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裸の王様【前編】

ある国に二人組の詐欺師がやって来る。彼らは在る変わった秘策を思いついてそれを試してみようと思い立ったのだ。それは特にお金が掛かる訳じゃあ無い。但し、少しの手間とやる気と行動力が必要だった。


その思いつきだって人が聞いたら一笑に付してしまうぐらいの、それは見事な程の下らない思いつきに過ぎなかったのである。けれども思いついた者にとってはとても名案に思える事だって世の中には吐いて捨てる程、在る。


たいていの場合、他人が思いつかない様なアイデアを思いつく事その物が重要なのであって、その事が万人にとって共通の素晴らしい閃きで無くてもそれは良いのである。


逆に万人が聞いて、素晴らしいと褒めそやされる出来事よりも、彼らの様な詐欺を生業(なりわい)とする者にとっては、実に下らないと取り合って貰えないくらいの馬鹿馬鹿しい閃きの方が、却って詐欺師達にとっては都合が良かったのであろう。


それにそんな誠につまらない閃きから、世の中の役に立つ道具が発明された事だって沢山事例があるのだ。但しこの場合は、彼ら以外に得する者は無いので在ろうが…。


それは『その地位に相応しく無い者や馬鹿には見えない衣装を織り、提供する仕立て屋』と言う触れ込みから始まった。いったい全体、そんな事を信ずる者が居るのかどうか…全てはそこにこそ肝が在ったのである。


彼らに取っては、正に一世一代の賭けで在ったのだ。果たして彼らの思惑は見事に実るので在ろうか?それがこの物語の始まりであった。


『そんな馬鹿な事が在るものか…?』


始めはそんな事を皆が感じていたのだろうが、もし仮に誰かが、『あぁ…それは本当らしいぞ!俺はそんな事が度々在った事を知っているぞ!』と認めたとしよう♪


それが始めは巷に居るごく存在の薄い人の言葉だったとしても、噂が噂を呼んで、権威のある…或いは影響力の在る人が信じたとすれば、如何だろうか?皆、それが実に下らない事であっても、信じずには要られなくなるのではないか?


そこが詐欺師達の味噌であり、付け入る隙で在ったのだと言えるのかも知れない。




現代においても、そんな出来事が実際に在ったのでそれをこの機会に紹介しておこうと思う。


それは我が国の高校で起きた事件である。就職の決まった女子高生がとある信用金庫に就職が決まった。ところがその友達の女子高生がこう言ったのだ。


『あの信用金庫危ないらしいわよ!貴方もせっかく就職が決まったのに前途多難ね♪』


それは就職の決まった女子に対する嫉妬から、ついつい言ってしまった嘘だったのだが、これが同級生の母親の耳に入り、巡り巡って街中の噂となって広がり、最後は信用金庫の窓口に大勢の街の人々が殺到した換金騒ぎに発展するのだ。


このように些細な軽はずみな行為が大きな騒ぎを引き起こす事になる事もあるのだ。


人には嫉妬や羨みなどにより、想いもよらない行動をする瞬間が存在する。そして一度表面化した物が、本人の意志とは無関係にひとり歩きを始める事がある。


けして貴方も私も例外ではないのだ。自分が知らない所で、起こしたうねりが潮流となって、どんどん成長して大きな惨事となる事もある。お互いに気をつけたいものである。


人に対して有益なうねりは大歓迎であるが…。




さて、詐欺師達が巻いた噂も大きなうねりと為った様である。なぜなら、その国の王様の耳に入り、彼らが王宮に招かれたからだった。詐欺師達の作戦はこうしてその端緒に漕ぎ着けたのである。




「君は人の気持に流されたりする事は無さそうだな…」


私がそう言うと、彼はピンときたといった表情をする。


「はは~ん…ケイちゃんまた何かあったんだね?君ほど判りやすい人もなかなか居ないだろう!いったいどうしたんだい?言ってみたまえ♪」


蒼生はお気に入りの窓辺にもたれ掛かって、風を受けるのが好きである。彼の部屋にお邪魔した時には、大抵の場合はその場所に佇んでいる事が多い。そして時として、彼はコーヒーを飲むか、ココアを口にしている事が多かった。


勿論の事、私は彼が乗って来てくれる事を少なからず期待して、粉を撒いたのだから渡りに船であった。それでも余りにも彼の言葉に直ぐ反応すると、がっついている様でみっともないので、おもむろに立ち上がると、「ココアを頂くね?」と言った。


彼は苦笑いしながら、「ど~ぞ♪」と答える。どうも良くない…彼には私の考えている事ぐらいお見通しの様であった。それでも私は言葉に出した以上はココアに手を掛けざるを得ない。私にもささやかなプライドは在るのだ。


