エンディング「眼帯少女」
「いやー、泣けましたねー」
とヤコが晴れやかな顔でそう言った。
ナチノも頷き、それに同意する。
上映中は涙が零れ落ちそうだったが、終わってみれば一陣の風が吹き抜けていったような清々しさがあった。
映画館を出た二人は、どこへともなく道を歩く。
より深みを増した空の下で、辺りは腹を空かせた人波に溢れている。
「お夕飯はどうします?」
二人もその一部だった。
「そうねぇ……」
ナチノは手ごろなお店はないかと、キョロキョロと周囲を見回す。
その眼の端に一組のカップルを捉えた。
大通りの向かい側だ。
普段なら気にも留めなかっただろう。
ならば引力とでも呼ぶべき力が働いたに違いない。
(あれは……)
仲睦まじく歩く男女の姿に、ナチノは望郷の念を抱く。
男の方はトオルで、女の方はケイコだった。
通りを挟んでいる為に、二人はかつての旧友に気付かない。
「どうかしました?」
ひょいっ、とヤコの顔が視界に現れて、ナチノはハッとした。
「あ、いえ、なんでもないわ。行きましょう」
きょとんとした顔の相方を置いて、ナチノはすたすたと歩き始める。
その方向は、あの二人が歩いて行った方向とは真逆だ。
よもや出会うことはないだろうが、できることなら離れたかったのだ。
(ケイコ……どうして……?)
脳裏には先ほどのケイコの姿が焼き付いて剥がれない。
──彼女はどうして“眼帯”を着けていたのだろう。
(ただのファッションならばいいけれど……)
しかし、あの日見た彼女の目は、如実に物語っていた。
『トオルは、誰にも渡さない。絶対に』
そして、トオルは決してナチノのことが好きだったわけではないのだ。
ナチノを欲していたわけではないのだ。
「あの……本当にどうしたんです?」
追いついたヤコの目を見て、ささくれ立った心は平静を取り戻していった。
ナチノは静かに首を横に振って
「なんでもないわ」
そう答えた。
全ては過ぎたことなのだから。
それに二人は本当に幸せそうで。
-とっぴんぱらりのぷう-
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