真や変な接触は一切なしです。由香ちゃんも楽しんでましたよ。」
仁の声は安堵に満ちていた。
「ありがとう、美穂さん……高木くんにも伝えておいてくれ。本当に、心配で気が気じゃなかったんだ。
また何かあったら、すぐに連絡するよ。」
電話を切った美穂は、いつもの私服に戻りながら小さく笑った。
高木はすでにコーヒーを淹れていて、二つのマグカップをテーブルに置く。
「健一、乾杯だ。今日の警護、無事に終了!」
健一はカップを手に取り、軽くぶつけた。
「終わったな……由香ちゃんの笑顔が守れただけで、十分だ。」
二人は静かにコーヒーを飲み干した。
事務所に穏やかな疲労感が広がる。
これで、今日の任務は本当に終わった。
翌週の水曜日、事務所のチャイムが鳴り、宅配便が届いた。
またしても大きなダンボール箱。
送り主はもちろん片桐仁。健一と高木は顔を見合わせた。
「仁さんからの荷物なら……危険はないだろう。」
高木がカッターでテープを切り、蓋を開ける。
二人は同時に絶句した。中には、プロ仕様の本格的なコスプレ衣装が3着。
セーラームーン、セーラービーナス、タキシード仮面。
衣装のクオリティは前回のプリキュア以上に高く、ウィッグ、ブーツ、アクセサリーまで完璧に揃っている。
箱の底には仁からのメモ。
『由香が喜ぶなら、ぜひ次もお願いします』
健一は蓋をそっと閉め、
「……悪夢だと思いたい」
高木も無言で頷く。
二人はしばらく沈黙した後、健一が直通内線を手に取った。
「由香ちゃん、今事務所に来れる?また……仁さんから妙な物が届いてるんだけど。」
2分後、由香がドアを勢いよく開けて飛び込んできた。
満面の笑みで、「美穂さん! 高木さん!見た!? セーラームーンだよ!次回はセーラームーンのコスプレやろ!美穂さんがセーラービーナスで、高木さんがタキシード仮面で、私がセーラームーン!やったー!!」
由香は箱を開けて衣装を抱きしめ、子供のようにはしゃいで回る。
「これで3人で変身ポーズ!絶対可愛いよ! 美穂さんの金髪ロング、似合う似合う!高木さんはタキシード仮面で超カッコイイ!早く着てみよ!」
健一と高木は同時にがっくりと肩を落とした。健一は天井を見上げて呟く。
「……仁さん、過保護を通り越して……完全に趣味が暴走してる。」
高木はソファに崩れ落ち、
「僕、タキシード仮面……マントと仮面で……もう、限界だ……」
由香は二人の反応などお構いなしに、
「次回のイベント、絶対行くよね!美穂さん、高木さん、約束だよ!」
事務所に、由香の笑い声だけが響いた。
仁の過保護と由香の無邪気さが、また新しい「任務」を生み出そうとしていた。
健一は青いリボンをクローゼットから取り出し、小さくため息をついた。
「……また、美穂の出番か…」
高木は諦めたように天井を見上げ、
「僕の人生……どこで間違ったんだろう…」
由香は衣装を抱きしめて、
「楽しみ~!!」
こうして、Guardeanの日常は、仁の過保護と由香の笑顔に振り回されながら、今日も続いていく。