…という依りは最早、意地と言うべきかも知れない。ど~せこれから相談したら最後、彼の独壇場に成る事は想像に頑ない。私もここらで自己主張を通しておきたい。


何て心の狭い男かと想われるだろうが、それはあなた方に彼という友人が居ないからだ。一度でも彼を友人に持った者ならば、理解して頂ける気がする。それは彼という友人を持った同士だからだ。


まぁ彼に独壇場を許している私が悪いっちゃあ、確かにそうなのだが、どうも彼は憎めない奴なので、ついつい気持ちを(ほだ)されて仕舞う様なのだ。元々嫌いなら友達には成らないんだし。


それに、ココアは気持ちを落ち着かせるのに良いのだから、一石二鳥なのだった。


彼は私の行動が一向に気にならないらしく、窓辺で心地好い風を受けながら、相変わらずのんびりしている。こちらをチラチラと気にするかと想えば、全くと言って良い程の無関心さであった。


それでも私がココアを容れて、ひとくちグビッと飲んだ頃合いには、こちらをクルッと振り向き、「気持ちは落ち着いたかい?」と聞いた。


『(^。^;)何だ…またぞろ手の内が読まれたかな?』


私はそう想わないでも無かったが、事ここに至っては仕方ない。潔く言葉に出す事にした。


「実はこの前、童話事情を語る会なる物が開催されたんだ!」


「へぇ~そんな会合があるなんてね♪面白い企画なんだな♪」


「君もそう想うかい?僕も不思議だったが、滅多に無い機会だし、同じ童話作家を担う者として、同じ道を志す者たちと交流を温める機会に為ればと想って参加したんだが…」


「その歯切れの悪さから察すると、何か在ったんだね!異端だとでも言われたかな?」


「…何で判ったんだい?まぁ少しニュアンスは違うが仰せの通りだよ!僕はある作家先生から、君のは純粋な童話では無いと頭ごなしに叩かれたんだ!」


「そうか…でも気にするな!君の童話は面白いよ♪その筆力も見事に尽きる。まぁ罵倒の対象は君では無くて、この僕に在るのだろう♪君は気にする必要性は全くと言って無いね!」


「それがね…相手が悪かった!童話作家協会の副理事でね!皆、集まりの冒頭では僕の作品を読んで面白いと言ってくれた人が思いの外多くてね、嬉しかったんだが、その理事の発言でその後には僕は針の(むしろ)さ!」


「それは災難だったな…でどうしたんだい?」


「ひとりまたひとりと副理事派の人が発言し出すと、"確かにその通り!"と言った具合になって、僕はもう会の最後まで、黙って(うつむ)いたままだと思っていた…」


「…そしたらひとりの女性が突然立ち上がると、"何て酷い会合かしら、あなた方は子供たちに顔向け出来ますかしら?"と発言して、僕の手を取ると、とっとと会議場を抜け出してしまったんだ!」


この展開にはさすがの蒼生も目を見張ってたまげている。


「へぇ~観る眼がある人も居るんだな!でどうなったんだい?」


彼は俄然興味在り気に身を乗り出していた。


私はその続きを感情の赴くままに語り出していた。まるでそれは、あの日の感情が甦ってさせた様であった。




私は廊下まで連れ出されると、「ちょっと待ってくれ!」と言った。


すると、彼女は「あんな人たち気にする事無いわよ♪貴方の童話は面白いわ!自信を持って!ね?」と励ましてくれた。そして「帰りましょ♪」と言って一緒に途中まで帰って来たんだ。




私がそこまで話すと、蒼生は突っ込みをいれて来た。


「(^。^;)ちょっと待ってくれ!…まさか君、その後彼女を誘わなかったのかい?お茶飲むとか食事するとか?」


「(〃´o`)=3 にゃんで?駅の改札でそのまま別れたけど?」


「ε- (´ー`*)ハハハ…そんな時にはさすがの僕でも気を使うけどね!君が未だに女っ気が無いのが判る気がするな?」


「( ;゜皿゜)ノシ にゃんだと!私も君には言われたく無いわい!」


「(*゜ー゜)ププッ…で名前くらいは聞いたんだろ?」


「(´_`。)゛まぁね…つ~か向こうから名乗ったよ!私は山中静香って言うの、宜しく♪…てね!」


「(*゜ー゜)フッ…で!電話番号は?」


「( `Д´)/何かその言葉は(トゲ)があるな…あ!そう言えば名刺をくれたよ!だから私のも渡して置いたかな?これさ♪」


名刺には【メルヘン童話作家 山中静香】と書いてあり、電話番号が書いてある。但し、『0555ー✕✕ー✕✕✕✕』なので、都内近郊では無い。蒼生は一瞥(いちべつ)すると興味無さげに直ぐに寄越した。


