第7節:一狩り行こうぜ!PART2
バーンボアのウリ坊が悲しそうな声で鳴いているがおそらく、本件の狩りでこのウリ坊の親を狩られてしまったのだろう、と仕事とはいえ申し訳なくなってしまったのだが・・・。
木の枝の上に一人の鎧を着た男が降り立っているところだった。
鎧の背中には飛行機のような翼がくっついている。
降り立ち方から高度な飛行能力を有しているのだろう。
「弱い獣ほどピーピーと鳴く、うるさいな!」
いきなり鎧男がランスを持って、ウリ坊に向かって飛び降りてきて来た。
俺は、とっさにその鎧男に氷属性ビームを砲門から浴びせた。
鎧男は部分的に氷漬けになったからなのか、うまく飛行できずに落下する。
「ぐ、何故だ・・・・・!?こいつはバーンボアだぞ・・・・・」
「俺たちの狩りのクエストは完了したんだ。無駄な殺生は厳禁のはずだ!討伐対象の魔物といえど、子供を根絶やしにする気か?」
俺は若干の怒りを込めて鎧男に言った。
「ケイザルか?一足遅かったのう!」
「チッ、狩りの時間だと思ってきてみたらこのざまだ・・・・・!」
この男の名前はケイザルらしい。
顔はヘルメットを被っており見えない。
「遅刻なら遅刻と言えばよかろうに、貴様が相変わらずの血の気なのは知っておるがの」
見かけ上怠けていただけの少女が言い放つ。
「こっちは仕事を掛け持ちの上で来てやったんだ・・・・・しかも、崇高なるグラード家の名を知っての無礼か?そこの新人!」
いや、別に知らんがな。
そんなに有名なのこいつの家系って。
「いや、急にグラード家と言われましても・・・・・、何せこの世界に来てまだ日も浅いですし」
「貴様、異世界人か?」
「ああ、そうだ、マコト・カミヤという名だ」
「おい!ケイザル!剣を納めよ!ここでのリーダーはわしじゃ」
ケイザルは氷が溶けかけた体で渋々な態度で剣を納める。
「あんまり、ボクを怒らせるなよ?新入り。今回は大賢者様に免じて剣を引いたが、今度ボクの狩りを邪魔したらただではすませないぞ」
ケイザルはよろよろながら再び飛び立ってこの場を去った。
うわぁ、面倒臭ぇ。
平穏が一番なのに・・・・・。
とりあえず、そんなことは置いといて、飛行能力ねぇ・・・・・、そのうちアーマーの機能に追加でもしておくかな?
「我の出番は少なかったなぁ、もっと我Tueeeしたかったのに・・・」
「ご、ごめん。俺も試したいことがあったから・・・」
クロミはしゅんとなって涙目になりながら俺に訴えた。
俺Tueeeな。
今度のクエストでは主役譲ってやるよ。
「プゴ、プゴ」
森を去ろうとする俺たちの後ろを先ほどのウリ坊が追っかけてきていた。
「マコトよ、さっきからこのバーンボアのウリ坊、お主を見つめているぞ。一応お主が助けたのじゃからな」
親を失って、身寄りがない状態だからここは俺たちが育てて、大きくなったら野生に返すべきなのだろう。
「わかった、しばらくこのビーストカプセルにでも入ってもらおう、それっ」
俺は、ビーストカプセルをバーンボアのウリ坊に投げて収納した。
バーンボア、ゲットだぜ!?
「おお!そんなアイテムもあったのう。でも、お主には魔物になつかれる素質があるように感じる。このカプセルはお主が使うのが一番じゃな。わしは結構持て余していたのじゃがな」
大賢者様でも魔物の扱いはあまり得意ではない様だ。
「ところでお主、運操作の原理というものをご損じかな?後で、ちょっとした特訓のメニューを教えるから、よろしくなのじゃ」
「了解した、大賢者様」
森からの撤退準備で、ギルドメンバーは全員馬車に乗っている。
御者は俺で、馬はいない。
代わりに、ミノタウロス型のゴーレムに馬車を引いてもらっている。
よってこのゴーレムの操作は俺なので、御者は俺ということになる。
このゴーレムは4足歩行ということで結構パワフルなので、牽引作業を行うときにはもってこいなのである。
ミノタウロス型なので人型のゴーレムの上半身に馬型の脚が備わっている。
「じゃ、町に向けて出発!」
パカパカと足音を響かせながら馬車が動き出した。