ステージの裏側2
二次審査当日。
都内のスタジオビルは、外見こそ清潔だが、中はどこか淀んだ空気が漂っていた。
オーディション参加者は全員、事前連絡で「短いスカートでの参加が義務付けられている」と知らされていた。
理由は「アイドルのステージ映えを考慮して」らしいが、美穂(健一)は眉をひそめた。
「…意味わかんねえな」
美穂は控室の隅で、膝上20cmほどのプリーツミニスカートを指で軽く押さえながら座っていた。
トップスは白のフィット感のあるブラウス、髪はロングのストレートに青いリボンをアクセントに。
148cmの小柄な体型が、逆に「守ってあげたくなる」可愛さを増幅させている。
でも、心の中は探偵モード全開だ。審査は二部構成。
まず自己アピール(歌とダンスの30秒PR)。
次に「体力審査」と称して、反復横跳び10往復。
美穂は審査員席の奥で、カメラマンが三脚を立てて撮影しているのを確認した。
普通のカメラではない。
ズームレンズが、明らかに参加者の胸元とスカートの下を狙っている。
隠し撮り用の小型カメラも、審査員テーブルの下に仕込まれているのが見えた。
「…これがヤラセの本質か。」
反復横跳びが始まると、参加者たちは順番にラインの上で跳び始めた。
スカートがひらりと舞い、胸が上下に揺れる。
審査員たちは「表情」「リズム」「持久力」とメモを取るふりをしながら、
実際はカメラのモニターを凝視。
美穂の番が来た。深呼吸して、ラインに立つ。
スタートの合図で、素早く左右に跳ぶ。
148cmの体は軽やかで、動きは正確。
スカートは確かにめくれ上がるが、美穂は事前にスパッツを着用していた。
胸の揺れも最小限に抑えるよう、ブラウスをきつく締め、パッドを調整済み。
10往復を終え、息を整えながら審査員席を見やる。
カメラマンが満足げに頷いている。
自己アピールも無難にこなした。
可愛らしい笑顔で歌い、軽やかなステップを踏む。
審査員の一人が、メモに「可愛い」「守ってあげたい系」と書いているのが、遠目に見えた。
審査終了後、全員が控室に戻る。
モニターに合格者の番号が映し出されるのを、息を潜めて待つ。
不合格者は肩を落として帰っていく。
泣く子、ため息をつく子、悔しさを噛みしめる子。
美穂は壁に寄りかかり、静かに見守っていた。
やがて、モニターに数字が並ぶ。合格者リストの中に、美穂の番号があった。
周囲から歓声が上がる。
合格した子たちは抱き合って喜び、
「やったー!」「夢が近づいた!」と叫ぶ。
美穂は小さく微笑んだふりをして、心の中で呟いた。「…合格したか。
これで、裏側に潜入できる」控室の隅で、合格者の一人に声をかけられた。
「美穂ちゃん、すごい可愛かったよ! 一緒に頑張ろうね!」美穂はにっこり笑って頷く。
「うん、一緒にアイドルになろうね」でも、目は冷たい。
審査員たちの隠しカメラ、ヤラセの証拠、体力審査の意味不明な内容。
すべてが繋がり始めていた。スマホをポケットで操作し、高木に短いLINEを送る。
「合格。次は最終審査。カメラの位置と録画データを確保しろ。これ、闇が深いぞ。」
スタジオの廊下を歩きながら、美穂は青いリボンを軽く指で撫でた。
可愛い顔の裏で、探偵の目が静かに燃えていた。このオーディションの「本当の合格基準」は、ステージの上ではなく、
隠しカメラのレンズの先にあったのだ。




