第12話 『だって今のお前には俺がいるからな!』
※11話後半の流れを大幅に修正いたしましたm(_ _)m
そんなこんなで、思ったより話がはずんだ蘆屋との昼食会。
途中からはこいつの弟の名前を聞き出すために、お互いの弟妹の話を延々としてたんだけどな。
ゲームでは俺様系イケイケ男だった玄真の愚痴というか駄目な子エピソードがかなり面白かったが、姉弟仲自体は良好とのことで。
てかこいつの弟! やっぱり玄真だったよ!
モヤモヤもこれでスッキリ、今日は良い夢が見られそう――
「違う、そうじゃない」
「うん? どうしたいきなり?」
……お互いの弟妹のこととか今はどうでもいいんだよ!
蘆屋に聞きたいというか確認しておきゃなきゃならないこと。
それは、これからの異界に対する『彼女の方針』。
はたして蘆屋は黄龍学園内に存在する『境界門』。複数の異界と繋がっている特殊なダンジョンを攻略するつもりはあるのか?
そして彼女が異界の攻略を続けるとして、魔神王まで倒すつもりがあるのか――いや、これも違うな。
今はまだ一学年の一学期が始まったばかり。
魔神王の存在どころか、魔人との接触すら起こっていないのだ。
「というより、魔人とのファーストコンタクトが俺が死んじゃう負けイベントだから、それ自体発生させる気がないんだよな」
「……うん? ハッキリと聞き取れなかったのだがどうかしたか? 私に何か聞きたいことがあるのなら答えてやらなくもないぞ?」
小さく漏らしてしまった俺の独り言に蘆屋が反応する。
「ああ、ゴメンゴメン。ちょっとこれからのことを考えてたんだけど……話の前提がこんがらがっちゃっててさ」
「なるほど。貴様の言ってることがさっぱりわからん」
「そりゃそうだろうな」
俺だって半分くらいしか理解できてないもん。
何にしても一作目の主人公は葛葉なのだ。
ヤツがいい感じにストーリー進めてくれないと……そもそもの話、あいつにまったく期待が持てないから蘆屋に話を持ってきたんだった。
クッ、役立たずのヒーローと消えてしまったライバル許すまじ!
お前らさえまともに機能していれば、モブである俺は推しヒロインの追っかけだけしとけば良かったのにっ!
……と、現実逃避はこのくらいにして。
「てかさ、俺達って超常現象調査員――P・Iとかいうのになるための、特殊なクラスに通ってるじゃん?」
「どうしたいきなり」
「それでさ、この学科って九重――俺の幼馴染がそうなんだけど、基本的には自分の命をBETして大金を稼ぎたいなんて考えてる、半分博打打ちみたいな連中しかいないじゃん?」
「何を他人事のように……貴様もその中の一人だろうが」
「でもほら、そんな中で異彩を放っているのが蘆屋朔夜という少女なわけよ。俺の思い込みじゃなければ、お前って間違いなく良いトコの子じゃん? お嬢じゃん?」
「……確かにその通りだが、それに何か問題でも? あと、貴様には似合わないから語尾に『じゃん』を付けるのを止めろ」
もちろん問題なんて何一つ無い。
無いんだけど……そんなお嬢様がどうして黄龍学園に通ってるのか? って話になるわけよ。
同じ蘆屋でも地域のならず者代表みたいな面の玄真だったら何の違和感もなかったんだけどな!
「なるほど、確かに貴様の言いたいこともわからんではない。……そうだな、それを説明するには少々込み入った、長い話になるのだが」
「あっ、長くなるならいらないです」
「異界という存在が日本で確認されたのは古くは平安時代の頃で――」
だからいらねぇっつってんだろ!!
……そこから小一時間続く蘆屋の話。というか蘆屋家の話。
長かった。本当に長かった。
というか歴史の話のはずなのに、一般人からすれば八割くらいファンタジーな内容だった。
てか自称(家称?)こいつのご先祖様らしい『蘆屋道満』と『異形』――鬼・あやかし・もののけ・魔物と呼ばれる存在の戦闘シーンは必要だったか?
まるで見てきたように語られた安倍晴明と道満のBL風味な友情物語とか絶対にお前の思い込みだろ?
さらに陰陽寮のから始まる超常現象調査員の成り立ち。お前の家がいかにして時の権力者を動かしたかとか聞かされても『あっ、そうなんだ』以上の感想は出ねぇよ!
そして会話中の蘆屋、身振り手振りがやたらと大きくさ。三回くらいこいつの手が机の上のグラスに当たりかけてヒヤヒヤものだったわ! ……おひやだけにな!
で、ここまでの話を簡単にまとめると、
『蘆屋家はそういう家系で家業との兼ね合いがあるから。あと、弟が馬鹿だから』
といういたってシンプルな内容だったというね。
……どうしてこいつは三分もかからない話にあれほどの全力を出してしまったのか?
さすがに長話にも少しつかれたんだろう。グラスを手に取り、唇を湿らせた蘆屋。
というかここまでの話の内容だけなら、こいつ自身はこの学園にも、そして異界にも、それほど関心が無さそうに聞こえた。
……もちろんそれは彼女の言葉をすべて真に受けた場合の話だが。
だって蘆屋朔夜は学年首席なんだぞ?
本当に興味が無かったのなら、そこまで彼女が頑張る理由がないのだ。
唯我独尊を絵に書いたような、あの蘆屋玄真だって、必死に主人公に食らいつこうと、それこそ血の滲むような努力をしていた――と、スピンオフのコミック版で語られていたわけだしな!
ちなみにマンガの中身自体はイマイチだったので三話で切った。
つまり、あれだ。
俺が何を言いたかったのかといえば、
『そこまで頑張った玄真が、パーティを組んでいてすら魔神王に全滅させられた』
ということ。
このまま蘆屋朔夜がソロで頑張ったとしてもラスボスには手も足も出ない。
というより、間違いなくそこまでたどり着けない。
「しかし! そんなあなたに朗報です!」
「貴様はちょくちょく人のことを無視して、内に籠もるきらいがあるよな?」
そうなのだ!
ソロが無理ならパーティを組めば問題なかろうなのだ!
努力しても駄目ならチートを使えば良かろうなのだ!
「だって今のお前には俺がいるからな!」
「この男、脈絡もなく私を口説き出した……いや、口説くを通り越して勝手に結論を出したぞ?」
「心配しなくても二人の間には恋愛感情なんて一欠片も無いから」
「よし、とりあえずそこになおれ。貴様の顔の形が変わるまで殴り続けてやる」
「お前……それでなくても暴言系ヒロインというデメリットがあるのに、さらに直接的な暴力に走ったらプレイヤーに置いていかれるぞ?」
「いったい何の話なのだそれは……」
もちろんゲームの話である。