「まぁ…気をつけたまえ!赤い薔薇には(トゲ)が在るって言うからね!で…そもそも君は僕に何を相談したかったんだい?」


蒼生はそう言うと少し白けた様にほくそ笑んでいる。私はカッと頭に血が登ってしまった。


「ま、まさか君は僕がこの女性の事で自慢しよう等と下劣な事を考えているのでは在るまいな!」


私は焦りと照れで躍起に為っていた。


「(^。^;)おいおい、それは突飛な想像だぞ!どうしたらそう話が飛躍するのか僕には理解出来ないね?そんな気は全く無い!悪いが僕は君の下事情には興味が無い!おっとこれは言い過ぎたな、スマン♪」


「(´_`。)゛ならいいよ…信じる。僕が言いたかったのは、彼女以外の人達がどうして急に手の平を返したかって事さ!無論、初対面なんだ!仕方ない事だとは思ってるんだけども…」


「う~ん…そうだな。恐らくそれは同調心理って奴だろうな?社会心理学では、多元的無知とか集団的無知とか言う奴だろうね…たぶん♪」


彼は余り自信が無い様だが、そう述べた。


「ヽ(´・ω・`*)何だい?それ!」


私は初めて聞く言葉だったので想わず聞き返す。


「(-∀-`;)あぁ…僕も余り得意な分野では無いけど、この前童話の考察をしている時に、"裸の王様"に行き当たったんだ!その時、少々調べたくらいかな?」


「(´_`。)゛へぇ~その童話なら有名じゃないか?私も偶然だけど、そろそろ手掛けようと思っていた題材だから、興味は在るよ♪で、何なんだい?」


「あぁそうだね…簡単に言うとだな!多数が良いと主張するものを誰も否定出来ずに、その結果、集団として誤った方向に行動してしまう現象の事さ!同調圧力とも言う…」


「…例えば、この御時世で流行りの空気を読むなんて言葉を君も聞いた事が在るだろうね?暗黙の了解とか大人の対応とか、ごく最近では忖度(そんたく)等と言って、誠しやかに有り難がられているアレさ!」


「(´_`。)゛あぁ…それなら私も聞いた事が在るよ♪余り好きじゃあ無いけどね!何か自分の意見が無いみたいで私は嫌いかな?」


「( ・∀・)へぇ~今日は気が合うな♪実際、僕も好きじゃあ無いんだ!但し、その全てを否定してる訳じゃあ無い!別に自分のどうでもいい事に対して目くじら立てる事も無いからね…」


「…けれども自分の信念に反する事には断固反対する姿勢を持って居ないと、これは危険な事だ。忖度とは、安全で円滑な人間関係の作法だと言われている。要は協調性って事を言いたいんだろうが…」


「…それが時には大事だという事には僕も賛成なんだ!でもその境目、つまり境界線を自分の心の中で引き間違えると、これは厄介な事だよ!何しろ相手に(おもね)ったり、その他大勢の意見に流されてしまう危険性がある…」


「…多数決は民主的だとか、色々な言い訳は(まか)り通ってしまっている世の中だけども、自分の信ずる道を踏み外してしまう事に為りかねないからさ!信念とは文字通り、自分が正しいと固く信ずる心だ…」


「…それを曲げてしまって、これからどう生きて行くのさ!そこを曖昧に、玉虫色にしてしまったら最後、人は牙を抜かれた(しかばね)と化す。それで人生面白く生きられるとは僕にはとても想えんよ…」


「…だって玉虫色って色々な見方が在るね♪…と言って真実から目を背ける事だ!そんな事を安易に覚えてしまったら、何も言えない人に為ってしまうし、回りの都合に流され易い人に為ってしまうよ♪君はそう思わないかい?」


「(´_`。)゛確かに…君の言いたい事には私も賛成だね♪詰まる所、だから我々には友人が少ないし、恋人が出来ないのかもな!」


「(*゜ー゜)ププッ…だから何だ!僕は信念を曲げるくらいなら、それでも良いよ♪でも多分、僕にもケイちゃんにもきっと理解者は居ると想うな♪僕はそう信じて生きている。そうだ!丁度、裸の王様の話が出て来たから、それを少し掘り下げてみよう♪」


「(。-∀-)へぇ~いいね♪聞きたいな?」


私はその考察を期待しながら、いつの間にか満面の笑みを浮かべていた。

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