ガラクタの美少女
着替えを終えて昼休みになる。
結構な日差しだったが俺らが汗をかくことはない。
教室に戻る。
クラスは静まり返っている。
クラスメイトのほとんどは昼寝をしている。
『わっと。』
無数に床に敷かれたコードに躓きそうになる。
『むにゃ、むにゃ聞いてないですわよ、、』
リリーは机に伏せている。
胸のあたりが邪魔していて寝苦しそうだ。
『よし、リリー、おじちゃんが今解放してやるぞ。』
リリーに近づき、胸元のリボンを外そうとする。
『むにゃむにゃ、触るなんて聞いてないですわよ。』
『あがっ!』
裏拳が俺の顔面にヒットした。
こいつもスパイかなんかじゃないかとたまに感じる昼下がり。
俺は顔を抑えながらあたりを見渡す。
『やはり、天野はいないか。』
天野のことだ。
あそこにいるのだろう。
視聴覚室。
いまいち何をやるかわからないこの部屋は、
物置となっていた。
『まあ、俺らには不要だよな。』
扉を開ける。
ガラクタの山だ。
ネジやパソコン、電子機器がほとんどだ。
『おいしょっと。』
ガラクタをどかしながら部屋の奥にすすむ。
『視聴覚準備室』
そう書かれた部屋が見える。
扉を開けると薄暗い部屋に、ベレー帽をかぶって黒髪の美少女が座っている。
『よう、天野。』
『こんにちは、私の名前は天野です。』
『知っているよ。』
近くにある丸椅子に腰掛ける。
天野は椅子に座り、キャンバスに視線を移した。
『今日は何を書いているんだ?』
キャンバスを覗きこむ。
『秋葉原です。』
『ああ確かにこれは秋葉原だな。』
有数の電気街。
かつてそう呼ばれた街の最盛期の風景だ。
山手線が走っていて、これはいつのアニメだろうか。懐かしい。
涙が出る。
いや、涙が出るような気持ちだ。
『この頃には戻れないのかな。』
『この頃とは?』
『ああなんでもない。』
天野にとってはデータでしか知らない秋葉原。
それを模写しているだけなのだ。
『天野、大変だな。』
こんなガラクタの中で天野はずっと絵を描いている。1人ぼっちだ。だから、俺はいつも天野と昼休みはこうやって過ごしている。
『いえ、私なんて。』
『やめろよ。』
『私なんてーーーー』
聞きたくない。
『私なんてただのガラクタですから。』




