総合演習
『ああ、血が沸りますわっ!!』
りりぃと書かれた体育着をバインバイン言わせながら瓦礫の山を歩くリリー。
さっさっさ!
チュー。
『ひゃうっ!ね、ねずみ!?』
眼帯の美少女は猫背になりながらあたりを伺うようにして歩く。
『この辺は安全なんだろ?加藤。』
『そ、そうだ。安全、安全安全安全安全安全、、』
念仏を唱えるが如く、言い聞かせるようにぶつぶつ呟く加藤。
俺らは、1人1丁ライフルをもたせてもらっている。
リリーは背筋をピンと伸ばしてライフルを脇に抱えている。
加藤は猫背になりながら、引き金に指をかけてあたりをキョロキョロ伺うようにしている。
食えない奴だ。
俺もこれまでの経験をもとにライフルを持っている。
3人1組での索敵を行うのが総合演習だ。
索敵といってもこの辺りは全く敵はいないので訓練のようなものである。
『後1時間くらいかな?総合演習。だるいなあ。』
『後、1時間!?聞いてないですわよ!?』
『説明あっただろ・・・・。』
加藤がビクビク震えながらリリーに突っ込む。
俺は特に何も言わない。
『昼は何すっかなあ?』
『あら、そろそろメンテナンスの時期でなくて?』
『あ、うん。そーだなあ。加藤は昼どうすんの?』
『スパイはいかなるときもスパイだ。』
予想はできた答えだ。
昼は寝るか起きてるかどっちか。
つまらない学校生活だ。
『そーだ、ドッチボールやろうぜ。』
『なんですの?ドッチボールって。』
リリーが首を傾げる。
『知らねえのかあ。小学校のときやらなかったか?』
『はあ、、、小学校・・・・。小学校ってなんですの?』
リリーは目を閉じてこめかみに指を当てる。
リリーは忘れっぽいのだ。
『まあ、リリーはお嬢様だからな。加藤は・・・・いいやどうせスパイはそんなものやらん!みたいな回答されるだけだから。』
『タケル、貴様エスパーか!なぜ、私の考えがわかった!!』
加藤は銃を構える。
物騒な女だ。
銃を構えながらも青白い顔をしている。
『いやいや、加藤。冗談はおもちゃだけにしてくれよ。』
万歳して降参の意思を表す。
さてそうこうしているとチャイムが頭の中に鳴り響く。
『昼だな。』
『昼ですわ。』
『スパイに昼はない。』
それぞれ呟くように言いながら校舎へ戻っていく。
さて退屈な昼休みの始まりだ。